2013年6月13日木曜日

映画:『CURE』


〜ストーリー〜
胸元をXに切り裂くという手口の連続殺人が発生。
いずれの事件も犯人はすぐに捕まり犯行を認めるものの、
動機がはっきりしないうえに犯人同士に何の関連性もなかった。
刑事・高部は事件を捜査を進める内に間宮という容疑者に行き当たるが、
彼の持つ特殊な能力に高部自身も影響を受け始める…。

黒沢清の出世作であり、和製スリラーの金字塔的作品。
何かと説明不足な所が多い作品だが、
わざと考える余地を与える作りにしている感じがする。
デヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』なんかが好きな人なら十分にハマれると思う。
役所広司、萩原聖人、うじきつよし、中川杏奈ら主要キャストをはじめ、
出演者の抑えた演技が映画の雰囲気にマッチしていて、
全編を通して漂う不穏な空気が観ている者の緊張感を引き立てる。
1997年と古い作品だが、現代の感覚でも十分鑑賞に耐え得る作品。

映画:『REC ザ・クアランティン』


〜ストーリー〜
TVレポーターのアンジェラは、
消防署を取材中、出動がかかった消防士達と共にとあるアパートへ向かう。
そこでは奇声を上げながら暴れる血まみれの老婆がおり、
ひとりの消防士が噛みつかれて危篤に陥る。
だが、それと同時にアパートは警察、果ては軍隊により閉鎖されてしまう。
一行はアパートから脱出しようと試みるが、
噛みつかれた人間が次々と他の人間を襲い始める。

スペイン産ゾンビ映画『REC』のハリウッドリメイク版。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』以降時折作品が作られるPOV系ホラー映画と、
『28日後』以降の"走るゾンビ"映画をミックスさせたような作品。
ストーリーとしてはありふれた展開で特筆すべき点はない。
前半の消防署のシーンがやたら長くて退屈なのと、
暗い場面が多くて何やってるか分からない事がたまにある(これはPOV作品の仕方ない部分ではあるが…)点を除けば、
そんなにエグい場面もなくそれなりに楽しめると思う。
上記の作品や『クローバーフィールド』が好きな人なら観て損はないだろう。

映画:『16ブロック』


〜ストーリー〜
ベテラン刑事ジャックは夜勤明けのある日、
上司に呼び止められある仕事を押し付けられる。
それは、16ブロック先の裁判所まで証人を護送するだけの簡単な仕事…のはずだった。
だが、その証言は警察の不正を暴くものであり、
それを恐れた同僚達から襲撃を受ける事になる。

ブルース・ウィリス主演のクライムアクション。
ストーリーとアクション自体は凡庸なもので特筆すべき点はないが、
モス=デフが演じる黒人成年とジャック刑事のキャラクター造詣がしっかりしており、
その二人の掛け合いが丁寧に積み重ねられた末に訪れるエンディングでは爽やかな感動を得られる。
クライムアクションではあるがむしろドラマパートを重視して観賞するのが正解かもしれない。

映画:『ブラックサイト』


〜ストーリー〜
FBIのサイバー犯罪捜査官ジェニフアーはとある連続殺人事件を追っていた。
犯人は生きた被害者が殺人ギミックに嵌められている様子をインターネットでリアルタイムにローミング、
その動画のアクセス数が増えるほどギミックが発動していくという残虐な手口を取っていた
捜査を続けていく内に犯人像に近づくジェニフアーであったが、
犯人の魔の手はやがて彼女の家族に及び始める。

ダイアン・レイン主演のサスペンス映画。
SAWシリーズを彷彿とさせる殺人ギミックのインパクトもさることながら、
本作の肝は興味本位でサイトにアクセスする"無名"の人々の"無意識"の悪意が被害者を死に至らしめるという仕掛け、この一点に尽きる。
これが時限爆弾的な緊迫感をもたらすスパイスとなって、作品に味わいを加えている。
テンポも良いのでサクッと変わったサスペンスが観たい気分になった時にオススメ。

