2014年5月17日土曜日

小説:若竹七海『暗い越流』

~ストーリー~

『蝿男』
探偵の葉山は、
今は誰も住んでいない屋敷に母の遺骨を取りに行って欲しいという依頼を受け現場に赴くが、
そこで何者かの襲撃を受ける。

『暗い潮流』
5人を殺害、23人を負傷させた死刑囚・磯崎の元に山本優子という女性からファンレターが届く。
山本の正体を探るよう依頼を受けた雑誌編集者は調査を続ける内に、
山本優子が実在しかつて磯崎と近所付き合いをしていた事を知る。

『幸せな家』
失踪した女性雑誌編集者の捜索を依頼されたライターは、
彼女が周囲の人間を脅迫し金銭を得ていたのではないかという疑いを持つ。
だが、事態は思わぬ方向に進んでいく。

『狂酔』
とある教会で立て篭り事件が発生した。
犯人である男はその教会と自分の生い立ちとの関係について話し始める。

『道楽者の金庫』
探偵を休業し古本屋でアルバイトをしていた葉山は、
ひょんな事からとある資産家の金庫の番号が隠されていると思われるこけしを探すよう依頼を受ける。
資産家の別荘に赴いた彼女は、
またしても何者かの襲撃を受ける。


表題作『暗い潮流』で日本推理作家協会賞短編部門を受賞した若竹七海の短編ミステリー集。
どの作品も「家」と「歪んだ家族・人間関係」がキーとなっている。
ほとんどの作品が依頼を受け調査をするという探偵ものの形式を取っている中、
一番のお勧めは唯一その形式を取らず犯人の独白でストーリーが展開される『狂酔』。
教会に隠された欺瞞に振り回された主人公とその周囲を取り巻く人物の惨めながらひたむきな生活は美しく感動的ですらあるのだが、
作者が最後の最後に設置した仕掛けに世界が反転し度肝を抜かれる。
その他の作品もミステリーとして及第点以上のクオリティ。
文体も読みやすいもので短編なのでサクッと読むことができる。

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