~ストーリー~
『蝿男』
探偵の葉山は、
今は誰も住んでいない屋敷に母の遺骨を取りに行って欲しいという依頼を受け現場に赴くが、
そこで何者かの襲撃を受ける。
『暗い潮流』
5人を殺害、23人を負傷させた死刑囚・磯崎の元に山本優子という女性からファンレターが届く。
山本の正体を探るよう依頼を受けた雑誌編集者は調査を続ける内に、
山本優子が実在しかつて磯崎と近所付き合いをしていた事を知る。
『幸せな家』
失踪した女性雑誌編集者の捜索を依頼されたライターは、
彼女が周囲の人間を脅迫し金銭を得ていたのではないかという疑いを持つ。
だが、事態は思わぬ方向に進んでいく。
『狂酔』
とある教会で立て篭り事件が発生した。
犯人である男はその教会と自分の生い立ちとの関係について話し始める。
『道楽者の金庫』
探偵を休業し古本屋でアルバイトをしていた葉山は、
ひょんな事からとある資産家の金庫の番号が隠されていると思われるこけしを探すよう依頼を受ける。
資産家の別荘に赴いた彼女は、
またしても何者かの襲撃を受ける。
表題作『暗い潮流』で日本推理作家協会賞短編部門を受賞した若竹七海の短編ミステリー集。
どの作品も「家」と「歪んだ家族・人間関係」がキーとなっている。
ほとんどの作品が依頼を受け調査をするという探偵ものの形式を取っている中、
一番のお勧めは唯一その形式を取らず犯人の独白でストーリーが展開される『狂酔』。
教会に隠された欺瞞に振り回された主人公とその周囲を取り巻く人物の惨めながらひたむきな生活は美しく感動的ですらあるのだが、
作者が最後の最後に設置した仕掛けに世界が反転し度肝を抜かれる。
その他の作品もミステリーとして及第点以上のクオリティ。
文体も読みやすいもので短編なのでサクッと読むことができる。
2014年5月17日土曜日
2014年5月15日木曜日
小説:湊かなえ『白ゆき姫殺人事件』
化粧品会社の女性社員・三木が殺害された。
その疑いの目は事件直後から行方をくらました彼女の同僚である城野に向けられる。
フリーライターの赤堀は、
ふたりの後輩である狩野から事件の話を聞き取材を開始する。
彼女を犯人と確信する者、
彼女を擁護する者、
彼女の家族・親友・同僚、
彼女を取り巻く人々の話が城野という女性の人物像をあぶり出し、
それはやがて雑誌やSNSを通じて形を変えながら拡散していく。
『告白』『北のカナリアたち』など、
立て続けに映画化されたヒット作を世に放っている湊かなえの小説。
本作も井上真央・綾野剛・菜々緒らをキャストに迎え映画化された。
『告白』が主人公の独白によって成立していたストーリーであるのに対し、
本作は城野を取り巻く人物が話す会話や雑誌・SNSにより事件の真相が明らかになっていくという構成が取られている。
ジャンルとしては叙述トリックにより読者のミスリードを導くサスペンスということになろうが、
事件の真相に関して言えばサスペンス的な驚きは少なめである。
むしろ、人間がいかに自分に都合が良いように記憶を捻じ曲げ話をするかといった点と、
それらが情報化社会において様々な形で拡散していく可能性があるという恐怖を描くことに主眼が置かれているように感じた。
しかしながら、テーマとしては決して目新しいものではない。
また、物語の構成上仕方がない部分ではあるが、
各登場人物の会話が説明的かつ冗長になりがちであり、
読み進めるにあたり焦ったさを感じさせる点もある。
どの登場人物も一癖も二癖もある人間ばかりで、
事件の真相が明らかになっても誰も得をしないというところも、
人によっては読後の満足感を削ぐ原因たり得るだろう(個人的には嫌いではない)。
その疑いの目は事件直後から行方をくらました彼女の同僚である城野に向けられる。
フリーライターの赤堀は、
ふたりの後輩である狩野から事件の話を聞き取材を開始する。
彼女を犯人と確信する者、
彼女を擁護する者、
彼女の家族・親友・同僚、
彼女を取り巻く人々の話が城野という女性の人物像をあぶり出し、
それはやがて雑誌やSNSを通じて形を変えながら拡散していく。
『告白』『北のカナリアたち』など、
立て続けに映画化されたヒット作を世に放っている湊かなえの小説。
本作も井上真央・綾野剛・菜々緒らをキャストに迎え映画化された。
『告白』が主人公の独白によって成立していたストーリーであるのに対し、
本作は城野を取り巻く人物が話す会話や雑誌・SNSにより事件の真相が明らかになっていくという構成が取られている。
ジャンルとしては叙述トリックにより読者のミスリードを導くサスペンスということになろうが、
事件の真相に関して言えばサスペンス的な驚きは少なめである。
むしろ、人間がいかに自分に都合が良いように記憶を捻じ曲げ話をするかといった点と、
それらが情報化社会において様々な形で拡散していく可能性があるという恐怖を描くことに主眼が置かれているように感じた。
しかしながら、テーマとしては決して目新しいものではない。
また、物語の構成上仕方がない部分ではあるが、
各登場人物の会話が説明的かつ冗長になりがちであり、
読み進めるにあたり焦ったさを感じさせる点もある。
どの登場人物も一癖も二癖もある人間ばかりで、
事件の真相が明らかになっても誰も得をしないというところも、
人によっては読後の満足感を削ぐ原因たり得るだろう(個人的には嫌いではない)。
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