2014年6月30日月曜日

映画:『猿の惑星 創世記ジェネシス』

~ストーリー~
特殊な遺伝子操作により優れた知能を持った母親から産まれたチンパンジーのシーザー。
とある出来事をきっかけに人間に絶望した彼は、
仲間を解放するための戦いに身を投じることとなる…。

もはや古典と言っても過言ではないSF映画『猿の惑星』の、
言わば”エピソード0”を描いた2012年の作品。
主演にトビー・マグワイア版スパイダーマンシリーズで、
主人公の親友にして最大の宿敵であるオズボーン=グリーンゴブリンを演じたジェームズ・フランコ。

そもそも猿たちがいかに人間を支配できるほどの知能を持つに至ったのかという点から始まり、
それにしたって現代兵器を駆使すれば猿くらい殲滅できるだろうという意地悪な問いかけに多少強引ながらも解答を提示している。
また、あまりに有名過ぎるかのエンディングに頼ることなくストーリーを終結させた点にも非常に好感が持てる。
だからこそ惜しむらくは、
公開当時から指摘があったようだが、
各エピソードをもう少し丁寧に描けなかったのかという点。
本作においてヒロインは物語に何の影響も及ぼさない全く不要の存在であるし、
それを削ってシーザーが主人公と心の交流を重ねながら知能を発達させていくと同時に、
より人間に対し不信を描く出来事を積み重ねていった方が、
ぐっとストーリーに深みが生まれたと思う。

2014年6月7日土曜日

漫画:筒井哲也『予告犯』

~ストーリー~
「しんぶんし」と名乗る男がインターネットを通じて次々と犯罪を予告、実行していた。
ネット上で初めは少数派だった彼らの支持者は、
犯行を重ねるごとに増えていく。
警視庁サイバー犯罪対策課の吉野犯人を捕らえようと奔走するのだが…。

『マンホール』など良質のサイコスリラーを提供しているSTUDIO221の筒井哲也の作品。
インターネットを通じての犯罪予告という設定自体にそれほどの目新しさはない(古くはYouTube黎明期に『ブラックサイト』という良質のハリウッド製スリラーがある)ものの、
犯人の緻密な計算とそれを追う刑事との攻防にワクワクしてしまう。
また、人物描写が大変緻密でドラマ性も非常に高い。
最後に明かされる、悲しい過去を抱える犯人の犯行動機はあまりに切ない。
全3巻とサクッと読めるのもGOOD。
上述の『マンホール』と共にオススメします。

2014年6月3日火曜日

小説:深町秋生『果てしなき渇き』

~ストーリー~
元刑事の藤岡は、
離婚した元妻から失踪した娘・加奈子の捜索を依頼される。
時を同じくして発生したコンビニでの殺人事件と、
加奈子に恋心を抱く同級生が残した手記。
3つの事象がひとつに重なりあった時、
加奈子が隠し持っていた裏の顔が明らかになり、
やがて暴力団や中国系マフィアをも巻き込む凄惨な事件の幕が開く…。

深町秋生が「このミス」を受賞したハードボイルド小説。
役所広司主演で今夏映画化。
ひたすら救いようのない話であり、
どの登場人物とてまともな人間が一人もいない。
扱われるテーマも、暴力・殺人・麻薬・いじめ・少年少女の売春など、とにかく重苦しい。
だが、徐々に白日の下に晒されていく驚愕の真実の連鎖や、
一見関係がなさそうな同級生の手記と一連の事件の関係性が明らかにされていくにつれて、
読者をぐいぐいとその世界観に引き込むパワーを持った小説でもある。
思わず読むことを躊躇ってしまいそうなほどグロいシーンも満載のため、万人にお勧めはしない。
だが、決して面白くない小説であるという事はなく、
むしろ体調を万全にして本書を手に取ることをお勧めします。

2014年6月1日日曜日

映画:『さんかく』

〜ストーリー〜
百瀬と佳代が同棲している部屋に佳代の中学生の妹・桃が夏休みを利用してやって来る。
佳代と倦怠期にあった百瀬は天真爛漫な振る舞いをする桃に恋心を抱いてしまう。
桃が田舎に帰ってからも連絡を取ろうとする百瀬。
だが、彼の微妙な心境の変化に気付いた佳代はいらぬ喧嘩を百瀬に仕掛けてしまい、ふたりは破局することになる。
取り返しのつかないことになり慌てた佳代は、何とか百瀬の気持ちを取り返そうとするが・・・。

