化粧品会社の女性社員・三木が殺害された。
その疑いの目は事件直後から行方をくらました彼女の同僚である城野に向けられる。
フリーライターの赤堀は、
ふたりの後輩である狩野から事件の話を聞き取材を開始する。
彼女を犯人と確信する者、
彼女を擁護する者、
彼女の家族・親友・同僚、
彼女を取り巻く人々の話が城野という女性の人物像をあぶり出し、
それはやがて雑誌やSNSを通じて形を変えながら拡散していく。
『告白』『北のカナリアたち』など、
立て続けに映画化されたヒット作を世に放っている湊かなえの小説。
本作も井上真央・綾野剛・菜々緒らをキャストに迎え映画化された。
『告白』が主人公の独白によって成立していたストーリーであるのに対し、
本作は城野を取り巻く人物が話す会話や雑誌・SNSにより事件の真相が明らかになっていくという構成が取られている。
ジャンルとしては叙述トリックにより読者のミスリードを導くサスペンスということになろうが、
事件の真相に関して言えばサスペンス的な驚きは少なめである。
むしろ、人間がいかに自分に都合が良いように記憶を捻じ曲げ話をするかといった点と、
それらが情報化社会において様々な形で拡散していく可能性があるという恐怖を描くことに主眼が置かれているように感じた。
しかしながら、テーマとしては決して目新しいものではない。
また、物語の構成上仕方がない部分ではあるが、
各登場人物の会話が説明的かつ冗長になりがちであり、
読み進めるにあたり焦ったさを感じさせる点もある。
どの登場人物も一癖も二癖もある人間ばかりで、
事件の真相が明らかになっても誰も得をしないというところも、
人によっては読後の満足感を削ぐ原因たり得るだろう(個人的には嫌いではない)。
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