映画:『イントルーダーズ』


〜ストーリー〜
スペイン人の少年がある物語の執筆を始めた。
それと時を同じくして、少年の周りには顔のない怪人が夜な夜な現れるようになる。
悪魔憑きも疑われたが、いつしか少年とその母親は行方をくらましてしまう。
数十年後のイギリス。
ある少女が少年の書いた物語を発見する。
そして、それをきっかけに、再び顔のない怪人が現れ、少女を脅かすようになる。

過去のスペインと現在のイギリス。
異なる2つの時間と場所で顔のない怪人に怯える少年と少女。
「彼らは単に精神を病んでいるのか?それとも顔のない怪人が実在するのか?」を軸に、
2つのストーリーがクロスオーバーしていく。
決して派手さはないが、伏線はきちっと回収されるし、
謎が解明されてからもう一捻りあり、丁寧で堅実な作りが光る作品。
主演はクライブ・オーウェン。
わざわざDVD借りて観るほどの映画でもないと思うけど、
深夜テレビやCATVで放映されている分には見ても損はしないと思う。
最近iTunesStoreが見逃した映画や劇場未公開作品流してくれるので助かる。

映画:『第9地区』


ヨハネスブルクに1機の巨大なUFOが出現した。
その内部には飢餓で苦しむエイリアンがおり、
地球は彼らを難民として受け入れる事を決め、
第9地区と呼ばれる地区に隔離する事となった。
月日が流れ、第9地区は一大スラムと化し、また、犯罪の温床ともなっていた。
これを危険視した地球はエイリアン達を更に僻地へ移送しようと、
特殊機関MNUによる強制退去に乗り出す。
その責任者に命ぜられたヴィカスはある任務の最中、
エイリアンが所持していた液体を浴びた事から、
身体が徐々にエイリアン達との同質化していき、
かつての仲間から追われる身となる。

身体がエイリアンと同質化していくという設定が一見キワモノに思われるが、
マイノリティを監視する立場の人間が一転、マイノリティを助けるための戦いに身を投じるというサイバーパンクの基本プロットのひとつを現代に近い時代設定で表現したSF作品。
アメリカやヨーロッパでは既に摩擦を引き起こしている移民問題を彷彿とさせる場面が多数あり、
"見かけ"よりは色々な事を考えさせられる作品。
主人公の心境の変化も丁寧に描かれており、
決してハッピーエンドとは言えないラストシーンには、
何とも言えない哀愁が漂う、余韻の深い作品。

2013年6月12日水曜日

映画:『ムカデ人間』


〜ストーリー〜
シャム双生児の分離手術の名手として名を馳せる外科医ハイター博士。
彼には密かな野望があった。
それは、別々の人間の口と肛門を繋ぎ合わせてムカデ人間を生み出す事だった。
ある日、博士の自宅に遭難した女性旅行者が2人助けを求めて現れる。
彼女らを監禁した博士はもう一人日本人男性を監禁し、
禁断の手術に踏み出すのだった…。

知る人ぞ知るグログロカルトムービー。
手を出したらダメだ…と思いつつ手を出してみたら、やっぱり後悔した…。
荒唐無稽な内容ながらも妙に説明も描写も丁寧なうえ、
ムカデ人間完成後は凄惨の一言。
だって、3人の人間を口と肛門で結ぶっていう事は、
後ろ2人の食事は…言わずもがな、である。
SAWシリーズとは違って生理的なところをエグってくるグロさ。
間違っても淑女の皆様は手を出してはいけないし、
グロ耐性あるぜ!という紳士の皆様でもお腹いっぱいの時には観ない方が良い。
何人かでギャーギャー騒ぎながら観られるかどうかも微妙。
こんな映画が生み出された事自体狂気の沙汰ではないが、
何よりも恐ろしいのは、この映画のスマッシュヒットを受け、続編が生まれたこと。
こちらは未見だが、2ではハイター博士に憧れた醜男が7人もの人間を連結するさらにエグい内容で、さらに、3の製作も決定。
こちらはハイター博士が復活し、
メタルクウラもビックリの百人ムカデ人間を見せる予定という…。
我こそはというドSピープルか、ス○○ロ耐性のある方のみにオススメします。

