2016年11月2日水曜日

小説:アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』

〜ストーリー〜
人口の増加と環境破壊により、
全ての人類は階級により生活を制限される管理社会の中で、
宇宙開拓に発った人類の子孫であり優れた科学技術を持つ「宇宙人」や、
人の手から労働を奪ったロボットに対する鬱憤を募らせながら生きていた。
そんな中、ロボット工学の権威である宇宙人が何者かに殺害され、
地球人に容疑者がいるのではないかという嫌疑が掛けられる。
刑事であるベイリは、
見た目にはほとんど宇宙人と変わらないロボット・ダニールとコンビを組み捜査に当たるのだが…。

古典SF小説の代表者アイザック・アシモフの代表作のひとつ。
人類と宇宙人の一触即発の事態を引き起こしかねない殺人事件を担当する刑事と、
彼とコンビを組むほとんど人間にしか見えないロボットの活躍を描く。
人類と宇宙人の関係、
ロボットを毛嫌いする懐古主義者の暗躍、
あるいは、ロボット三原則に対する挑戦など、
スリリングな展開が続く一方、
主人公ベイリの的外れな推理やそれによる内省はどこか可笑しさも感じさせる。
本編に直接関係ないような描写も数多くあり、
若干の中だるみを感じなくもないが、
全体的にはサクサク読み進めることができる。
また、最後にダニールが起こす言動がとても印象的で、
アイザック・アシモフの他の作品を知っていると色々考えさせられる。

2016年10月12日水曜日

映画:『ジェイソン・ボーン』

〜ストーリー〜
CIAの監視の目をかいくぐり、
アテネに潜伏していたジェイソン・ボーンの元に、
かつての同僚ニッキーが現れる。
彼女はCIAのデータベースをハッキングし、
かつてボーンが白日の下に晒したトレッドストーン計画に関するさらなる真実と、
新たな計画アイアンハンドの情報を入手し、
それを阻止するようボーンに依頼する。
ニッキーの動きを突き止めた女性分析官リーは、
ふたりを確保するチームの指揮を執ることを志願するが、
長官デューイは並行してボーンに私怨を持つ凄腕の作戦員アセットを召還し、ボーンの暗殺を目論む。

「ボーンシリーズ」としては『ボーン・レガシー』以来4年ぶり、
また、ジェイソン・ボーンを主人公とした作品としては9年ぶりのシリーズ最新作。
主演はもちろんマット・デイモンが務め、
ニッキー役のジュリア・スタイルズも続投。
また、新たに、
トミー・リー・ジョーンズとヴァンサン・カッセル、
そして、『アンナ・カレリーナ』などの新鋭アリシア・ヴィキャンデルらが主要キャストに名を連ねる。

スピンオフでついたケチを払拭すべく、
主人公の名前を映画のタイトルとし、
観客や興行収入などあらゆる面の期待に応えようとする気概で制作されたは認めるが、
全体的な出来としては残念ながら旧3部作に及ばなかったと言わざるを得ない。

ボーンシリーズと言えば、
手持ちカメラによる臨場感に溢れた鍛え上げられた肉弾戦による格闘や、
その場にある道具を使って危機を切り抜けるというジャッキー・チェンが得意としそうな頭脳プレーが魅力のひとつ。
しかし、本作のアクションは、
まず半分以上がバイクか車によるチェイスに費やされている。
こりゃマイケル・ベイかワイルドスピードか?
そして、格闘のほとんどはヴァンサン・カッセル扮するアセットが担当しており、
しかもこれが誰であろうとどんな場所でも銃でスパスパ処理していくため、
まったく暗殺の要素がなくむしろ観ている側が後処理が心配になってしまうほどやることが荒い。
ヴァンサン・カッセルの見せ場を作るためでもあると思うが、
いくらなんでもやり過ぎである。

ストーリー面においても、
○トレッドストーンに関する新たな真実が後付け臭い。
○アイアンハンド計画も既に他の映画でさんざん使い古されたアイディアである。
○セキュリティゆるゆるガバガバのCIA。
など、粗が目立つ。

アクション映画単体として観た場合には及第点ではあるが、
ジェイソン・ボーンというキャラクターか、
マット・デイモンによほどの思い入れがなければ、
シリーズのファンには厳しい作品かも知れない。

2016年9月22日木曜日

小説:フィリップ・K・ディック『トータル・リコール』

〜ストーリー〜

『トータル・リコール』
妻から呆れられるほど火星に憧れを持つクウェールは、
脳内に偽の記憶を移植し一生の思い出を植え付けるというサービスを提供するリカル株式会社を訪れる。
自分が国家組織の一員で火星に秘密の任務に就いていたという記憶を植え付けようとしたクウェールだったが、
彼の脳内にはとある秘密が隠されていた…。

