2014年6月7日土曜日

漫画:筒井哲也『予告犯』

~ストーリー~
「しんぶんし」と名乗る男がインターネットを通じて次々と犯罪を予告、実行していた。
ネット上で初めは少数派だった彼らの支持者は、
犯行を重ねるごとに増えていく。
警視庁サイバー犯罪対策課の吉野犯人を捕らえようと奔走するのだが…。

『マンホール』など良質のサイコスリラーを提供しているSTUDIO221の筒井哲也の作品。
インターネットを通じての犯罪予告という設定自体にそれほどの目新しさはない(古くはYouTube黎明期に『ブラックサイト』という良質のハリウッド製スリラーがある)ものの、
犯人の緻密な計算とそれを追う刑事との攻防にワクワクしてしまう。
また、人物描写が大変緻密でドラマ性も非常に高い。
最後に明かされる、悲しい過去を抱える犯人の犯行動機はあまりに切ない。
全3巻とサクッと読めるのもGOOD。
上述の『マンホール』と共にオススメします。

2014年6月3日火曜日

小説:深町秋生『果てしなき渇き』

~ストーリー~
元刑事の藤岡は、
離婚した元妻から失踪した娘・加奈子の捜索を依頼される。
時を同じくして発生したコンビニでの殺人事件と、
加奈子に恋心を抱く同級生が残した手記。
3つの事象がひとつに重なりあった時、
加奈子が隠し持っていた裏の顔が明らかになり、
やがて暴力団や中国系マフィアをも巻き込む凄惨な事件の幕が開く…。

深町秋生が「このミス」を受賞したハードボイルド小説。
役所広司主演で今夏映画化。
ひたすら救いようのない話であり、
どの登場人物とてまともな人間が一人もいない。
扱われるテーマも、暴力・殺人・麻薬・いじめ・少年少女の売春など、とにかく重苦しい。
だが、徐々に白日の下に晒されていく驚愕の真実の連鎖や、
一見関係がなさそうな同級生の手記と一連の事件の関係性が明らかにされていくにつれて、
読者をぐいぐいとその世界観に引き込むパワーを持った小説でもある。
思わず読むことを躊躇ってしまいそうなほどグロいシーンも満載のため、万人にお勧めはしない。
だが、決して面白くない小説であるという事はなく、
むしろ体調を万全にして本書を手に取ることをお勧めします。

2014年6月1日日曜日

映画:『さんかく』

〜ストーリー〜
百瀬と佳代が同棲している部屋に佳代の中学生の妹・桃が夏休みを利用してやって来る。
佳代と倦怠期にあった百瀬は天真爛漫な振る舞いをする桃に恋心を抱いてしまう。
桃が田舎に帰ってからも連絡を取ろうとする百瀬。
だが、彼の微妙な心境の変化に気付いた佳代はいらぬ喧嘩を百瀬に仕掛けてしまい、ふたりは破局することになる。
取り返しのつかないことになり慌てた佳代は、何とか百瀬の気持ちを取り返そうとするが・・・。

高岡蒼甫・田畑智子・小野恵令奈共演の恋愛映画。
アラサーのバカ男代表・百瀬。
同じくアラサーのイタ女代表・佳代。
思春期の無邪気な悪意の権化・桃。
その他、人のいい佳代をマルチに引き込もうとする女友だちや、
アホで生意気で先輩ヅラを吹かせることだけ一流の百瀬にうっかりため口を聞いちゃう後輩など、
登場するキャラクターほぼ全員に妙なリアリティや「あるある」が詰め込まれている。
それ故に、彼らの織り成す人間模様をはじめは滑稽に感じることもあるのだが、
次第に笑えなくなり痛々しさすら感じるようになってくる。
サスペンスばりに伏線が張られたストーリーで、
それがキャラクターに説得力を持たせ物語をより真に迫ったものにしている。