2013年8月14日水曜日

映画:『ワールド・ウォーZ』

~ストーリー~
人間が凶暴になる謎の感染症が世界各地で広まりを見せていた。
ジェリーはかつて国連に所属し、
内戦や紛争解決のエキスパートとしてその任に就いていたが、
現在は引退し愛する家族と心穏やかな生活を送っていた。
しかし、家族と出掛けたマンハッタンで、
人間が人間を襲い、襲われた人間がまた他の人間を襲うという光景を目の当たりにする。
何とか被害から逃れる事のできたジェリーはかつての同僚から要請を受け、
家族の安全と引き換えに原因究明のために再び"戦地"に身を投じる。

ブラッド・ピット主演のゾンビ・パニック映画。
原作は「Z(=ゾンビ)戦争」を生き延びた人々へのインタビューという形式をとったマックス・ブルックスの同名の小説。
ゾンビそのものの恐怖よりも、
ゾンビの発生によるパニックとそれに伴う終末的世界を描く事に重きが置かれており、
パニック映画としての見方をした方が正解かも知れない。
血飛沫が上がるとかゾンビが内臓をくちゃくちゃと喰らうようなグロいシーンも皆無。
本作のゾンビは『28日後...』以降の「走る感染者」設定を踏襲しており、
走るだけでなく獲物に噛み付く時には飛びかかっちゃうほど元気一杯!
そんなゾンビが大量発生する場面は、
まさにゾンビ渦(禍)という言葉そのもの。
特に、大量のゾンビか壁をよじ登り街に侵入するイスラエルでのシーンは、
どうやって作ったのかが全く分からないほど無数のゾンビが出現し、
大迫力かつ本作の全てを象徴するシーンになっていると思う。

ただ、引っかかる点も幾つかあって、
まず、登場人物達の心理描写が弱い。
例えば、親がゾンビになり命からがら逃げた子どもはその後何もなかったかのように振る舞っているし、
家族の所在が不明になった主人公にしても一瞬悲しむだけ。
他にも家族や故郷を失ったという人物も出てくるのだけどほとんどが一言のセリフだけで終わっている。
この辺りを丁寧に描けば物語により深みが生まれただろうと思う。
ゾンビ映画愛好家の中には、
ゾンビ映画というのはグロいシーンを楽しむものではなく、
ゾンビ渦の発生により極限状況下に置かれた人間模様や心理を観るための映画という考え方をする人がいるくらいである。
その意味からいっても単なるパニック映画に留まってしまっている点が非常に残念。
また、アメリカが世界をどう見ているかが何となく見え隠れするようで、そこが気になる人もいるかも知れない。
例えば、発生源の一つであるとされる韓国の村は、いつの時代のどこの未開拓地だよと思うほど鄙びた描かれ方をしている。
上述のイスラエルのシーンにしたって、
せっかくイスラエルがアラブの難民を受け入れてやったのに、
野蛮に歌なんか大声で歌うから音に敏感なゾンビが寄ってきちゃった、とでも言わんばかり。
ラストでは、ロシアの事を解決策が見つかったにも関わらず戦いを続けるアホ国家扱い。
あー、きっとアメリカってそういう風に世界を見ているんだなぁ嫌だなぁと思う人も中にはいるはず(考え過ぎ?)。
あと、ド派手なシーンを中盤までに集約してしまう竜頭蛇尾的な構成も最終的に本作の評価を下げる原因になり得るのではないかと思う。
ゾンビが大量発生するシーンが前半に固まっているため、
後半の飛行機のシーンやある施設でのシーンはそれと比較してどうしても見劣りしてしまう。
その低くなってしまったままのテンションでエンディングを迎えるため、
何となく物足りないまま劇場を後にすることになる。
普通の映画ならやっぱり終盤に一番面白い所を持ってくるじゃないですか。
こういう映画の作りはパニック映画には結構ありがちで、
例えば、『デイ・アフター・トゥモロー』という映画の場合、
一番の見所であるブリザードで街がどんどん凍っていくシーンが早い内に訪れるので、
その後屋根から転げ落ちそうになるとかオオカミに襲われそうになるシーンが地味に見えて仕方がない。
え?これで終わり?となってしまう。

とは言え、お金がかかっているだけあって、
エンターテイメント性は十分にあるので、
映画でワクワクドキドキしたいという方にはオススメします。

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