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2016年9月13日火曜日

小説:小林泰三『セピア色の凄惨』

〜ストーリー〜
とある探偵事務所にひとりの女がやって来た。
わずか4枚の写真とそれにまつわる思い出だけを手掛かりに、
親友であるレイという女の行方を探して欲しいという。
依頼を受けた探偵は写真に写った人々への聞き込みを開始するが、
彼らが語るのはレイという女には関係のない奇想天外な話ばかりであった。

探偵と依頼人である女、そして、
依頼に関わる4人の人物が語るストーリーをまとめた小林泰三の短編集。
初恋の女に異常なこだわりを持つ男、
極度にめんどくさがりな女、
心配性が過ぎる女、
だんじりの先導役として死ぬことに強い憧れを持つ男など、
何かしらの極端なくせを持つ人物の、
屁理屈とグロテスクに満ちたストーリーが展開される。
良い意味での読後の不愉快さも相変わらずで、
小林泰三節を堪能することができる。
最後の逸話で一応レイの正体が明らかとなるが、
こちらは多少強引なオチの付け方でおまけ程度に捉えておけば良い。

2016年9月11日日曜日

映画:『バニーマン/鮮血のチェーンソー』

〜ストーリー〜
ドライブを楽しんでいた6人の若者は、
追い抜かしたトラックに執拗に追いかけられ、
やがて事故に遭遇してしまう。
助けを求め近くの森を彷徨う彼らの前に、
チェーンソーを持ったうさぎの着ぐるみを着た男が現れ、
彼らをひとりまたひとりと血祭りに上げていく。

6人の若者がうさぎの着ぐるみを着た男を始めとした狂人一家により次々と殺害されていく姿を描いたスプラッター映画。
『悪魔のいけにえ』のようなストーリーだが、
何から何まで自らを危機に追い込む行動をとる若者に、
何らの思想もなければ背景も分からない狂人一家、
さらにスプラッターシーンも肝心なところが全く映されないなど、
良いところが全く見つけられない作品。
B級映画ですらない、駄作。

2016年8月14日日曜日

映画:『恐怖の人体研究所』

〜ストーリー〜
アティカス研究所では、
超能力に関する研究が行われていた。
1976年のある日、
研究所にジュディスという女性がやって来る。
彼女の奇行と人智を超えた能力を持て余した所員らは政府に研究の継続を依頼、
様々な観点から彼女を研究するようになるが、
やがて彼らの身に命の危険が迫る。

政府が唯一公認したという悪魔憑き事件の真相を、
当時の資料や関係者へのインタビューを通じて明らかにしようとするフェイクドキュメンタリー映画。
邦題はB級映画丸出しの間抜けなタイトルになっているが、
中身は割とまともに仕上がっている。
最近のホラーにありがちなあえて恐怖のタイミングをズラして観客をビビらせるという方法を取らず、
ロクでもないことが起こるだろうというタイミングにきちっとロクでもないことが起きる構成に好感が持てる。
ストーリーの細かい所を突っ込み出すとキリはないのだが、
そこをカバーするくらいに、次に何が起きるのという緊張感を継続出来るストーリー。

2016年8月13日土曜日

映画:『サバイバル・オブ・ザ・デッド』

〜ストーリー〜
死者が蘇るようになり3週間後。
元州兵のサージら一行は、
ゾンビの現れない安全な島があるという情報を得る。
しかし、その島では、
ゾンビは全て再び殺すべきというオフリン派と、
ゾンビとの共存の道を探るために生かしておくべきだというマルドゥーン派に分裂しており、
サージらはその対立に否応なく巻き込まれることになる。

ジョージ・A・ロメロが2009年にメガホンを取り制作したゾンビ映画。
本作のゾンビは「生前の行動を繰り返す」という設定を持っており、
そんな知性があるなら飼いならすことができるのでは?と考える一派と、
とにかく危険を排除しようとする一派との対立がメインに描かれる。 
ただ、西部劇を参考にしたというこの対立だが、
限られた人数のおっさん同士が話し合うこともほとんどなく銃を向け合うというものでどこかショボい。
また、ゾンビの行動についてもあっさりとしか描かれておらず、
全体的に何がやりたかったのかよく分からない超薄味な映画になってしまっている。
グロいシーンもほとんどないし。