映画:『TIME』


〜ストーリー〜
余命が貨幣の代わりとなった近未来。
貧困層の青年ウィルはある事件をきっかけに100年以上の余命を与えられ富裕層の住むエリアに侵入する。
そこで社会の仕組みを知ったウィルは、
警察とギャングに追われながら貧困層を解放する戦いに身を投じる。

ジャスティン・ティンバーレイク主演のSF映画。
おそらく貧困層と富裕層に二分された現在のアメリカ社会や、
それを生み出した資本主義経済への批判がテーマ。
しかし、主人公がやっている事は強盗と銀行のお金を貧困層にたまにバラまく事だけで、
経済の仕組みを根本的に作り変えるというものではない。
この映画、こういった感じの浅さが結構色々な所で目につく。
例えば、主人公の父親のエピソードを掘り下げれば警察との駆け引きがよりスリリングになったろうし、
富裕層であるが故の悩みをもっときちんと描く事で、
主人公の行動により説得力を持たせることができたと思う。

映画:『デイブレーカー』


〜ストーリー〜
人間をヴァンパイアに変えるウィルスが広がって10年が経った。
人間の人口は5%にまで減少し、ヴァンパイアの社会は血液不足と、それに伴うサブサイダー(変異体)の出現に悩まされていた。
血液学者であるエドワードは代用血液の開発に取り組んでいたが、成功の糸口を掴めずにいた。
しかし、ある日、エルビスという元ヴァンパイアの人間が現れ、エドワードに協力を要請する。
それは、ヴァンパイアを人間に戻す治療法の開発だった。

イーサン・ホーク(『ガタカ』『アサルト13』)、ウィレム・デフォー(『スピード2』『スパイダーマン』)、サム・ニール(『ジュラシックパーク』シリーズ)ら豪華キャスト主演の近未来吸血鬼映画。
少々ダークでグロめなゴシックホラーのテイストと、
無機質で機械的なサイバーパンクのテイストが混ざり合った世界観が特徴的。
また、吸血鬼ものとしては一風変わった設定を持つ。
オチが強引な感も否めないが、
ストーリーかキャストに魅力を感じた人、
もしくは、サイバーパンクかホラーが好きな人で、
バイオハザードの1くらいのグロさなら平気という人ならそれなりに楽しめると思う。
"こけおどし"も少なめ。

映画:『リーピング』


〜ストーリー〜
かつて宣教師をしていたキャサリンは布教先で夫と娘を失った。
それ以来、神の存在を否定し、いわゆる奇跡と呼ばれる現象を科学的に解明する事をライフワークとしていた。
ある町でひとりの少女が兄を殺して以来、出エジプト記の10の災いに似た現象が起きている事を知ったキャサリンは調査に向かう。
しかし、町で起こる現象の数々は、いくら科学的調査を重ねても解明できないものばかりであった。
やがて町は事件の鍵を握る少女を中心として不穏な空気に包まれ始める…。

ヒラリー・スワンク主演のホラー映画。
この映画、確か公開当初は「イナゴ少女現る!」とかいう、
それだけで何パーセントの観客を失ったのだろうと思うほどひどいキャッチフレーズで宣伝されていた。
しかし、実際はキリスト教や悪魔崇拝をベースに、サスペンス要素も多分に含んだ立派なホラー映画。
例えば、リチャード・ギアの『プロフェシー』やミラ・ジョボヴイッチの『フォース・カインド』みたいに、
このテの超常現象を扱うホラーはオチが消化不良になりがちなのだが、
本作はストーリー上の伏線がしっかりしているため最後までしっかり鑑賞できる。
最後の最後のひとつの仕掛けにも思わずニヤリ。

