2016年7月9日土曜日

映画:『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』

※ややネタバレ注意

〜ストーリー〜
人類がエイリアンの襲撃を退けた「1996年の戦い」から20年。
外宇宙の敵の存在により人類は手を取り合い平和の時代を迎えるとともに、
エイリアンのテクノロジーにより科学技術を発展させ、来るべき戦いに備えていた。
しかし、墜落したエイリアンの宇宙船が密かに発信していたSOS信号により、
20年前よりもはるかに強大なパワーを持ったマザーシップが襲来。
再び地球を滅亡の危機に陥れる。
このままなす術なく滅びの時を迎えるかと思われた人類であったが、
そこに思いも寄らぬ味方が現れる…。

『ユニバーサル・ソルジャー』やあの悪名高き『GODZILLA』のローランド・エメリッヒが、
ウィル・スミスや『ジュラシック・パーク』『ザ・フライ』のジェフ・ゴールドブラムを迎え製作した『インデペンデンス・デイ』の20年越しの続編。
ジェフ・ゴールドブラムや大統領役のビル・プルマンらは続投し、
降板したウィル・スミスの代わりに『マイティ・ソー』シリーズのクリス・ヘムズワースの弟、リアム・ヘムズワースや、
脇役会一の名優ウィリアム・フィクナーらが主役を固める。

元々その御都合主義的な展開や、
アメリカ至上主義的なストーリーを批判されながらも、
1996年当時最高峰のSF技術となんだかんだで白熱するシーン満載のストーリーで大ヒットを飛ばした作品であったが、
今作は枚挙を挙げれば暇がないほど設定からストーリーから何もかもが酷過ぎる。
一例を挙げると、

○散々科学技術を発展させたのに一番苦戦させられたはずのバリア技術を全く研究していない馬鹿な人類。

○単なる赤外線でUFOの内部を事細かに観察できたくせに、とある理由による地球滅亡までのカウントダウンをたまたまUFOの近くにいたトレジャーハンターに任せるアホな人類。
↑おまけに何をどう計算したらそうなるのか、ずっと計測していたはずなのに土壇場になって5時間も計算をミスっていたというアホなトレジャーハンター。
↑それをサクッと受け入れるちきゅうぼうえいぐんの皆さん。

○重力を操り大都市を一瞬で壊滅させた力を地球に着陸する時にだけ使い、後はドンパチを繰り広げるだけの愚かなエイリアン。

○死ねば撤退を余儀なくされるほど重要な役割を持つ女王の危機をほったらかしにし、人間とドンパチ続けるやはり愚かな雑魚エイリアン。
↑女王が死んだところであと2分頑張れば地球を滅亡させられていたのに。
こんなものは序の口で、
とにかく思いついた展開を繋ぎ合わせただけとしか思えない酷いストーリー展開が延々続く。

アクションにしてもこの映画レベルのSFであれば、もはや幾らでも存在しており、
アクションシーンすら見せ場でなくなってしまった。
ウィル・スミスのように、
画面に映っているだけで映画を牽引していく力を持った大スター不在も痛い。
ただし、アンジェラベイビーだけはめちゃくちゃ可愛い。

前作は個人的には大好きであれやこれやの批判にも擁護してきただけに、
今作の出来は非常に残念。
実はさらなる続編を匂わせる終幕なのだが、
これならいらない。

2016年6月12日日曜日

映画:『マネーモンスター』

〜ストーリー〜
人気投資番組「マネーモンスター」の生放送に銃と爆弾を持った男が押し入った。
犯人であるカイルは、
司会者リーが「銀行に貯蓄するよりも安全」と投資を勧めたアイビス社に全財産の6万ドルを投資したが、
その夜、彼の財産は、同社の投資システムの原因不明のバグにより、
8億ドルもの株価と共に一晩で消え去ってしまったのだった。
アイビスのCEOであるウォルトに対し、
生放送での謝罪と真相解明を求めるカイル。
リーは彼の元妻であり番組のディレクターであるパティと共に事態の収拾に乗り出すが…。