2016年4月25日月曜日

映画:『アイアムアヒーロー』

〜ストーリー〜
売れない漫画家・鈴木英雄は、
同棲中の恋人・てっこから三行半を突きつけられ、家を追い出されてしまう。
しかし、やはり英雄と一緒にいたいというてっこからの電話に急いで自宅に戻ると、
そこには変わり果てた姿で狂乱するてっこの姿があった。
襲いかかってきた彼女を死なせてしまった英雄はあわててその場を逃げ出すが、
街にはてっこと同じ症状にかかり人を襲撃する存在=ZQNが溢れかえっていた。
そんな最中、女子高生のひろみと出会った英雄は、
インターネットの掲示板で安全だという情報を得た富士山へ向かう。
その途中、とあるアウトレットモールに立ち寄った英雄達は、
ZQNに襲われるが、すんでのところで藪に助けられる。
アウトレットモールの屋上では、
伊浦率いる集団がZQNの襲撃を退け、
アウトレットにある商品を集め何とか生き延びていた。
丁重に迎え入れられた英雄であったが、
伊浦の目的は英雄の持つ実弾銃であった。
やがて、英雄とひろみの存在は組織に微妙な変化を与え始め、
統率を失った伊浦らはZQNの襲撃に遭い…。

人気コミック『アイアムアヒーロー』を、
『図書館戦争』の佐藤信介監督がメガホンを取り、
大泉洋、有村架純、長澤まさみら豪華キャストを迎え実写映画化した作品。
原作は未完だが本作ではコミック8巻までが映像化されている。

おそらく、本作を鑑賞においては、
その人の持つ背景がこの映画に対する評価に大きく作用するものと思われる。

まずは、原作未読かつゾンビ映画はせいぜいバイオハザードくらいという層。
この層の人は銃でZQNの頭がぶっ飛ぶというシーンに耐性さえあれば、
パニック満載・アクション満載のエンターテイメント作品として純粋に楽しめると思う。
グロいシーンは多いが目を背けたくなるほどのものではなく、
また、こけ脅しのシーンはほとんどないため、
それを知っていれば安心して鑑賞できる。

次に、原作未読かつジョージ・A・ロメロの名前は知っているくらいにゾンビ映画に親しんでいる層。
この層の人は、本作が単なるエンターテイメント作品であると割り切って観なければ、
過去のゾンビ映画のパクリであり、
パニックシーンばかりで「人間」を描けていない底の浅い作品だという批判をするものと思われる。
(少なからぬゾンビ映画好きは、
ゾンビ映画をパニック作品として鑑賞せず、
極限状況下に置かれた人間の生き様を観るための映画と信じている)

ただ、この2つの層の人に言えるのは、
ストーリー中盤からひろみが陥るとある状態の描かれ方が中途半端なため、
存在意義もよく分からないだろうし観賞後もあれは何だったんだろう?ともやもやした気分を抱えてしまうだろうこと。
これは興行収入次第で続編をどうするか決めようとしていると思われる制作委員会の思惑が悪い方に作用してしまっている。

続いて、原作を知っている層。
こちらもエンターテイメント作品と割り切るかどうかで意見は真っ二つに分かれるだろう。
原作はパニックシーンの合間合間に登場人物同士の会話や交流を描くシーンが数多くあり、
ギリギリのラインを保とうとする人間の理性を、
ZQNの存在によりいとも容易く瓦解させる所に面白さがある。
本作はこれをバッサリ切り捨てて、
アクション満載のエンターテイメントとして突っ走るため、
これを不満に思う原作ファン層も少なくないかも知れない。
ただ、キャラ造形からストーリーラインに至るまで、
邦画には珍しいほど忠実に原作が再現されているため、
その点に好感を持つ層も間違いなくいるだろう。

個人的には原作購読中の後者の立場で、
アクションシーンも邦画にしてはなかなか迫力があり、それなりの見応えがあった。
だが、ハナから続編を制作するつもりで、
色々な要素を整理していけばもっと面白い作品に仕上がっただろうなとは思う。
先述したひろみの描かれ方は残念であり、
ここだけはもしかして映画オリジナルの設定を加えても良かったのではないかとすら感じる。

あと、個人的にツボだったのは、
原作では描かれていない中田コロリの漫画が、
浅野いにお提供だったところ。

少々グロいところに目を瞑れば、
和製パニック映画としては十分健闘している出来の作品だと思う。

2015年10月19日月曜日

映画:『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』

〜ストーリー〜
突如死者が蘇り人間を襲い始めた。
テレビで、ウェブで、様々な情報が錯綜する中、
映画を撮影していた大学生一行は真実を残しためにビデオカメラを回し続けるのだが…。

