2015年6月12日金曜日

小説:友井羊『僕はお父さんを訴えます』

〜ストーリー〜
愛犬リクを何者かの虐待により失ってしまった光一は、
同級生である沙紗の手を借り独自に調査を進めていく内に、
犯人が父である事を確信する。
司法浪人生である敦の助けで父に対し裁判を起こした光一。
しかし、裁判所で驚愕の真実が明かされるー。

著者のデビュー作であり、2012年の「このミステリーがすごい」大賞受賞作。
青春ミステリーの体裁をとった裁判の入門書のような感じ。
キャラクター造詣もマンガ並に分かりやすい。
ミステリーとしては伏線も分かりやすくわがままを言えばもう一捻り欲しかったが、
事件の真相が明らかになる終盤はそれなりのインパクトはある。
テレビの特別2時間ドラマあたりにすごく向きそうな気がする。

2015年6月11日木曜日

映画:『ホステル』

〜ストーリー〜
東欧を旅行中の3人の若者は、
異性と遊ぶ事ができるというホステルの噂を聞き宿泊する。
そこには旅行者のみならず地元の美女も多く集まっており、
若者達は最高のひと時を満喫した。
しかし、ひとりが謎の失踪を遂げると共に、
残されたふたりの身にも危険が迫る。
実はそのホステルの正体は会員制の拷問クラブであり、
その餌食となる人間を物色するために設けられたものだった…。

海外旅行で秘密の組織に拉致され悲惨な目に遭うという都市伝説がプロットの映画。
SAW以来の痛グロ系/監禁系スリラーの中では代表作のひとつと言っても良いのではないかと思う。
SAWがギミック発動→死亡というなんだかんだでサクッとグロシーンが終わるのに対し、
本作は生身の人間が同じく生身の人間に直接手を加え、
加害者が快楽を覚える姿と凄惨極まりない被害者のコントラストをこれでもかと見せつけてくるため、
痛々しさを感じる度合いは遥かに高い。
『ヘルレイザー』みたいな作品が好きな人や、
サディスティックな嗜好を持った人にオススメ。

2015年6月9日火曜日

小説:五十嵐貴久『リカー完全版ー』

〜ストーリー〜
友人が出会い系サイトで次々と女性と出会い遊んでいる事を聞いた主人公は、
妻子を持つ身でありながら自らも出会い系サイトに手を出し始め、
やがてリカという女とやり取りをするようになる。
初めは会話を楽しんでいた主人公だがリカの異様性に気付き距離を置き始めた。
しかし、リカの想いは留まる事なく膨れ上がり、
やがて主人公のみならずその周囲の人間にまで危害を及ぼし始める。

『交渉人』シリーズや『パパとムスメ』シリーズ、『Fake』などで知られる五十嵐貴久が、
ホラーサスペンス大賞を受賞し華々しいデビューを飾った作品。
知る人ぞ知るホラー漫画『座敷女』にハマった人なら間違いなくハマる。

顔立ちは整っているはずなのに、
ゾンビを彷彿とさせるかのような黄土色の肌と底知れぬ闇を讃える異様な目付き。
口からはマスクをしても防げないほど異様な臭いが放たれる。
普通の成人男性では歯が立たない身体能力を持つ一方で、
元看護師で医学の知識を有するほど優れた頭脳を持つ。
こんな女に付き纏われたら人生一環の終わりに決まっている。

一見荒唐無稽な設定でありながら、
主人公の恐怖を追体験しているかのように感じられるのは、
筆者の緻密な文章の積み重ねがあってこそ。
これは完全版という事で、大幅な加筆修正が加えられているそうなのだが、
完全版で追加されたエピローグには度肝を抜かれる。
これでもかと見せつけられたリカという女の闇の深さを、
もはや引き返す事のできない暗黒に引き摺り下ろすかのような強烈なエピローグ。
普通小説でも映画でもゲームでもリメイクの追加要素って「必要だった?」と思わされる事の方が多いが、
本作に関してはまさに完全版という言葉を冠するにふさわしいものになっている。