『マイノリティ・リポート』
未来予知能力を持つミュータント・プリコグの力で犯罪を予見し防止する犯罪予防局の長官アンダートン。
引退が間近に迫ったある日、
自分が見知らぬ男を殺害するとの予知がなされたアンダートンは、
未来の無実を証明するため、
公認候補であるウィットワーらの追跡を退けながら、
プリコグの真実に迫ろうと奔走する。


 サイバーパンクの開祖、フィリップ・K・ディックによる作品を集めた2012年に発行の電子書籍。
シュワちゃん主演で実写化された表題作『トータル・リコール』や、
同じくトム・クルーズ主演で映像化された『マイノリティ・リポート』の原作を含む、10編の短編集。
映画の『トータル・リコール』は変態監督ポール・バーホーベンの悪趣味全開のSFアクションに仕上がっていたが、
原作はとある男の記憶を巡るサスペンスのテイストが強い(間違っても目ん玉ビヨーンなんてシーンはない)。
いずれの作品も社会や世界、宇宙、あるいは、
テクノロジーが進んだ世界における人間の在り方を追究・描写しながら、
エンターテイメント性にも富み、
さらにあっと驚く結末が用意されている(多分そういう作品ばかり集めたのだと思うが…)。
1950〜70年代に発表された作品が収録されているが、
古臭さもまったく感じられない。
短編集ということもあってサクッと読めるため、
SF映画ファンならぜひ購読をオススメしたい。

2016年9月18日日曜日

映画:『スーサイド・スクワッド』

〜ストーリー〜
スーパーマンの死後、
メタヒューマンやスーパーヴィランに対抗する力を得るべく、
政府の高官アマンダ・ウォラーは、
スーパーヴィランによる特殊部隊タスク・フォースXの結成を提言する。
そのメンバー候補に選ばれたのは、
悪名高き犯罪者ジョーカーの恋人であるハーレイクイーンや、
百発百中の狙撃手デッドショットなど、
一癖も二癖もある悪人ばかりであった。
また、その中には、
アマンダがコントロール下に置いている魔女エンチャントレスの名も挙がっていたが、
彼女が憑依しているムーン博士とリック・フラッグ大佐との関係を巧みに利用し逃亡に成功。
復活した弟と共に人類を滅ぼすべく動き出す。
彼女らを目論見を阻止すべく、
タスク・フォースXがいよいよ派遣される。

DCコミックスの人気シリーズ『スーサイド・スクワッド』の実写映画作品。
『マン・オブ・スティール』を皮切りに今後公開が予定されているジャスティス・リーグシリーズのスピンオフ作品ながら、
前作『バットマンvsスーパーマン/ジャスティスの誕生』とこれからのシリーズ作品との橋渡し役を兼ねている。
様々な能力を持ったヴィランによるアクションが売りのひとつのはずなのだが、
味方で明らかに現実離れした力を持っているのがディアブロしかおらず、
しかも彼はとある理由で途中まで戦いに参加しないため、
しばらくはコスプレをした人たちによる他の映画とそれほど大差のないドンパチアクションが繰り広げられる。
また、ストーリーについても、
ハーレイクイーンを除くと家族や恋人との関係に難を持つ実に湿っぽいキャラが多く、
意外とテンションは低め。
各キャラクターの背景を丁寧に描いてストーリーに深みを与えよう、
というのは分からないではないが、
登場人物が多い分結局浅いエピソードになってしまっている。
これならいっそタランティーノかロバート・ロドリゲスにでも監督をやらせて、
個性のキツすぎる悪役が自分の命を守るために、
仕方なしに手を取り合って敵と戦うハイテンションな映画にしておいた方がよほど良かったのではないかと思う。
単品の映画でキャラクター紹介を終えているアベンジャーズと違って、
少々原作のことを知っていないと厳しい点もある。
ヒーロー側からはフラッシュとバットマンが登場。
また、エンドロール後には、
『ジャスティス・リーグ』に続く重要なエピソードを描いたおまけシーンと、
なぜだか妙にダサい『ワンダーウーマン』の予告編が流れる。

2016年9月15日木曜日

小説:折原一『101号室の女』

〜ストーリー〜
母と息子のふたりで経営する古びたラブホテルにひとりの女性客が来た。
母と女性客はお互いに不信感を抱き、
母は息子に女性客を追い出せと諭すが…。
表題作『101号室の女』を含む9編の短編集。

