2016年6月4日土曜日

映画:『デッドプール』

〜ストーリー〜
元傭兵のウェイドは全身を癌に蝕まれ余命宣告を受ける。
癌を治癒しさらに特殊な力を与えるという男の誘いに乗り、
恋人ヴァネッサを残し謎の組織の元に赴いた彼であったが、
そこでは人間をミュータントに変えるための非人道的な人体実験が行われていた。
火傷のように爛れた皮膚と引き換えに、
優れた身体能力と超再生能力ヒーリング・ファクターを得たウェイドは、
咄嗟の機転を利かし組織から脱出することに成功する。
復讐に燃えるウェイドはデッドプールと名乗り、
組織のリーダー・フランシスへの復讐を誓う。

マーベルコミックのヒーローのひとり、デッドプールの実写映画。
ウルヴァリンと同じヒーリング・ファクターを持ち、
お喋り、下品、いい加減というおよそヒーローらしくない性格をしたキャラクターだが、
一番の特徴は「第四の壁」を乗り越える能力、
つまり、自分が物語の登場人物であることを理解しているという点。
初出はX-MENのヴィランとしての登場だが、
上記の性格ゆえ、ヒーローの味方になったり敵になったり、
自分の都合に合わせてその立ち位置をコロコロと変える。

上記のキャラクターを理解しているか、
おバカ映画と割り切るかしなければ、
頭のおかしなマスク男が主人公で、
お下劣ネタ満載のちょっと派手なアクション映画くらいの認識しか持たれない可能性がある。
これに拍車をかけるのがメタネタの数々。
主演のライアン・レイノルズはかつて『X-MEN ZERO』でもデッドプールを演じているが、
あまりのキャラクター破壊に原作ファンから顰蹙を買ったことがある。
そんな過去を揶揄するかのようなネタがあったと思ったら、
彼が主演したDCコミックの『グリーン・ランタン』までネタにしてしまっている。
パンフレット読むまでそんなこと忘れてたよ…。

マーベル映画ではお馴染みのエンドロール後のおまけシーンは健在。
コミカルなシーンに仕上がっているので最後まで観て欲しい。
続編の存在を匂わせ、
デッドプールと縁の深いX-MENのとある一員の名前が出てくる。
のだが、X-MENの原作かアニメでも見てない限り誰も知らないであろうキャラなので盛り上がりには欠けるかも。

総じて、
お気楽アクションムービーと割り切るか、
マーベルコミックの原作に多少なりとも慣れ親しんでいる人なら楽しめるであろう作品。

2016年5月30日月曜日

小説:深木章子『衣更月家の一族』

〜ストーリー〜
別居中の夫からストーカー被害を受ける妹を匿う姉。
とある秘密を抱えかつての恋人と結婚を余儀なくされた女。
父の事業の失敗により暴力団の裏稼業に引き込まれた男。
一見何ら関係がない彼らの周りで起きた殺人事件が、
元刑事の私立探偵・榊原の手により繋がっていく。

『鬼畜の家』の深木章子の2作品目にして、
私立探偵・榊原シリーズの第2弾。
絡まった謎の糸が終盤でしゅるしゅると解けていく快感を本作でも味わうことができる。
ただ、『鬼畜の家』ほど伏線がしっかり張られている訳ではないので、
推理する楽しみはやや減った印象。
それでも十分に読後の満足は得られるが。

ドロドロとした家族像の描写も相変わらず秀逸。
元弁護士である著者だが、
やはり色々な家族を見てきたのだろうか…。

2016年5月29日日曜日

小説:深木章子『螺旋の底』

〜ストーリー〜
セラピストである女は患者であった男と結婚し、
パリから田舎町ラボリに移住する。
男は地元の大地主ゴラーズ家の跡継ぎであったが、
彼の住む屋敷の地下には一見のどかに見える町でかつて繰り広げられた凄惨な歴史が封印されていた。
そして、その地下の秘密を解き明かすことこそ女が男と結婚した真の理由であった。

深木章子の3作目。
私立探偵・榊原を主人公とした前2作から打って変わり、
1960年代のフランスの田舎町を舞台としたサスペンスとなっている。
男と女、それぞれの一人称語りで場面が切り替わり、
その中で感じられる違和感が終盤への伏線になっているという叙述トリックの体裁が取られているのも前2作と異なるポイント。
相変わらず物語の構成が見事で、
読後にもう一度読み返したくなること請け合い。