2015年6月8日月曜日

音楽:Mr.Children『STADIUM TOUR 2011 SENSE -in the field-』

※Facebookより転記したものです

2011/9/19@長居スタジアム

当日、開演前は曇天で雨の予報。
案の定開演後に大雨が降り始め、
合羽を羽織り震えながらの鑑賞となった。

SENSEの曲を中心に新旧の名曲揃いといった感じだったが、
盛り上がる曲よりかはじっくり聴かせる曲が中心という印象をもった。
次週の宮城でのライブ開催に向けて、
お客さんのウェーブを録画したところなんかも鑑みると、
東日本大震災を意識した選曲なのかなーと思った。
普段はヘビロテ入りしている『エソラ』がこの日ばかりは嫌味に聞こえたのはご愛嬌。

音楽:Mr.Children『[(an imitation)blood orange]TOUR』

※Facebookより転記したものです。

2012/12/15@京セラドーム

京セラドームにて開催のライブに参戦。

オープニングムービーが流れた後メンバー登場。
オープニングアクトは『過去と未来と交信する男』。
黒いフードコートを羽織った桜井和寿が淡々と歌い上げていく。
が、演奏が終わると同時に消える姿。
そして、『LOVEはじめました』のイントロが流れると、
花道の先にある舞台から出現というイリュージョンで再登場!
続いて演奏されたのは打って変わって爽快感のある『world end』。

と、こんな感じに珍しい幕開けとなったライブだった。
全般的に、特に前半は静かめな曲が多かったように思う。
『surrender』『靴ひも』『Pink〜奇妙な夢』辺りはかなり意外性があったし、
初期のアルバムからは『抱きしめたい』と『マーマレード・キッス』が採用されていた。
(『抱きしめたい』自体はそう珍しくないが、そんなに最初にやっちゃうの?という感じ)

一方、中盤から後半にかけては、『(an imitation)blood orange』の曲に新旧の名曲を織り交ぜた構成。
最近のライブでは鉄板になりつつある『CENTER OF UNIVERSE』や、
『Tomorrow never knows』『fanfare』といったシングル曲。
『エソラ』からの『marshmallow day』というポップなチューンのコンボは鳥肌ものだった。
アンコールは『天頂バス』で始まり、『HERO』を挟み、『空風の帰り道』で終了。

元々シングルやタイアップの多いアルバムでもあり、
それもあいまって非常に豪勢な感じを受けた。

漫画:カネコアツシ『SOIL』

〜ストーリー〜
郊外の山間に位置する住宅地「そいるニュータウン」。
街を停電が襲ったある日、
鈴白という一家と巡回に出ていた巡査1名が失踪する。
事件の一報を受けた刑事・小野田と横井はそいるニュータウンへ向かう。
鈴白家に踏み込んだ小野田らを待ち受けていたものは大量の塩の固まりであった。
それを機に街には怪奇現象が次々と発生。
さらに、街の住民の間に疑心暗鬼が生まれ始め、
平和に見えたそいるニュータウンに潜む闇が徐々に明かされていくのであった…。

WOWOWで実写ドラマ化もされたカネコアツシによるサスペンススリラー。
単行本全11巻。
失踪した一家の捜索を主軸に、
人の心の暗部を描く群像劇でもあり、
怪奇現象の謎を解き明かしていくSFスリラーでもあるという、
様々な要素がぎゅっと濃縮された作品。
あらゆるところに伏線が張り巡らされており、
一見突拍子もなく見える現象にもそれなりの原因や理由があるようになっている。
ただでさえ複雑なストーリーなのだが、
カネコアツシ氏独特のペンのタッチと相まって、
特に終盤は混沌さに拍車がかかる。
大変読み応えはあるのだが、
人によってはまとまりのない作品という印象を持ってしまうかも知れない。