ミステリー作家・折原一が、
1990年代初頭に発表した短編ミステリー9編を収めた短編集。
多くが夫婦や親子を取り巻く事件をテーマとしており、
いずれの作品も著者お得意の叙述トリックとどんでん返しを堪能することができる。
表題作『101号室の女』は、
映画『サイコ』を題材としているが、
映画の内容を知っている人ほど意外な展開を楽しむことができるだろう。
短編なのでストーリーがスッキリまとまっており、
短い時間でミステリーの醍醐味を堪能できる点も良い。
何しろ著者の長編ときたら、
各章ごとにこちらを撹乱するかのようなクライマックスを用意し、
それらを終章できっちりと一纏めにしてしまうという、
よくもこんなオチを付けられるものだと感心してしまう一方で、
ストーリーの整理にものすごく頭を使う作品が多い。
その点では著者の作品の入門編として、
本作にハマれば長編にトライしてみるのはアリだと思う。

2016年9月13日火曜日

小説:小林泰三『セピア色の凄惨』

〜ストーリー〜
とある探偵事務所にひとりの女がやって来た。
わずか4枚の写真とそれにまつわる思い出だけを手掛かりに、
親友であるレイという女の行方を探して欲しいという。
依頼を受けた探偵は写真に写った人々への聞き込みを開始するが、
彼らが語るのはレイという女には関係のない奇想天外な話ばかりであった。

探偵と依頼人である女、そして、
依頼に関わる4人の人物が語るストーリーをまとめた小林泰三の短編集。
初恋の女に異常なこだわりを持つ男、
極度にめんどくさがりな女、
心配性が過ぎる女、
だんじりの先導役として死ぬことに強い憧れを持つ男など、
何かしらの極端なくせを持つ人物の、
屁理屈とグロテスクに満ちたストーリーが展開される。
良い意味での読後の不愉快さも相変わらずで、
小林泰三節を堪能することができる。
最後の逸話で一応レイの正体が明らかとなるが、
こちらは多少強引なオチの付け方でおまけ程度に捉えておけば良い。

2016年9月12日月曜日

小説:小林泰三『幸せスイッチ』

〜ストーリー〜

『怨霊』
メリーと名乗るストーカーに狙われた女は警察に通報するが、
そこにΣという探偵が現れ事態は思わぬ方向に進んでいく。

『勝ち組人生』
亡くなった叔母の財産を相続した女は、
幸福の尺度であるお金を増やし幸せを貯蓄することに喜びを覚えるが…。

『どっちが大事』
妻からの妻とスマホのどちらが大事かという質問に妻と答えた夫はスマホを破壊されてしまう。
それから妻の二択と要求はエスカレートしていき…。

『診断』
救急救命士の男がとある母子家庭の家を訪れた。
母親の屁理屈のせいで病院に連れて行くことが出来ぬままこどもの体調は見る見る悪化し…。

『幸せスイッチ』
両親を飛行機事故で亡くし財産を引き継いだ女は、とある男の出会いから人生の坂道を転がり落ちて行くことになる。
そんな時に幸せスイッチとそれを販売するNPOと出会い彼女の人生が変わっていくのだった。

『哲学的ゾンビもしくはある青年の物語』
突然自分を無視して同じ話を繰り返し始めた恋人。
友人が同じ症状に陥ったのを見た「僕」は、
3人で集まり再現実験を試みるのだが…。

小林泰三の短編集。
登場人物の屁理屈の応酬が得意技の著者の作品にあって、
本作は読んでいて腹立たしさを覚えるほどの「屁理屈祭」が全ストーリーにおいて展開される。
いずれも意外な展開に広がっていきあっと驚くオチがあるので読み応えはあるが読後にドッと疲れる。
一見短編同士に何ら関係性がないように見えるが、
最後の作品を除きなぜか竹内春子という人物が登場し、
最後の作品で一応のクロスを見せる。
また、初めの作品のΣは著者の他の短編にも登場する探偵で、
時空を超えた殺人事件など不思議な事件ばかり担当する変わった探偵。

2016年9月11日日曜日

映画:『バニーマン/鮮血のチェーンソー』

〜ストーリー〜
ドライブを楽しんでいた6人の若者は、
追い抜かしたトラックに執拗に追いかけられ、
やがて事故に遭遇してしまう。
助けを求め近くの森を彷徨う彼らの前に、
チェーンソーを持ったうさぎの着ぐるみを着た男が現れ、
彼らをひとりまたひとりと血祭りに上げていく。

6人の若者がうさぎの着ぐるみを着た男を始めとした狂人一家により次々と殺害されていく姿を描いたスプラッター映画。
『悪魔のいけにえ』のようなストーリーだが、
何から何まで自らを危機に追い込む行動をとる若者に、
何らの思想もなければ背景も分からない狂人一家、
さらにスプラッターシーンも肝心なところが全く映されないなど、
良いところが全く見つけられない作品。
B級映画ですらない、駄作。