2013年6月9日日曜日

映画:『ジャッキー・コーガン』

~ストーリー~
「優しく殺す」がモットーの殺し屋ジャッキー・コーガン。
ある日、賭博場強盗の実行犯と黒幕を捕らえるよう依頼された彼は、
独断で実行犯らの殺害を目論む。

ブラッド・ピット主演のクライムムービー。
久々に予告詐欺にあった気分。
予告だとひとりの殺し屋が単身ギャングとの戦いに挑むスタイリッシュなクライムアクションといった感じだが、
テイストが悪い方向に出た時のタランティーノの映画を観ているかのようなダラダラしたクライムムービーのさらに質の悪いのを見せつけられたというのが率直な感想。
CGを利用したややスローモーション気味なアクションシーンも予告で流れたもので全て。むしろこの映画のテイストに必要だったのかさえ疑問である。
そして、最後はギャラを渋る依頼者にトーマス・ジェファーソンの経済政策がいかにダメなものかについて演説を垂れて終わり。
一体何がしたい映画だったのか。
せっかくジェームズ・ガンドルフィーニやレイ・リオッタなど渋いキャストも揃っているのだから、
同じプロットで何十倍も良い映画が作れたはず。
(自分は何が良いのかさっぱり分からない)『パルプ・フィクション』や『SNATCH』辺りを楽しめた人なら鑑賞に耐えられるレベルかと思う。

映画:『月に囚われた男』

~ストーリー~
サムはルナ社と3年の契約で、
月に眠る燃料ヘリウム3を採掘する仕事に就いていた。
愛する家族を地球に残し話し相手はAI・ガーディだけの孤独な生活。
契約終了まで2週間と迫ったある日、
サムは採掘の途中で事故に遭い意識を失ってしまう。
次の瞬間目覚めたのは採掘基地の医療室。
我が身に起きた事に疑問に抱いたサムは事故の真相を追い事故の現場に戻る。
そこにいたのは自分とそっくりな人間だった…。

『チャーリーズ・エンジェルズ』『アイアンマン2』などのサム・ロックウェル主演のSFムービー。
ほぼ彼の独り舞台で、その変幻自在な演技に、
名優ケヴィン・スペイシーがガーディの声として華を添える。
サムとガーディ、そして、もうひとりとの自分との会話は時にユーモアで、また、時に緊迫感があるものだが、全体的にはローテンションな映画。
説明不足な部分が多い事も否めないが、
孤独に生きる男の悲哀や事件の意外な真相など、見所も十分にある作品。
プロットとしてはありがちなものとは言え、
ややSFマニアな玄人受けする作品だと思う。
『ガタカ』なんかにハマった人も楽しめるのでは。

映画:『お買いもの中毒な私!』

~ストーリー~
園芸雑誌の編集室で働くレベッカは重度の買いもの中毒。
迫りくるカードローンの返済日に日々怯える生活を送っていた。
そんな彼女の夢はファッション雑誌の編集室で働くこと。
しかし、とある手違いから同じ出版社の中にあるお堅い経済雑誌の編集室に採用されることになってしまった。
初めは苦悩するレベッカだったが、
自らの体験を基にした企画が読者の共感を得て大ヒット。
編集長であるイケメン編集長のルークとも恋仲になり、
人生が順風満帆に進みかけたように思われたのだったが…。

2009年の公開時に当時付き合っていた彼女に頼まれて一緒に観に行った映画(照)。
ストーリーそのまんまの単純なサクセスストーリーで、
『プラダを着た悪魔』のようなおどろおどろしさもない。
原色に彩られた画面の中を女の子がキャッキャキャッキャ大騒ぎする姿を何も考えずに鑑賞するのがベスト。
こういうハイテンションでハッピーな作品を観るのもたまには良いことかも知れない。
ただ、カード社会であるアメリカと本作公開前に訪れたサブプライムローン問題のことを鑑みると、
本作が扱うテーマというのはアメリカ人にとっては深刻な問題なのかも。
『キューティ・ブロンド』シリーズなんかが好きな人なら十分楽しめるのでは。

