2016年5月24日火曜日

小説:深木章子『鬼畜の家』

〜ストーリー〜
自動車事故により行方不明となった北川郁江と息子・秀一郎。
児童養護施設の友人から、
ひとり取り残された娘・由起名の独立のために、
保険金の支払いを拒否する保険会社との交渉材料を集めて欲しいと依頼を受けた私立探偵・榊原は、
北川家に関係するものへの調査を開始する。
やがて、調査の中で、
北川家の壮絶な家庭環境と、
郁江の周囲で不審な事故や自殺が相次いでいたことが明らかになる。

本作で第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞した深木章子のデビュー作。
作者自体が東大卒業後、60歳まで弁護士を勤め上げそこからミステリー作家になったという、
小説の登場人物のような人物だそう。

タイトル通り鬼畜の家と呼ぶべき郁江とそのこどもらの壮絶な家庭環境が、
関係者への調査を通じて炙り出されていく課程が主として描かれる。
しかし、その中の一件本筋とは関係なさそうな複数のエピソードが実は伏線となっており、
終盤で隠された真実が明らかになる。
どんでん返しに次ぐどんでん返しはミステリー好きには涎垂もの。
鬼気迫る感じは少ないものの、
保険金も話に絡むことから『黒い家』が好きな方も楽しめるのでは。

本作の主人公・榊原の登場するシリーズは他に2作あり、
受賞もされるなど評価は高い模様。
続けて購読の予定。

2016年5月22日日曜日

漫画:『ロード・トゥ・シビル・ウォー』

〜ストーリー〜
シビル・ウォーから遡ること数年。
様々な出自や背景を持ちながら増え続けるヒーローの存在が、
やがて惨事を生み出すのではないかと危惧したアイアンマン=トニー・スタークは、
秘密裏に有力者を集めヒーローを管理する組織の制度の立案を提案する。
しかし、ネイモアを始め他のヒーローと同じく各者各様の思想を持つ彼らがまとまるはずがなく、
やがて秘密の会合に出席する者もその数を減らしていった。
それでも諦めないスタークはとあるヒーローに目を付け、
彼を利用し制定化を目論むのだが…。

ヒーロー同士の争いを描いたシビル・ウォー原作派生作。
トニー・スタークがなぜ仲間との戦いを選んでまでヒーロー登録法案の成立に拘ったのかというシビル・ウォーの前日譚と、
本編において重要な役割を果たすスパイダーマンとアイアンマンの関係、
ソーのハンマーを巡るファンタスティック・フォーとDR.ドゥームの戦いを描いたエピソードが収録されている。
設定自体はやや後付け臭いものの、
アイアンマン、スパイダーマン、ファンタスティック・フォーとも、
本編で非常に重要な役割を果たすキャラクターであり、
シビル・ウォーの世界観に更なる背景を肉付けしているという意味において、
原作関連作を読むなら是非オススメしたい作品。