2016年9月7日水曜日

映画:『ヴィクター・フランケンシュタイン』

〜ストーリー〜
優れた頭脳と人体に関する深い知識を持ちながら、
サーカスのピエロとして暮らす「せむし男」。
ある日、曲芸中に事故を起こした団員に対し、
的確な洞察を持って処置に当たった彼の元にひとりの男が現れる。
男の名はヴィクター・フランケンシュタイン。
ヴィクターはせむし男を助手に迎え、
彼がライフワークとする無からの生命の創造の研究を推し進めようとするが…。

古典ホラーの代表作フランケンシュタインを、
『ウォンテッド』『X-MEN』シリーズのジェームズ・マカヴォイと、
『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフを主演に迎え制作された作品。
主人公の名前と生命を創造するというプロットを拝借しただけの完全オリジナルストーリー。
キャラクターの描き方が浅い、
怪物は感情のないただのバケモノ、
ご都合主義に満ち行き当たりばったりのストーリー展開と、
良い所がまったくない。
また、原作にあった登場人物や怪物の抱える苦悩や悲哀といったものも一切感じられない。
見所はせむし男と呼ばれサーカスで働いていた時のダニエル・ラドクリフの演技くらい。
よく人気ホラー映画の続編を作るために、
イマイチな脚本を無理矢理アレンジして制作するということがあるが(例えばソウシリーズのように)、
ハナからそのつもりでフランケンシュタインの設定と主演のふたりを起用すれば売れるんじゃないかという浅はかな考えで作られたんじゃなかろうか。
制作費が回収できず日本でもビデオスルーされた理由がよく分かる。

2016年9月5日月曜日

映画:『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』

〜ストーリー〜
マジシャン集団「フォー・ホースメン」が大富豪アーサーの保険会社の欺瞞を暴き2年が経った。
行方をくらましていた彼らの元に秘密組織「アイ」から、
とある企業が生み出したあらゆる情報にアクセスできるチップの存在を明るみにせよとの指令が下る。
任務は順調に進みいよいよショーによる種明かしに入ったのもつかの間、
何者かの介入によりトリックは失敗。
ニューヨークにいたはずの彼らはいつの間にかマカオに移動していた。
そこには、1年前に死んだはずのエンジニア・ウォルターがおり、
彼らにチップを盗み出すように命じる。
命令に従うフリをしながらもウォルターを出し抜こうとするホースメンだったが、
ウォルターの「科学の力」の前にことごとく失敗、命の危険にさらされる。
その頃、アイとの連絡係であり、
FBIの立場を利用しながら彼らのサポートを続けてきたローズ捜査官の元に、
彼が逮捕したサディアスから連絡が入る。
サディアスは、ホースメンを助けるために自分を監獄から連れ出せという取引のためにローズを呼び出したのであった。
誰が味方で誰が敵なのか、
疑心暗鬼のままホースメンとローズら5人は新年を迎えようとするロンドンで最後のショーに挑む。

2013年公開の佳作エンターテイメント映画『グランド・イリュージョン』の続編。
ジェシー・アイゼンバーグ、マーク・ラファロ、モーガン・フリーマンら主要キャストはほとんどが続投し、
新たな敵役を「ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフが演じている。
前作はホースメンの存在自体が謎に包まれた集団という描かれ方をしており、
要所要所で大掛かりなマジックを披露することでその存在感を示していたが、
今作はマジックを利用して困難な任務を遂行していく様を描くシーンが中心となっており、
マジックを使えるエージェントによるスパイ映画の様相を呈している。
ホースメンとウォルター、ローズとサディアスの裏のかき合いもスパイ映画的。
前作から引き続きご都合主義によりポンポンことが進んでいくが、
今回は敵もご都合主義を駆使してくるので、
細かいことは気にせずに正義のマジシャンと悪の科学者の化かし合いを楽しめばオッケー。
テンポも相変わらず良過ぎるほどなので最後まで飽きも来ない。
また、物語に前作のストーリーが深く関わってくるため、復習は必須。
で、なければ、
なんで主人公たちがこんな目に遭っているのかすら分からぬまま、
ハイスピードな展開に取り残されることになってしまう。

2016年9月4日日曜日

映画:『X-MEN:アポカリプス』

〜ストーリー〜
古代エジプトで封印されたミュータントの始祖アポカリプス。
4千年の時を越え、
現世に復活した彼は文明の堕落を憂い新たな世界を構築することを決意。
マグニートーやストームらをスカウトし、
「黙示録の四騎士」を結成する。
蘇ったアポカリプスを倒すべく「恵まれし子らの学園」のミュータント達は戦いに挑むが、
彼の狡猾な罠により壊滅の危機を迎える。