映画:『光の旅人 K-PAX』

〜ストーリー〜
精神科医マークの元にプロートと名乗る男が現れる。
彼は自らをK-PAXという星からやって来た宇宙人だと言う。
初めは一時的な記憶喪失と精神錯乱を疑うマークだったが、
現在の地球では知り得る事のできない知識や、
彼の言葉が周囲の人々に与える影響を目の当たりにし、
自らの考えが揺らぎ始めるのを感じる。
しかし、ある時、プロートの正体ではないかと目される人物の情報が飛び込んでくる…。

ケヴィン・スペイシー/ジェフ・ブリッジズ主演のSFヒューマンドラマ。
プロートの正体を明らかにしようとするサスペンス的な要素を含みながら、
彼の放つ示唆に富んだ言葉に己の人生を考えざるを得なくなる不思議な作品。
優しい光に溢れる視覚効果も本作の暖かみに彩りを加える事に成功している。
興行的には振るわなかったようだが、
優しい気持ちになりたい時にはぜひ鑑賞をオススメしたい。

映画:『1408号室』


〜ストーリー〜
呪われた場所を取材し本にまとめる事で生計を立てている作家マイク。
そのくせ彼は超常現象に一度も遭遇した事がなく、幽霊や奇跡といった現象、あるいは、神の存在すら信じていなかった。
ある日、取材依頼の手紙の束に紛れた「1408号室には入るな」とメッセージの入ったドルフィンホテルの絵葉書に目が留まった彼は、早速取材を申し込む。
その部屋では過去、自殺・事故・自然死を含め56人もの人間が死に、多数の人間が何らかの被害を負ってその部屋から出る事を余儀無くされていた。
マイクは支配人のオリンに直談判し1408号室の宿泊許可を得る事に成功する。
しかし、想像を絶する恐怖が彼を襲う事になろうとは知る由もなかった。

ジョン・キューザック、サミュエル・L・ジャクソン共演のホラー映画。
おふざけなしのホーンテッド・マンションみたいな感じの映画で、
ジョン・キューザックがとんでもない目に遭うのをひたすら鑑賞するだけの映画。
後半はもはやパニック映画。
必死なジョン・キューザックの顔が時折エガちゃんに見えて仕方なかった…。
1408号室が生まれたそもそもの経緯をもう少し詳しく掘り下げるとか、
部屋に出てくる幽霊?の背景を掘り下げるとかしていれば、
サスペンス的な要素も加わってストーリーに深みが出たのではないかと思う。
スティーブン・キング原作の作品にそこまで求める方が酷なのだが…。
が、この映画、どうやらキリスト教の事を知らないと100%楽しめないうえに、エンディングの解釈の仕方が変わるんだとか。

映画:『レポゼッション・メン』


〜ストーリー〜
近未来、人工臓器移植技術の発達により、
人々は恒常的な健康と長寿の恩恵を受けていた。
そのあまりに高額な手術代に、ローンの返済が不能になる者もおり、
主人公レミーはそんな彼らから人工臓器を再び回収するレポメンの中でもトップクラスの実力の持ち主だった。
しかし、あまりに仕事に熱中するあまり、愛する妻との仲は徐々に悪化していた。
ある日、レミーは不慮の事故から自ら人工臓器を移植されることになる。
それにより、返済不能者の心情を理解するようになってしまい、
レポメンとしての任務を全うできなくなってしまった。
妻には見放され、いよいよ返済日を過ぎ、
かつて同僚であったレポメンから追われる身となった主人公は、
全ての人工臓器移植データを消去するため、システムの中枢部に乗り込む。

