〜ストーリー〜
人気投資番組「マネーモンスター」の生放送に銃と爆弾を持った男が押し入った。
犯人であるカイルは、
司会者リーが「銀行に貯蓄するよりも安全」と投資を勧めたアイビス社に全財産の6万ドルを投資したが、
その夜、彼の財産は、同社の投資システムの原因不明のバグにより、
8億ドルもの株価と共に一晩で消え去ってしまったのだった。
アイビスのCEOであるウォルトに対し、
生放送での謝罪と真相解明を求めるカイル。
リーは彼の元妻であり番組のディレクターであるパティと共に事態の収拾に乗り出すが…。
ジョディ・フォスター監督、
ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ2大スター主演のリアルタイムサスペンス。
ハリウッド映画ファン垂涎の製作・キャスト陣による作品だが、
名実共に備わったエンターテイメント作品に仕上がっている。
主人公、犯人、警察、大企業それぞれの思惑が複雑に絡み合うひたすら緊張感の漂う4すくみの状況ながら、
野球のように攻守がトントンと変わるためテンポが良くストーリーも分かりやすい。
株や投資に対する知識もほぼ不要。
また、現代社会に対する皮肉たっぷりな風刺が描かれているのも面白い点。
そもそも本作の犯人なんてのは、
(劇中の)マスコミがいい加減に垂れ流した情報に基づくマネーゲームに安易に乗っかり、
それに失敗したことを逆恨みした市井の人間である。
そして、そんな人間がテレビの生放送でとんでもない騒ぎを引き起こすのだが、
それを観ている人々にとっては現実味のない他人事となっており、
事件をネタにするバラエティ番組まで登場する。
おまけにそんな現実感も緊張感のない人々は、
とあるきっかけで爆弾を抱えたままスタジオを飛び出した司会者と犯人を取り囲み、
自分がエンターテイメントの中に入り込んだかの如く司会者の真似をして踊り始めたり、
SNSに写真を掲載しようと写メまで撮り始める始末。
そんな現代社会に生きる人間に対し冷めた目線を投げかけているように思われるのが大変興味深かった。
劇中に2度ほどロシアや中国を名指しして悪者扱いするシーンがあり、
それはさすがにやり過ぎだろうとは思ったのだが、
これはこれで現代アメリカ人のリアルな心象を誇張して描いているものとも考えられる。
間違ってはならないのは、
あくまでエンターテイメント作品であり、
株や投資の世界を主眼に置いた社会派作品ではないという点。
ここを間違えると映画に対する評価はだだ下がりするだろうが、
それはそもそものスタンスが間違っている。
納得できない人は本作はすっ飛ばして『マネーショート』をどうぞ。
あと、なんのかんの言っても、
やっぱりスターの存在感は偉大。
作品自体の面白さはさることながら、
やっぱり大スターの存在感とその安定性が作品の質を高めているのは違えようのないことのように思われる。