『ウォンテッド』などのジェームズ・マカヴォイ主演のX-MEN3部作の最終章。
ヴィランに選ばれたのは原作でも圧倒的なパワーでX-MENを苦しめたアポカリプス。
旧3部作と比較するとストーリーやキャラクターの背景を丁寧に描いている新シリーズだが、
アポカリプスが新黙示録の四騎士を結成するまでのシーンが無駄に細かく描かれ序盤はかなり退屈。
中盤恵まれし子らの学園崩壊辺りからようやくストーリーが盛り上がり始めるが、
アポカリプス自体の強さが前作で世界を滅亡の危機に陥れたセンチネルはおろか、
能力は異なれど同じくらいの破壊力を持つマグニートーと比較してもそれほど大差がなく見えるため、
いまいちテンションが乗り切らない。

旧3部作、ウルヴァリンシリーズを含め、
一部を除いて肩透かしを喰らいがちのX-MENシリーズ。
そろそろスパイダーマン同様映画の版権をマーベルに戻して欲しいと考えるのは私だけ?

漫画:『アルティメッツ2』

〜ストーリー〜
アルティメッツ結成から1年。
その活動に疑問を抱きチームを脱退したソーの元に、
弟ロキが牢獄から脱獄したという知らせが入る。
時を同じくして、
国家機密とされていたはずのハルクの正体のリーク、
キャプテン・アメリカによるホークアイ一家殺害容疑など、
チームの中に徐々に軋轢が生まれ始め、
さらに新たに登場した敵の手によりアメリカ全土がその支配下に置かれる事態が発生する。

映画『アベンジャーズ』原作コミックの第2弾。
世界観・登場するヒーローの数ともに大幅に拡がりを見せ、ますますボリュームアップ。
最終決戦の様子は三つ折り×2で6ページ分見開きというポスター並の紙面で展開されるというおまけページ付き。
また、ロキやウルトロンの登場など、
前作に引き続き映画に引用された設定が多数存在している。
規模が拡大した分、
キャラクターもスポット参戦を含めれば何倍にも増え、
ストーリー展開のスピードもかなりアップしているため、
物語についていくのがかなり大変。
少なくとも前作の復習とX-MENに関するある程度の予備知識はあった方が良い。

2016年8月26日金曜日

漫画:『アルティメッツ』

〜ストーリー〜
増え続けるスーパーヴィランや異世界の敵との戦いに備え、
S.H.I.E.L.D.Sは超人によるチーム「アルティメッツ」を結成する。
暴走の危険を抱えるハルク、
いざこざが絶えないアントマン・ワスプら夫婦など、
様々な問題を抱えるアルティメッツであったが、
ある日、異星人チタウリによる地球侵略計画を察知する…。

2000年代初頭に制作された新たな設定によるアベンジャーズシリーズの第1弾コミック。
現代的な世界観や設定を取り入れた点がキモで、
映画のアベンジャーズは本作の設定を流用しているところが多い。
(オリジナルでは白人のニック・フューリーが黒人だったり、
X-MENからスカーレット・ウィッチやクイックシルバーが登場している点など)
ストーリーは非常に分かりやすい勧善懲悪もの。
フルカラーで描き込まれたグラフィックは大迫力で、
他の作品群に比べてもボリュームたっぷり。
映画のアベンジャーズシリーズファンならぜひ購読をオススメ。

2016年8月14日日曜日

映画:『恐怖の人体研究所』

〜ストーリー〜
アティカス研究所では、
超能力に関する研究が行われていた。
1976年のある日、
研究所にジュディスという女性がやって来る。
彼女の奇行と人智を超えた能力を持て余した所員らは政府に研究の継続を依頼、
様々な観点から彼女を研究するようになるが、
やがて彼らの身に命の危険が迫る。

政府が唯一公認したという悪魔憑き事件の真相を、
当時の資料や関係者へのインタビューを通じて明らかにしようとするフェイクドキュメンタリー映画。
邦題はB級映画丸出しの間抜けなタイトルになっているが、
中身は割とまともに仕上がっている。
最近のホラーにありがちなあえて恐怖のタイミングをズラして観客をビビらせるという方法を取らず、
ロクでもないことが起こるだろうというタイミングにきちっとロクでもないことが起きる構成に好感が持てる。
ストーリーの細かい所を突っ込み出すとキリはないのだが、
そこをカバーするくらいに、次に何が起きるのという緊張感を継続出来るストーリー。

2016年8月13日土曜日

映画:『サバイバル・オブ・ザ・デッド』

〜ストーリー〜
死者が蘇るようになり3週間後。
元州兵のサージら一行は、
ゾンビの現れない安全な島があるという情報を得る。
しかし、その島では、
ゾンビは全て再び殺すべきというオフリン派と、
ゾンビとの共存の道を探るために生かしておくべきだというマルドゥーン派に分裂しており、
サージらはその対立に否応なく巻き込まれることになる。