サイバーパンクの王道的作品。
ハードなアクションシーンが見もので、
時折SFらしいギミックや兵器は出てくるものの、
どちらかと言うとナイフやハンマーを駆使した肉弾戦の方が熱い。
最終バトルでの主人公の無双っぷりが『リベリオン』か『ウォンテッド』とよく似ている。
描写はあっさりとしてるものの、
身体を切り開いて人工臓器を取り出すシーンや喉を掻き切るシーンも満載なので、
貴賓さを求める紳士淑女には向かない映画かも。
しかし、この作品で特筆すべきは、ラスト5分間のどんでん返し。
劇中の伏線を見逃さなければある程度予想はつくものの、
それでもなかなか衝撃的なもの。
『リベリオン』とか『マイノリティ・リポート』辺りが大丈夫な人なら十分満足できるレベルだと思う。

映画:『恐怖ノ黒電話』


〜ストーリー〜
マリーは離婚をきっかけに幼少期を過ごした町の古びたアパートに引っ越しした。
その部屋には黒電話が備え付けられており、
ある日を境にローズと名乗る女性から電話がかかってくるようになる。
ローズは情緒不安定で時折ヒステリーを起こすため初めはまともに相手にしなかった。
しかし、ローズが「自分は過去におり未来のマリーと電話が繋がっている」と言い始めた頃から、周囲で次々と不可解な現象が起き始める。

B級映画テイストのタイトルをしているが、
おふざけ一切なしの純然たるホラー映画。
説明不足な点が多少見られるものの、
エンディングに向けて伏線が丁寧に積み重ねられている点が好印象。
ただ、とにかく地味で暗いのが難点。
照明的は全体的に北向きの窓みたいに暗いし、
流れるBGMも暗めかつ小音量。
グロい場面もこけ脅しも本当に少ないため、
人によってはとても退屈に思われるだろう。

映画:『ミスター・ノーバディ』

〜ストーリー〜
2092年、科学技術の進歩はついに人間を不老不死にした。
不老不死の処置を唯一施さなかった人類最後の死者になり得る男、
ニモ・ノーバディはその死期が近づきつつあり、その動向は大衆の注目を集めていた。
ある日、彼の元にひとりの新聞記者が現れ、インタビューを敢行する。
だが、彼の語る3人の女性との人生は互いに複雑に絡み合い矛盾を孕んだものだった。
果たして真実はどこにあるのか…。

ややネタバレします。
『ファイト・クラブ』『レクイエム・フォー・ドリーム』のジャレッド・レトを主演に、
ダイアン・クルーガー(『ナショナル・トレジャー』『イングロリアス・バスターズ』)、サラ・ポーリー(『死ぬまでにしたい10のこと』『ドーン・オブ・ザ・デッド』)、リン・ダン・ファン(『戦場のピアニスト』)らをヒロインに迎えた作品。
「人生の選択」をテーマにした作品で、
主人公ニモが人生の岐路に立つ度に生まれる「次の人生」を同時並行的に一つの作品内で描いていくという意欲作。
とは言え、意外とストーリーは頭に入ってきやすく、
素晴らしい視覚効果のおかげもあって137分という長い上映時間を感じさせない。
ただ、オチの付け方が強引かつ分かりにくい部分があり、
「結局この映画って何が言いたいの?」という人が少なからず出るような、
好き嫌いがはっきり分かれる作品だと思われる。
でも、それを初めから解って、あえて観た者に選択を委ねる作品を作ったんだろうなという感じもする。
だから、この作品を機に人生について考えるのも良し、つまんねと思ってすぐに忘れるのも良し、
ちょっと変わった群像劇、1人の男が3人の女について妄想する恋愛映画、あるいは、『バニラ・スカイ』や『バタフライ・エフェクト』のように時間軸と選択をテーマにしたSF映画という見方をするも良し。
個人的には、最終的に監督の伝えたい事は人生賛歌なんだろうと思うけど、
どう考えてもダイアン・クルーガーのヒロインパートの人生を良いように描いているので、それはフェアじゃないなーと感じた。
あと、15歳のニモが神木龍之介君に似てた。