2014年5月15日木曜日

小説:湊かなえ『白ゆき姫殺人事件』

化粧品会社の女性社員・三木が殺害された。
その疑いの目は事件直後から行方をくらました彼女の同僚である城野に向けられる。
フリーライターの赤堀は、
ふたりの後輩である狩野から事件の話を聞き取材を開始する。
彼女を犯人と確信する者、
彼女を擁護する者、
彼女の家族・親友・同僚、
彼女を取り巻く人々の話が城野という女性の人物像をあぶり出し、
それはやがて雑誌やSNSを通じて形を変えながら拡散していく。

『告白』『北のカナリアたち』など、
立て続けに映画化されたヒット作を世に放っている湊かなえの小説。
本作も井上真央・綾野剛・菜々緒らをキャストに迎え映画化された。
『告白』が主人公の独白によって成立していたストーリーであるのに対し、
本作は城野を取り巻く人物が話す会話や雑誌・SNSにより事件の真相が明らかになっていくという構成が取られている。
ジャンルとしては叙述トリックにより読者のミスリードを導くサスペンスということになろうが、
事件の真相に関して言えばサスペンス的な驚きは少なめである。
むしろ、人間がいかに自分に都合が良いように記憶を捻じ曲げ話をするかといった点と、
それらが情報化社会において様々な形で拡散していく可能性があるという恐怖を描くことに主眼が置かれているように感じた。
しかしながら、テーマとしては決して目新しいものではない。
また、物語の構成上仕方がない部分ではあるが、
各登場人物の会話が説明的かつ冗長になりがちであり、
読み進めるにあたり焦ったさを感じさせる点もある。
どの登場人物も一癖も二癖もある人間ばかりで、
事件の真相が明らかになっても誰も得をしないというところも、
人によっては読後の満足感を削ぐ原因たり得るだろう(個人的には嫌いではない)。

2014年5月6日火曜日

映画:『アメイジング・スパイダーマン2』

スパイダーマンとして活躍しながらも、
恋人のグウェンとの距離を縮められずにいたピーター。
そんな彼の前に親友ハリーが海外から帰ってくる。
ハリーは一族に伝わる特殊な遺伝病を克服するために、
スパイダーマンの血を欲していた。
スパイダーマンを捕らえるべく、
ハリーは事故により電気を操る能力を得た男マックス=エレクトロを使い、
また自らも特殊な血液とパワードスーツによりグリーン・ゴブリンと化し、
親友をその毒牙に掛けようとする。

http://kakidame-kakidame.blogspot.com/2014/05/blog-post_6.html』シリーズ第2弾。
前作同様のカラッとした明るい雰囲気と勧善懲悪のヒーローストーリーを引き継ぎつつ、
キャラクター説明が不要になった分を見応えたっぷり極彩色豊かなアクションできちんと補充している。
相変わらず諸々のエピソードもアッサリめに描いているが、
劇中にきちっと解決されるので不満なポイントという訳ではない。
ただ、前作のラストで主人公が下したとある決断が軽過ぎやしないかと評していたのだが、
それを今作でまさかあんな形で解決させるとは思わなかった。
ピーターとハリーの決着の行方、
ハリーにヴィランを手引きするミスター・フィアーの正体、
そしてこれは前シリーズも含めたファンサービスかも知れないが、
オクトパス風のパワードスーツなど、
次回作へ期待を抱かせる繋ぎも万全…
だったのだが、

商業権がソニーからマーヴェルに戻った今となっては続編があるかどうかは微妙。
まあ、もうちょっと早ければ『シビル・ウォー』に間に合ったんじゃないかと思うと非常に残念。

映画:『アメイジング・スパイダーマン』

トビー・マグワイア版のような、
陰気臭いキャラが織り成すウジウジ青春劇ではなく、
「悲しいことは悲しい!」
「好きな人は好き!」
「悪いやつはやっつける!」
「スパイダーマンはみんなのヒーロー!」
という単純明快なストーリー構成は好感が持てる。
なんだかんだでヒーローものはこれくらいアッサリしてる方が良い。
何よりもヒロインがサッパリした性格でちゃんとカワイイのが良い。
トビー・マグワイア版のキルスティン・ダンストは女優としては素晴らしいけど、
こんな○○○○な女に振り回されるかよ!と、
イマイチ感情移入しにくい感じだったので…。
あえて苦言を呈するとすれば、
主人公が最後に下したある決断が軽過ぎやしないか?というところ。
でも、今作の雰囲気からするとこの決断でないといけない気もするし、
ここは個人の嗜好の問題か。

個人的に嬉しかったのは、
それほど有名ではないキャストが多い中で、
往年の名優マーティン・シーンが、
主人公の人生に深く影響を与える重要な役所である育てのおじ役として存在感を光らせていたところ。
やっぱり映画って脚本+俳優なんだと改めて思った。