ジョージ・A・ロメロが2009年にメガホンを取り制作したゾンビ映画。
本作のゾンビは「生前の行動を繰り返す」という設定を持っており、
そんな知性があるなら飼いならすことができるのでは?と考える一派と、
とにかく危険を排除しようとする一派との対立がメインに描かれる。 
ただ、西部劇を参考にしたというこの対立だが、
限られた人数のおっさん同士が話し合うこともほとんどなく銃を向け合うというものでどこかショボい。
また、ゾンビの行動についてもあっさりとしか描かれておらず、
全体的に何がやりたかったのかよく分からない超薄味な映画になってしまっている。
グロいシーンもほとんどないし。

2016年8月11日木曜日

映画:『コングレス未来学会議』

〜ストーリー〜
落ち目のハリウッド女優・ロビンは、
契約している映画配給会社ミラマウントからとあるオファーを受ける。
それは、彼女の身体・感情など全てをスキャンしCGキャラクター「ロビン」を作成、
今後は「ロビン」を映画に出演させるというものだった。
初めはオファーを拒否したロビンであったが、
難病を抱える息子の症状は日に日に悪化しており、
彼の看病と治療に専念するため契約することを決意する。
20年後、科学技術はより進歩し、
ミラマウントは現実と虚構の境目を飛び越える究極のエンターテイメントを与える薬品を製造した。
その発表会に呼ばれたロビンは、
想像を絶する世界に足を踏み入れることになる。

本人役のロビン・ライト主演、
ハーヴェイ・カイテル共演のSF作品。
前半は、少し変わったSF設定を持つヒューマンドラマなのかな?と思って観ていると、
20年後の世界からはほぼアニメーションでストーリーが展開される。
これは、現実をアニメと認識させるミラマウントの薬品によるものなのだが、
ここからは非現実的な場面が連続し、
展開も二転三転していくため付いていくのが大変になる。
家族愛を深く描くでもなし、
行き過ぎた科学技術に警鐘を鳴らすでもなし、
この作品で何を伝えたかったのかもよく分からない。
サンなんたら映画祭で絶賛なんて作品は奇をてらったものばっかで毎度こんなもんかと思う。

映画:『砂上の法廷』

〜ストーリー〜
とある大物弁護士が殺害され、彼の息子が容疑者として逮捕された。
家族と付き合いのあった弁護士ラムゼイは弁護人を引き受け裁判に挑むが、
何かを隠そうとする証人や何故か黙秘を貫く息子により、弁護は難航する。

キアヌ・リーブス、レニー・セルヴィガー共演の法廷サスペンス。
何の工夫も変哲も無いふっつーの法廷サスペンス。
警察や弁護士が裏で裁判の裏で事件の真相を掴んで〜…というシーンがほとんどないため、
ラストにちょっとしたどんでん返しはあるものの、
非常に唐突な印象を受ける。
ストーリーはとにかく淡々と進み、
BGMすらほとんどないため、
疲れた時の睡眠導入剤にはうってつけかも。

2016年8月7日日曜日

映画:『オートマタ』

〜ストーリー〜
2044年、太陽嵐の増加による環境の悪化から、
世界の人口は0.3%にまで落ち込んだ。
荒廃した都市にあって、
急速に数を減らした人類の労働力に取って代わったのは、
ROC社が製造した人工知能ロボット「オートマタ」であった。
ある日、その危険性からROC社のみに認められたはずの改造を施された個体が発見され、
調査員のジャックは事件の真相を探るように会社から命じられる。

アントニオ・バンデラス主演のSFスリラー。
ロボットが自我に目覚めたら?というSF定番の設定を持つ作品。
前半の捜査パートはそれなりの緊張感を持って鑑賞できるのだが、
後半は思いついたシーンを繋ぎ合わせただけじゃないかと思うほど理解不能な展開が続き幕引きとなる。
よく似た設定でも『アイ,ロボット』の方がよほどエンターテイメント性に溢れていて楽しい。

映画:『SPY』

〜ストーリー〜
CIAのエージェントであるファインは、
武器商人レイナを追う任務の最中殺害されてしまう。
彼のサポート役で元教師、40歳独身、おしゃべりで”ぽっちゃり”体型のスーザンは、
彼の仇を討つため現場のエージェントに志願する。
ターゲットを追ってパリへ向かったスーザンの前に、
彼女の起用に反対しCIAを辞めたフォードが現れ…。