高岡蒼甫・田畑智子・小野恵令奈共演の恋愛映画。
アラサーのバカ男代表・百瀬。
同じくアラサーのイタ女代表・佳代。
思春期の無邪気な悪意の権化・桃。
その他、人のいい佳代をマルチに引き込もうとする女友だちや、
アホで生意気で先輩ヅラを吹かせることだけ一流の百瀬にうっかりため口を聞いちゃう後輩など、
登場するキャラクターほぼ全員に妙なリアリティや「あるある」が詰め込まれている。
それ故に、彼らの織り成す人間模様をはじめは滑稽に感じることもあるのだが、
次第に笑えなくなり痛々しさすら感じるようになってくる。
サスペンスばりに伏線が張られたストーリーで、
それがキャラクターに説得力を持たせ物語をより真に迫ったものにしている。

2014年5月27日火曜日

漫画:巴亮介『ミュージアム』

~ストーリー~
連続猟奇殺人事件が発生。
被害者は残忍な方法で殺害されており、
遺体の傍らには殺害方法に応じた刑罰の名前が記されたメモが残されていた。
事件を担当していた刑事の沢村は被害者の共通点に気付くが、
それは別居中の妻子の身に危険が迫っていることを意味していた。
だが、犯人の魔の手は既に愛する家族に及びつつあり…。

話題のサイコスリラーコミック。全3巻。
ストーリーを見てピンとくる人もいるかも知れないが、
○主人公が事件を担当する刑事。
○猟奇殺人とその方法に応じた刑罰が与えられている。
○主人公の家族にも身の危険が及ぶ。
など、プロットが映画『セブン』とほとんど同じ。
なので、面白いと言えば面白いのだが、
新鮮味に欠けると言えば欠ける。
ただ、ラストは一捻り入っているので、
もしかすると著者自身それを分かっていて、
ミスリードを導こうとしているのではないかという気がしなくもない。


2016.1.5追記
映画向きだなーと思っていたら、
小栗旬主演で映画化が決定したとのこと。
監督はるろうに剣心シリーズの大友啓史。
邦画にありがちなオリジナリティによる原作破壊は抑えて、
ぜひ原作を忠実に再現して欲しい(笑)

2014年5月23日金曜日

小説:小林泰三『百舌鳥魔先生のアトリエ』

~ストーリー~

『ショグゴス』
突如南極に現れた謎の不定形生物群。
大統領と科学者はロボットを使いそれを排除しようとするが…。

『首なし』
とある令嬢と頭の半分を失いながら生きた元使用人である夫。
とある疑念を抱いた息子は両親の馴れ初めを聞く。

『兆』
教師に殴られた女生徒・直美が学校を抜け出しとあるマンションから飛び降り、自殺した。
事件に疑惑を持ったフリーライター・なえ子は取材を開始する。
その頃、直美の同級生である欒花の前に直美の幻影が現れ、
人間を超越した「兆」という存在への昇華へいざなおうとしていた。

『朱雀の池』
戦時下のアメリカ。
軍から日本の文化財リストを作成するように言われたウォーナー博士は、
何故か自分が日本の京都に住む蘭蔵という男であるという夢を見る。

『密やかな趣味』
性的欲求を満たすためのアンドロイドを購入した「わたし」は、
届いたアンドロイドに様々な要求を押し付ける。
だが、それは徐々にエスカレートしていき…。

『試作品三号』
強大な力を持った妖怪達を兵器とするための研究施設が破壊された。
妖怪の中でも最強の力を持つという妖怪・試作品三号は、調査のためにやって来た鎧の男と対峙する。

『百舌鳥魔先生のアトリエ』
妻が習い事として始めた「芸術」は、
生物の身体を極限まで切り刻んだまま生体機能を維持させるという悪魔の所業だった。
ある日、失踪した妻を追って「わたし」はその「芸術」の講師である百舌鳥魔という男のアトリエに向かう。


奇抜な設定・グロ描写・ブラックユーモアと屁理屈を武器に、
主にホラー・SF・サスペンスの分野で活躍する作家・小林泰三の、
過去の作品を収録した短編集。
「クトゥルフ神話」をベースにしながらそれを逆手に取ってまさかのオチに持っていくSF作品『ショグゴス』、
読んでいるだけでこちらの身体か痛くなるかのような錯覚に陥るほどグロ描写満載の『密やかな趣味』『百舌鳥魔先生のアトリエ』、
現実と虚構を織り交ぜ読者を混乱させる『首なし』『朱雀の池』『兆』、
最強の妖怪とそれをも上回る力を持った鎧の男との戦いを描いた『試作品三号』など、
7作品とも著者のテイストがよく表れている。