ジョディ・フォスター監督、
ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ2大スター主演のリアルタイムサスペンス。
ハリウッド映画ファン垂涎の製作・キャスト陣による作品だが、
名実共に備わったエンターテイメント作品に仕上がっている。
主人公、犯人、警察、大企業それぞれの思惑が複雑に絡み合うひたすら緊張感の漂う4すくみの状況ながら、
野球のように攻守がトントンと変わるためテンポが良くストーリーも分かりやすい。
株や投資に対する知識もほぼ不要。

また、現代社会に対する皮肉たっぷりな風刺が描かれているのも面白い点。
そもそも本作の犯人なんてのは、
(劇中の)マスコミがいい加減に垂れ流した情報に基づくマネーゲームに安易に乗っかり、
それに失敗したことを逆恨みした市井の人間である。
そして、そんな人間がテレビの生放送でとんでもない騒ぎを引き起こすのだが、
それを観ている人々にとっては現実味のない他人事となっており、
事件をネタにするバラエティ番組まで登場する。
おまけにそんな現実感も緊張感のない人々は、
とあるきっかけで爆弾を抱えたままスタジオを飛び出した司会者と犯人を取り囲み、
自分がエンターテイメントの中に入り込んだかの如く司会者の真似をして踊り始めたり、
SNSに写真を掲載しようと写メまで撮り始める始末。
そんな現代社会に生きる人間に対し冷めた目線を投げかけているように思われるのが大変興味深かった。
劇中に2度ほどロシアや中国を名指しして悪者扱いするシーンがあり、
それはさすがにやり過ぎだろうとは思ったのだが、
これはこれで現代アメリカ人のリアルな心象を誇張して描いているものとも考えられる。

間違ってはならないのは、
あくまでエンターテイメント作品であり、
株や投資の世界を主眼に置いた社会派作品ではないという点。
ここを間違えると映画に対する評価はだだ下がりするだろうが、
それはそもそものスタンスが間違っている。
納得できない人は本作はすっ飛ばして『マネーショート』をどうぞ。

あと、なんのかんの言っても、
やっぱりスターの存在感は偉大。
作品自体の面白さはさることながら、
やっぱり大スターの存在感とその安定性が作品の質を高めているのは違えようのないことのように思われる。

2016年6月7日火曜日

漫画:『アメイジング・スパイダーマン:シビル・ウォー』

〜ストーリー〜
トニー・スターク=アイアンマンの下で働いていたピーター・パーカー=スパイダーマンは、
シビル・ウォーの勃発を機にスタークの指示のもとかつての仲間との戦いを余儀なくされていた。
スタークのやり方に疑問を持ったピーターは、
MJやメイおばさんと話し合ったうえ、
ヒーロー登録法案に反対するスティーブ・ロジャース=キャプテン・アメリカのサイドにつくことを決意する。
しかし、それは愛する家族を危険に晒す選択であった。

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ3』原作コミック派生作品で、
人気キャラクター・スパイダーマンを主人公とした作品。
映画と違い原作本編ストーリーにおいて非常に重要な役割を果たすキャラクターであるため、
その背景を描く本作は、
原作を読むなら物語を補完し世界観を深掘りする意味で併せて読みたい一作。
『ロード・トゥ・シビル・ウォー』直後からストーリーが始まるため、こちらもセットでどうぞ。

2016年6月4日土曜日

映画:『デッドプール』

〜ストーリー〜
元傭兵のウェイドは全身を癌に蝕まれ余命宣告を受ける。
癌を治癒しさらに特殊な力を与えるという男の誘いに乗り、
恋人ヴァネッサを残し謎の組織の元に赴いた彼であったが、
そこでは人間をミュータントに変えるための非人道的な人体実験が行われていた。
火傷のように爛れた皮膚と引き換えに、
優れた身体能力と超再生能力ヒーリング・ファクターを得たウェイドは、
咄嗟の機転を利かし組織から脱出することに成功する。
復讐に燃えるウェイドはデッドプールと名乗り、
組織のリーダー・フランシスへの復讐を誓う。