『ブライズメイズ 史上最悪のウエディングプラン』で絶賛されたメリッサ・マッカーシーと、
ジュード・ロウ、ジェイソン・ステイサム主演のアクションコメディ映画。
日本では劇場未公開だが、
『コードネームU.N.C.L.E』を公開するくらいならなぜこちらを公開しなかったのかと思うほどの掘り出し物の映画。
全体的にコメディ要素が強く、
やや下ネタが多いものの、
明るいおデブと個性的な登場人物たちの掛け合いは大変楽しい。
ストーリー展開のテンポが良く、
アクションシーンもスパイスとなっており、
中だるみなく最後まで面白おかしく鑑賞できる。
ただし、本作のジェイソン・ステイサムは完全にお笑い役なので、
彼のアクションに期待するのは禁物。
むしろ、制作サイドの苦労が偲ばれる、
スーザンのアクロバティックな動きに注目。

2016年8月5日金曜日

映画:『シン・ゴジラ』

※ネタバレ注意。

〜ストーリー〜
東京湾に突如巨大生物が現れた。
ゴジラと名付けられたその生物は、
驚異的なスピードで進化し東京を瞬く間に火の海と化した。
アメリカを中心とした国連軍による核攻撃のカウントダウンが迫る中、
若き内閣副官房長官・矢口らを中心としたチームは、
ゴジラの脅威のみならず日本とその首都である東京、国民を救うべく、
最終作戦ヤシオリ作戦を実行に移す。

庵野秀明と樋口真嗣がタッグを組み製作された、
12年ぶりの純和製ゴジラ映画。

現代の日本にゴジラが出現した時にどのような事態が想定されるのかが政府の視点を中心に、
一切の無駄を省いたものすごいスピード感で展開されていく。
ゴジラが登場するシーンは意外と少なく、
政府の会議や自衛隊の作戦会議がストーリーの多くを占めるにも関わらず、
中弛みもなく最後まで鑑賞できるのはテンポの良さに負うところが非常に大きい。
また、全身全霊をかけてゴジラに立ち向かう関係者の姿は非常に胸熱。
ちなみに、一部の左寄りな人が批判している、
政府や自衛隊のプロパガンダだ!とか、
憲法9条を馬鹿にした映画だ!などという観点は、
普通に鑑賞する限り微塵も感じられないのでご安心を。
登場する兵器はほぼ全て自衛隊装備準拠らしく、
メカゴジラやモゲラはおろか、
ゴジラファンにはお馴染みの轟天号やスーパーX、オキシジェンデストロイヤーのような超兵器も一切登場しない。
普通の兵器じゃだめだ→もうちょい強い兵器なら多少効いたぞ→じゃあこの作戦でゴジラをやっつけよう!という組み立てに無理がない。
かつて量産された「プロレスゴジラ」を好きな人には物足りないかも知れないが、
基本的には「現実(ニッポン)vs虚構(ゴジラ)」という映画のキャッチコピー通り、
骨太なゴジラを楽しめると思う。

さて、肝心の主役ゴジラだが、
色々なかたちで期待を裏切られる。
まず、初回出現時は無茶苦茶しょぼい。
昭和のウルトラ怪獣と見紛うような着ぐるみ感全開の顔立ちをしている。
おまけに陸上に完全に適応できていない足の生えた巨大肺魚という扱いなので、
進路を豪勢に破壊しながらもモタモタ進軍する様はどこかコミカル。
そして、一度海に帰った後、
ようやく従来のフォルムとこれまでで最も凶悪な表情をしたいつものゴジラが再び姿を現す。
ところが、ここでもう一つ違和感を感じる。
圧倒的なパワーを持ちながら自衛隊の攻撃により多少ピンチに陥ったにも関わらず、必殺の放射線を吐かない。
あー、そこは現実に即して飛び道具を使わない生物としてのゴジラを打ち出しているのか…。
と思った矢先、
都心に到達したゴジラはいきなり口から紫色の放射線を放ったかと思うと、
さらに背中からも幾本ものレーザービームをぶっ放し、あっという間に東京を火の海に。
こんなのゴジラありか!?と度肝を抜かされるシーンなのだが、
それまでのストーリーや設定の積み上げがあるため、
ギリギリ許容範囲内、
ゴジラのパワーを再認識させられることになる。
この夜空に走る放射線と燃え盛る東京、そして、そこに佇むゴジラという中盤のこのシーンはまさに圧巻の一言、劇中屈指の名場面となっている。
(エヴァンゲリオンを観たことのある人なら、
ここでラミエル戦を思い出すこと必至)
ちなみに、最終戦では尻尾の先からもレーザービームが…。

