エリート証券マンからホームレスに転落した山崎は、
占い師の龍斎と容姿端麗なホームレス仲村と出会い、
人生を逆転させる妙案を思い付く。
それは、宗教団体を作ることであった。
3人が立ち上げた「大地の会」は順調に規模を拡大し金を生み出していくが、
会員が増えていくのに従って徐々に綻びが生じ始める…。
『オロロ畑で捕まえて』『明日の記憶』『噂』など、
幅広いジャンルで才能を発揮する小説家・荻原浩による長編小説。
ストーリーはホームレス期・創立期・転換期の主に3部構成により成り立っており、
山崎の過去や心理を深く描写する事で、
人生の逆転の道を進みながらも苦悩にもがく人間の姿と、
彼を取り巻く心に何かを抱えた人々の人間模様を描くヒューマンドラマが展開される。
他方で、様々な思惑の元、
肥大化する組織がその性質を変容させていき、
ややもすれば暴走し危険性を孕んでいく様子も描かれる。
宗教団体の暴走というと日本人にとってはアレルギーすら引き起こしかねないテーマであり、
本作においては主題には添えられていないが、
不吉なものを予感させる少し怖い作品ともなっている。
相変わらず著者の文章は読みやすく、
文庫本にして上下2巻の大作であるが時間を忘れて読書に没頭できる。
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