2016年9月22日木曜日

小説:フィリップ・K・ディック『トータル・リコール』

〜ストーリー〜

『トータル・リコール』
妻から呆れられるほど火星に憧れを持つクウェールは、
脳内に偽の記憶を移植し一生の思い出を植え付けるというサービスを提供するリカル株式会社を訪れる。
自分が国家組織の一員で火星に秘密の任務に就いていたという記憶を植え付けようとしたクウェールだったが、
彼の脳内にはとある秘密が隠されていた…。

『マイノリティ・リポート』
未来予知能力を持つミュータント・プリコグの力で犯罪を予見し防止する犯罪予防局の長官アンダートン。
引退が間近に迫ったある日、
自分が見知らぬ男を殺害するとの予知がなされたアンダートンは、
未来の無実を証明するため、
公認候補であるウィットワーらの追跡を退けながら、
プリコグの真実に迫ろうと奔走する。


 サイバーパンクの開祖、フィリップ・K・ディックによる作品を集めた2012年に発行の電子書籍。
シュワちゃん主演で実写化された表題作『トータル・リコール』や、
同じくトム・クルーズ主演で映像化された『マイノリティ・リポート』の原作を含む、10編の短編集。
映画の『トータル・リコール』は変態監督ポール・バーホーベンの悪趣味全開のSFアクションに仕上がっていたが、
原作はとある男の記憶を巡るサスペンスのテイストが強い(間違っても目ん玉ビヨーンなんてシーンはない)。
いずれの作品も社会や世界、宇宙、あるいは、
テクノロジーが進んだ世界における人間の在り方を追究・描写しながら、
エンターテイメント性にも富み、
さらにあっと驚く結末が用意されている(多分そういう作品ばかり集めたのだと思うが…)。
1950〜70年代に発表された作品が収録されているが、
古臭さもまったく感じられない。
短編集ということもあってサクッと読めるため、
SF映画ファンならぜひ購読をオススメしたい。

2016年9月18日日曜日

映画:『スーサイド・スクワッド』

〜ストーリー〜
スーパーマンの死後、
メタヒューマンやスーパーヴィランに対抗する力を得るべく、
政府の高官アマンダ・ウォラーは、
スーパーヴィランによる特殊部隊タスク・フォースXの結成を提言する。
そのメンバー候補に選ばれたのは、
悪名高き犯罪者ジョーカーの恋人であるハーレイクイーンや、
百発百中の狙撃手デッドショットなど、
一癖も二癖もある悪人ばかりであった。
また、その中には、
アマンダがコントロール下に置いている魔女エンチャントレスの名も挙がっていたが、
彼女が憑依しているムーン博士とリック・フラッグ大佐との関係を巧みに利用し逃亡に成功。
復活した弟と共に人類を滅ぼすべく動き出す。
彼女らを目論見を阻止すべく、
タスク・フォースXがいよいよ派遣される。

DCコミックスの人気シリーズ『スーサイド・スクワッド』の実写映画作品。
『マン・オブ・スティール』を皮切りに今後公開が予定されているジャスティス・リーグシリーズのスピンオフ作品ながら、
前作『バットマンvsスーパーマン/ジャスティスの誕生』とこれからのシリーズ作品との橋渡し役を兼ねている。
様々な能力を持ったヴィランによるアクションが売りのひとつのはずなのだが、
味方で明らかに現実離れした力を持っているのがディアブロしかおらず、
しかも彼はとある理由で途中まで戦いに参加しないため、
しばらくはコスプレをした人たちによる他の映画とそれほど大差のないドンパチアクションが繰り広げられる。
また、ストーリーについても、
ハーレイクイーンを除くと家族や恋人との関係に難を持つ実に湿っぽいキャラが多く、
意外とテンションは低め。
各キャラクターの背景を丁寧に描いてストーリーに深みを与えよう、
というのは分からないではないが、
登場人物が多い分結局浅いエピソードになってしまっている。
これならいっそタランティーノかロバート・ロドリゲスにでも監督をやらせて、
個性のキツすぎる悪役が自分の命を守るために、
仕方なしに手を取り合って敵と戦うハイテンションな映画にしておいた方がよほど良かったのではないかと思う。
単品の映画でキャラクター紹介を終えているアベンジャーズと違って、
少々原作のことを知っていないと厳しい点もある。
ヒーロー側からはフラッシュとバットマンが登場。
また、エンドロール後には、
『ジャスティス・リーグ』に続く重要なエピソードを描いたおまけシーンと、
なぜだか妙にダサい『ワンダーウーマン』の予告編が流れる。