マーベルコミックのヒーローのひとり、デッドプールの実写映画。
ウルヴァリンと同じヒーリング・ファクターを持ち、
お喋り、下品、いい加減というおよそヒーローらしくない性格をしたキャラクターだが、
一番の特徴は「第四の壁」を乗り越える能力、
つまり、自分が物語の登場人物であることを理解しているという点。
初出はX-MENのヴィランとしての登場だが、
上記の性格ゆえ、ヒーローの味方になったり敵になったり、
自分の都合に合わせてその立ち位置をコロコロと変える。

上記のキャラクターを理解しているか、
おバカ映画と割り切るかしなければ、
頭のおかしなマスク男が主人公で、
お下劣ネタ満載のちょっと派手なアクション映画くらいの認識しか持たれない可能性がある。
これに拍車をかけるのがメタネタの数々。
主演のライアン・レイノルズはかつて『X-MEN ZERO』でもデッドプールを演じているが、
あまりのキャラクター破壊に原作ファンから顰蹙を買ったことがある。
そんな過去を揶揄するかのようなネタがあったと思ったら、
彼が主演したDCコミックの『グリーン・ランタン』までネタにしてしまっている。
パンフレット読むまでそんなこと忘れてたよ…。

マーベル映画ではお馴染みのエンドロール後のおまけシーンは健在。
コミカルなシーンに仕上がっているので最後まで観て欲しい。
続編の存在を匂わせ、
デッドプールと縁の深いX-MENのとある一員の名前が出てくる。
のだが、X-MENの原作かアニメでも見てない限り誰も知らないであろうキャラなので盛り上がりには欠けるかも。

総じて、
お気楽アクションムービーと割り切るか、
マーベルコミックの原作に多少なりとも慣れ親しんでいる人なら楽しめるであろう作品。

2016年5月30日月曜日

小説:深木章子『衣更月家の一族』

〜ストーリー〜
別居中の夫からストーカー被害を受ける妹を匿う姉。
とある秘密を抱えかつての恋人と結婚を余儀なくされた女。
父の事業の失敗により暴力団の裏稼業に引き込まれた男。
一見何ら関係がない彼らの周りで起きた殺人事件が、
元刑事の私立探偵・榊原の手により繋がっていく。

『鬼畜の家』の深木章子の2作品目にして、
私立探偵・榊原シリーズの第2弾。
絡まった謎の糸が終盤でしゅるしゅると解けていく快感を本作でも味わうことができる。
ただ、『鬼畜の家』ほど伏線がしっかり張られている訳ではないので、
推理する楽しみはやや減った印象。
それでも十分に読後の満足は得られるが。

ドロドロとした家族像の描写も相変わらず秀逸。
元弁護士である著者だが、
やはり色々な家族を見てきたのだろうか…。

2016年5月29日日曜日

小説:深木章子『螺旋の底』

〜ストーリー〜
セラピストである女は患者であった男と結婚し、
パリから田舎町ラボリに移住する。
男は地元の大地主ゴラーズ家の跡継ぎであったが、
彼の住む屋敷の地下には一見のどかに見える町でかつて繰り広げられた凄惨な歴史が封印されていた。
そして、その地下の秘密を解き明かすことこそ女が男と結婚した真の理由であった。

深木章子の3作目。
私立探偵・榊原を主人公とした前2作から打って変わり、
1960年代のフランスの田舎町を舞台としたサスペンスとなっている。
男と女、それぞれの一人称語りで場面が切り替わり、
その中で感じられる違和感が終盤への伏線になっているという叙述トリックの体裁が取られているのも前2作と異なるポイント。
相変わらず物語の構成が見事で、
読後にもう一度読み返したくなること請け合い。