ジョージ・A・ロメロによる2008年公開のゾンビ映画。
最近では何も珍しくないPOV形式のホラーだが、
それを更に編集してひとつの映像作品に仕立てたというフェイクドキュメンタリー形式を取っている。
しかし、それがどうしかしたのかと思うほど退屈で何の深みもない映画だった。
最後にゾンビで遊ぶ人間の映像が流れ人類がどうたらこうたらと講釈を垂れているが、
ストーリーとは関係がない全くの蛇足でむしろ無い方が良かったのではないかとさえ思う。

2015年6月11日木曜日

映画:『ホステル』

〜ストーリー〜
東欧を旅行中の3人の若者は、
異性と遊ぶ事ができるというホステルの噂を聞き宿泊する。
そこには旅行者のみならず地元の美女も多く集まっており、
若者達は最高のひと時を満喫した。
しかし、ひとりが謎の失踪を遂げると共に、
残されたふたりの身にも危険が迫る。
実はそのホステルの正体は会員制の拷問クラブであり、
その餌食となる人間を物色するために設けられたものだった…。

海外旅行で秘密の組織に拉致され悲惨な目に遭うという都市伝説がプロットの映画。
SAW以来の痛グロ系/監禁系スリラーの中では代表作のひとつと言っても良いのではないかと思う。
SAWがギミック発動→死亡というなんだかんだでサクッとグロシーンが終わるのに対し、
本作は生身の人間が同じく生身の人間に直接手を加え、
加害者が快楽を覚える姿と凄惨極まりない被害者のコントラストをこれでもかと見せつけてくるため、
痛々しさを感じる度合いは遥かに高い。
『ヘルレイザー』みたいな作品が好きな人や、
サディスティックな嗜好を持った人にオススメ。

2015年6月9日火曜日

小説:五十嵐貴久『リカー完全版ー』

〜ストーリー〜
友人が出会い系サイトで次々と女性と出会い遊んでいる事を聞いた主人公は、
妻子を持つ身でありながら自らも出会い系サイトに手を出し始め、
やがてリカという女とやり取りをするようになる。
初めは会話を楽しんでいた主人公だがリカの異様性に気付き距離を置き始めた。
しかし、リカの想いは留まる事なく膨れ上がり、
やがて主人公のみならずその周囲の人間にまで危害を及ぼし始める。

『交渉人』シリーズや『パパとムスメ』シリーズ、『Fake』などで知られる五十嵐貴久が、
ホラーサスペンス大賞を受賞し華々しいデビューを飾った作品。
知る人ぞ知るホラー漫画『座敷女』にハマった人なら間違いなくハマる。

顔立ちは整っているはずなのに、
ゾンビを彷彿とさせるかのような黄土色の肌と底知れぬ闇を讃える異様な目付き。
口からはマスクをしても防げないほど異様な臭いが放たれる。
普通の成人男性では歯が立たない身体能力を持つ一方で、
元看護師で医学の知識を有するほど優れた頭脳を持つ。
こんな女に付き纏われたら人生一環の終わりに決まっている。

一見荒唐無稽な設定でありながら、
主人公の恐怖を追体験しているかのように感じられるのは、
筆者の緻密な文章の積み重ねがあってこそ。
これは完全版という事で、大幅な加筆修正が加えられているそうなのだが、
完全版で追加されたエピローグには度肝を抜かれる。
これでもかと見せつけられたリカという女の闇の深さを、
もはや引き返す事のできない暗黒に引き摺り下ろすかのような強烈なエピローグ。
普通小説でも映画でもゲームでもリメイクの追加要素って「必要だった?」と思わされる事の方が多いが、
本作に関してはまさに完全版という言葉を冠するにふさわしいものになっている。

2014年6月3日火曜日

小説:深町秋生『果てしなき渇き』

~ストーリー~
元刑事の藤岡は、
離婚した元妻から失踪した娘・加奈子の捜索を依頼される。
時を同じくして発生したコンビニでの殺人事件と、
加奈子に恋心を抱く同級生が残した手記。
3つの事象がひとつに重なりあった時、
加奈子が隠し持っていた裏の顔が明らかになり、
やがて暴力団や中国系マフィアをも巻き込む凄惨な事件の幕が開く…。

深町秋生が「このミス」を受賞したハードボイルド小説。
役所広司主演で今夏映画化。
ひたすら救いようのない話であり、
どの登場人物とてまともな人間が一人もいない。
扱われるテーマも、暴力・殺人・麻薬・いじめ・少年少女の売春など、とにかく重苦しい。
だが、徐々に白日の下に晒されていく驚愕の真実の連鎖や、
一見関係がなさそうな同級生の手記と一連の事件の関係性が明らかにされていくにつれて、
読者をぐいぐいとその世界観に引き込むパワーを持った小説でもある。
思わず読むことを躊躇ってしまいそうなほどグロいシーンも満載のため、万人にお勧めはしない。
だが、決して面白くない小説であるという事はなく、
むしろ体調を万全にして本書を手に取ることをお勧めします。