お気軽デートなんかにはもってこいの作品。

2014年5月5日月曜日

小説:安生正『生存者ゼロ』

北海道沖の採掘プラントの従業員が、
一夜にして凄惨極まる姿に成り変わり発見された。
その遺体からは未知の最近が採取され、
新型の感染症が疑われたが被害は広がることなく、
原因不明のまま事件は収束するかと思われた。
だが、1ヶ月後、北海道のとある街の住民6万人が、
やはり一夜にして同じ症状で全滅するという事態が発生。
両方の現場に居合わせた自衛官・廻田は原因と被害拡大の防止策を探るように命じられる。

安生正の第11回このミス受賞作品。
たった一夜にして多くの人間を死に至らしめる謎の感染症とその意外な原因、
その対応に追われ醜態を晒す日本政府と諸外国との緊張など、
プロットとしては面白い部分が多々ある。
しかし、何もかもを詰め過ぎた結果、
不必要だったのではないかという要素や説明不足のまま読者を置いていく部分も多々ある。
例えば、
主役のひとりである覚醒剤中毒の元細菌研究者は、
事件の原因究明のキーパーソンになるのか(羊たちの沈黙のレクターみたいな)と思えば、
ストーリーをかき回すだけで不快感しか感じられない。
あるたは、全く異なる時間と環境にあるはずの人物が共通して聞いた「神の啓示のようなもの」については何の説明もない。
一時は実は本作はカルトホラーなのかと思ってしまうほどこのプロットは不要だ。
そうかと思えば、政府のグダグダな対応、政治家のダメさという部分については執拗なほど細かく描写があり、
著者は国に身内を殺されたことでもあるのかと首を傾げたくなる。
このようなチグハグさが全体的に感じられ、
せっかくの良いプロットが台無しになってしまっていると思う。
ただ、見せ場を視覚的にイメージすると映画に向いているような箇所が散見されるため、
上述したような余分な要素を削り取れば、
なかなかのエンターテイメント作品になりそうな気はする。

2014年4月29日火曜日

映画:『隣人は静かに笑う』

FBIの捜査官であった妻をテロで亡くしたマイケル。
彼は大学でテロリズムの歴史について教鞭を振るっていた。
ある日、設計技師であるラングとその家族が隣家に越してきた。
大怪我をしたラングの息子を助けた事から交流を深めるふたり。
しかし、マイケルはひょんな事からラングがテロリストではないかという疑念を抱き始める。

ジェフ・ブリッジス、ティム・ロビンス共演のサスペンス映画。
隣人がテロリストである事に気付いた男が、
そのテロ計画を阻止せんと孤立無援の中奮闘する姿を描くという、
古いシュワちゃんの映画にでもありそうなストーリーなのだが、
1シーンも見逃せない緻密なストーリー構成、
深いキャラクター造形とそれにリアリティを持たせる俳優陣の演技、
この2つがうまく組み合わさって、
最後まで緊張感を維持したまま鑑賞を楽しめる。
そして、全ての謎が氷解する最終盤のワンシーンと、
その後のエピソードに度肝を抜かれる事間違いなし。
1999年公開の古めの映画だが、
テロに対する恐怖や素性のわからない隣人との人間関係というテーマは、
むしろ現代の方が真に迫ってくるテーマであると思う。

2014年4月12日土曜日

映画:『ゾンビランド』

突如発生したウィルスにより人類はゾンビと化した。
元ひきこもりのゲームおたくであったコロンバスは、
生き残るための32のルールを自らに課し生き延びていた。
生まれ故郷を目指す旅の道中、
ウィンキーを愛しゾンビを憎む癇癪持ちの男タラハシーや詐欺師姉妹と合流する事になった彼は、
そんなメンバー達との間に絆が芽生えた事に気付き始める。

ゾンビ映画でありながら、
個性的な4人の人間の心の交流を描くロードムービーであり、
ティーンエイジャーの恋愛模様を描くラブストーリーであり、
ゾンビのみならず様々なジャンルの映画へのオマージュを含むコメディであるという異色の作品。
ポイントポイントで登場人物の過去の場面が現れるのだが、
その中でも特に、4人の中で最もヤバそうに見えるタラハシーの過去が、
全体的に緩い感じのストーリーにスパイスとなって効く。
グロい場面はほとんど無く、急にゾンビが現れてビックリするようなこけおどしも無し。
R15指定作品だがほぼあらゆる世代のあらゆるジャンルの映画好きが楽しめる映画。

名優ウディ・ハレルソンをはじめ、
『ソーシャル・ネットワーク』でFacebook創始者を演じたジェシー・アイゼンバーグ、
『アメイジング・スパイダーマン』のヒロインであるエマ・ストーン、
『サイン』『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリンらが主要キャストを演じており、
また、特別ゲストとしてビル・マーレーが本人役で登場。
『ゴーストバスターズ』に親しんだ人なら最も笑えるシーンを提供してくれる。