2016年9月15日木曜日

小説:折原一『101号室の女』

〜ストーリー〜
母と息子のふたりで経営する古びたラブホテルにひとりの女性客が来た。
母と女性客はお互いに不信感を抱き、
母は息子に女性客を追い出せと諭すが…。
表題作『101号室の女』を含む9編の短編集。

ミステリー作家・折原一が、
1990年代初頭に発表した短編ミステリー9編を収めた短編集。
多くが夫婦や親子を取り巻く事件をテーマとしており、
いずれの作品も著者お得意の叙述トリックとどんでん返しを堪能することができる。
表題作『101号室の女』は、
映画『サイコ』を題材としているが、
映画の内容を知っている人ほど意外な展開を楽しむことができるだろう。
短編なのでストーリーがスッキリまとまっており、
短い時間でミステリーの醍醐味を堪能できる点も良い。
何しろ著者の長編ときたら、
各章ごとにこちらを撹乱するかのようなクライマックスを用意し、
それらを終章できっちりと一纏めにしてしまうという、
よくもこんなオチを付けられるものだと感心してしまう一方で、
ストーリーの整理にものすごく頭を使う作品が多い。
その点では著者の作品の入門編として、
本作にハマれば長編にトライしてみるのはアリだと思う。

2016年9月13日火曜日

小説:小林泰三『セピア色の凄惨』

〜ストーリー〜
とある探偵事務所にひとりの女がやって来た。
わずか4枚の写真とそれにまつわる思い出だけを手掛かりに、
親友であるレイという女の行方を探して欲しいという。
依頼を受けた探偵は写真に写った人々への聞き込みを開始するが、
彼らが語るのはレイという女には関係のない奇想天外な話ばかりであった。

探偵と依頼人である女、そして、
依頼に関わる4人の人物が語るストーリーをまとめた小林泰三の短編集。
初恋の女に異常なこだわりを持つ男、
極度にめんどくさがりな女、
心配性が過ぎる女、
だんじりの先導役として死ぬことに強い憧れを持つ男など、
何かしらの極端なくせを持つ人物の、
屁理屈とグロテスクに満ちたストーリーが展開される。
良い意味での読後の不愉快さも相変わらずで、
小林泰三節を堪能することができる。
最後の逸話で一応レイの正体が明らかとなるが、
こちらは多少強引なオチの付け方でおまけ程度に捉えておけば良い。

2016年9月12日月曜日

小説:小林泰三『幸せスイッチ』

〜ストーリー〜

『怨霊』
メリーと名乗るストーカーに狙われた女は警察に通報するが、
そこにΣという探偵が現れ事態は思わぬ方向に進んでいく。

『勝ち組人生』
亡くなった叔母の財産を相続した女は、
幸福の尺度であるお金を増やし幸せを貯蓄することに喜びを覚えるが…。

『どっちが大事』
妻からの妻とスマホのどちらが大事かという質問に妻と答えた夫はスマホを破壊されてしまう。
それから妻の二択と要求はエスカレートしていき…。

『診断』
救急救命士の男がとある母子家庭の家を訪れた。
母親の屁理屈のせいで病院に連れて行くことが出来ぬままこどもの体調は見る見る悪化し…。

『幸せスイッチ』
両親を飛行機事故で亡くし財産を引き継いだ女は、とある男の出会いから人生の坂道を転がり落ちて行くことになる。
そんな時に幸せスイッチとそれを販売するNPOと出会い彼女の人生が変わっていくのだった。

『哲学的ゾンビもしくはある青年の物語』
突然自分を無視して同じ話を繰り返し始めた恋人。
友人が同じ症状に陥ったのを見た「僕」は、
3人で集まり再現実験を試みるのだが…。

小林泰三の短編集。
登場人物の屁理屈の応酬が得意技の著者の作品にあって、
本作は読んでいて腹立たしさを覚えるほどの「屁理屈祭」が全ストーリーにおいて展開される。
いずれも意外な展開に広がっていきあっと驚くオチがあるので読み応えはあるが読後にドッと疲れる。
一見短編同士に何ら関係性がないように見えるが、
最後の作品を除きなぜか竹内春子という人物が登場し、
最後の作品で一応のクロスを見せる。
また、初めの作品のΣは著者の他の短編にも登場する探偵で、
時空を超えた殺人事件など不思議な事件ばかり担当する変わった探偵。

2016年9月11日日曜日

映画:『バニーマン/鮮血のチェーンソー』

〜ストーリー〜
ドライブを楽しんでいた6人の若者は、
追い抜かしたトラックに執拗に追いかけられ、
やがて事故に遭遇してしまう。
助けを求め近くの森を彷徨う彼らの前に、
チェーンソーを持ったうさぎの着ぐるみを着た男が現れ、
彼らをひとりまたひとりと血祭りに上げていく。

6人の若者がうさぎの着ぐるみを着た男を始めとした狂人一家により次々と殺害されていく姿を描いたスプラッター映画。
『悪魔のいけにえ』のようなストーリーだが、
何から何まで自らを危機に追い込む行動をとる若者に、
何らの思想もなければ背景も分からない狂人一家、
さらにスプラッターシーンも肝心なところが全く映されないなど、
良いところが全く見つけられない作品。
B級映画ですらない、駄作。