2014年5月23日金曜日

小説:小林泰三『百舌鳥魔先生のアトリエ』

~ストーリー~

『ショグゴス』
突如南極に現れた謎の不定形生物群。
大統領と科学者はロボットを使いそれを排除しようとするが…。

『首なし』
とある令嬢と頭の半分を失いながら生きた元使用人である夫。
とある疑念を抱いた息子は両親の馴れ初めを聞く。

『兆』
教師に殴られた女生徒・直美が学校を抜け出しとあるマンションから飛び降り、自殺した。
事件に疑惑を持ったフリーライター・なえ子は取材を開始する。
その頃、直美の同級生である欒花の前に直美の幻影が現れ、
人間を超越した「兆」という存在への昇華へいざなおうとしていた。

『朱雀の池』
戦時下のアメリカ。
軍から日本の文化財リストを作成するように言われたウォーナー博士は、
何故か自分が日本の京都に住む蘭蔵という男であるという夢を見る。

『密やかな趣味』
性的欲求を満たすためのアンドロイドを購入した「わたし」は、
届いたアンドロイドに様々な要求を押し付ける。
だが、それは徐々にエスカレートしていき…。

『試作品三号』
強大な力を持った妖怪達を兵器とするための研究施設が破壊された。
妖怪の中でも最強の力を持つという妖怪・試作品三号は、調査のためにやって来た鎧の男と対峙する。

『百舌鳥魔先生のアトリエ』
妻が習い事として始めた「芸術」は、
生物の身体を極限まで切り刻んだまま生体機能を維持させるという悪魔の所業だった。
ある日、失踪した妻を追って「わたし」はその「芸術」の講師である百舌鳥魔という男のアトリエに向かう。


奇抜な設定・グロ描写・ブラックユーモアと屁理屈を武器に、
主にホラー・SF・サスペンスの分野で活躍する作家・小林泰三の、
過去の作品を収録した短編集。
「クトゥルフ神話」をベースにしながらそれを逆手に取ってまさかのオチに持っていくSF作品『ショグゴス』、
読んでいるだけでこちらの身体か痛くなるかのような錯覚に陥るほどグロ描写満載の『密やかな趣味』『百舌鳥魔先生のアトリエ』、
現実と虚構を織り交ぜ読者を混乱させる『首なし』『朱雀の池』『兆』、
最強の妖怪とそれをも上回る力を持った鎧の男との戦いを描いた『試作品三号』など、
7作品とも著者のテイストがよく表れている。

2013年6月12日水曜日

映画:『ムカデ人間』


〜ストーリー〜
シャム双生児の分離手術の名手として名を馳せる外科医ハイター博士。
彼には密かな野望があった。
それは、別々の人間の口と肛門を繋ぎ合わせてムカデ人間を生み出す事だった。
ある日、博士の自宅に遭難した女性旅行者が2人助けを求めて現れる。
彼女らを監禁した博士はもう一人日本人男性を監禁し、
禁断の手術に踏み出すのだった…。

知る人ぞ知るグログロカルトムービー。
手を出したらダメだ…と思いつつ手を出してみたら、やっぱり後悔した…。
荒唐無稽な内容ながらも妙に説明も描写も丁寧なうえ、
ムカデ人間完成後は凄惨の一言。
だって、3人の人間を口と肛門で結ぶっていう事は、
後ろ2人の食事は…言わずもがな、である。
SAWシリーズとは違って生理的なところをエグってくるグロさ。
間違っても淑女の皆様は手を出してはいけないし、
グロ耐性あるぜ!という紳士の皆様でもお腹いっぱいの時には観ない方が良い。
何人かでギャーギャー騒ぎながら観られるかどうかも微妙。
こんな映画が生み出された事自体狂気の沙汰ではないが、
何よりも恐ろしいのは、この映画のスマッシュヒットを受け、続編が生まれたこと。
こちらは未見だが、2ではハイター博士に憧れた醜男が7人もの人間を連結するさらにエグい内容で、さらに、3の製作も決定。
こちらはハイター博士が復活し、
メタルクウラもビックリの百人ムカデ人間を見せる予定という…。
我こそはというドSピープルか、ス○○ロ耐性のある方のみにオススメします。