総じて満足度は高い。
強いて難点を挙げると、
まったく子ども向きではないので、
夏休みに家族で映画を楽しみたいという方はドリーでもどうぞ。

2016年7月23日土曜日

映画:『オープン・グレイヴ 感染』

〜ストーリー〜
目覚めた男の周りには死体の山があった。
記憶喪失に陥っていた彼が森の中をさまよっていると、
同じく記憶をなくした者同士が集まる家があった。
彼らはなぜそこに集められたのか?
信用できる人物は誰なのか疑心暗鬼になりながらも、
記憶を取り戻すために家の外に足を踏み出した彼らが見たのは、
森のあちこちに設置された人間の遺体と、
雄叫びを上げながら彼らに襲いかかる狂人たちの姿だった。

『第9地区』『マレフィセント』のシャールト・コプリー主演のホラー作品。
ゾンビ映画の覇権を奪いつつある"感染者もの映画"なのだが、
そこに登場人物全員が記憶喪失という設定が入り、
記憶を取り戻すために主人公たちが謎に満ちた森を奔走するというサスペンス的な要素もある。
約1時間40分の上映時間の内ラスト10分になるまで、
断片的な情報と時折感染者が現れるだけで何の盛り上がりもなく、
あとは登場人物たちがいがみ合うだけの時間が続く。
誰一人まともな人間がいないので何の感情移入もできず非常に退屈。
そして、終了10分前に至る頃、主人公らは突然記憶を取り戻し、
たった数行のセリフだけで事件の真相をすべて語って映画は完結する。
最初と感染者が出るシーンと最後だけ観れば十分の駄作。

2016年7月20日水曜日

映画:『キック・アス』

〜ストーリー〜
冴えない学生デイヴはスーパーヒーローに憧れ、
ネットで買った安物のスーツを身に付けキック・アスと名乗り夜な夜な街に繰り出すようになった。
ある日、彼の動画がネットに公開され瞬く間に人気者となった彼だったが、
ひょんな事から残酷なマフィアであるフランク・ダミーコに命を狙われる事となる。
ダミーコに恨みを持つマクレイディ父娘は彼の人気に便乗し、
ビッグ・ダディ、ヒット・ガールというヒーローに扮しダミーコとの戦いに身を投じる。

クロエ・モレッツが下ネタを吐きながらド派手な殺戮を繰り出す姿が、
世界のドMなロリコンのみならず老若男女のハートを虜にしたアメコミ原作のアクション映画。
ヒット・ガールがこの映画の全てであり、
予告や作品紹介を見て面白そうと感じた人なら確実に楽しめるし、
そうでないなら決して鑑賞はオススメしない。
平凡な少年がある日突然〜というストーリーはありきたりだし、
やや残酷な無双系アクションも『リベリオン』『ウォンテッド』などでさんざんやり尽くされているもの。
クロエ・モレッツのヒット・ガールは確かに可愛らしくキャラが立ってもいるが、
良くも悪くもその存在だけで引っ張っている作品。
本作の主人公キック・アスを演じたアーロン・ジョンソンが、
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のクイックシルバーだったことが個人的に一番の衝撃。

2016年7月18日月曜日

映画:『ブラック・スキャンダル』

〜ストーリー〜
FBI捜査官のコノリーは、
生まれ育ったボストンに勢力を伸ばしつつあるイタリア系マフィア殲滅のため、
地元サウシーのギャングの首領であり幼馴染であるバルジャーに、
情報提供の代わりに彼の犯罪を見逃すという協定を持ち掛ける。
バルジャーの弟で国会議員でもあるビリーは、
そんなふたりの様子を見て見ぬ振りをしつつ、
ふたりとはまた異なる道を進んでゆくのだが…。

ジョニー・デップ、ベネディクト・カンバーバッチ主演の、
実在のマフィアとFBIとの汚職事件を題材にしたクライムサスペンス。
宣伝ではマフィア・FBI・国会議員が手を組んだ汚職スキャンダルを映画化!などと銘打ち、
ド派手な映画である印象を与えていたが、とんでもない。
アホなFBI捜査官がマフィアに良いように扱われる様を描いただけのノンフィクション映画であり、
全体的に暗くてじめーっとした空気が漂う退屈な映画だった。
単なるチンピラに近かったギャングがいかにしてのし上がっていったのかという実録映画的な要素もあるが、
ほとんどナレーションや第三者のセリフだけで物事が進んでいくので、
バルジャーへの感情移入もしにくい。
家族関係もあっさりなので、
もはやベネディクト・カンバーバッチ演じる兄の存在すら必要だったのか疑問に思う。
ジョニー・デップはさすがの怪演というところだが、
同じハゲキャラなら『ラスベガスをぶっ飛ばせ』の方がキレッキレ。

漫画:『シークレット・インベーション』

〜ストーリー〜
日本で起きた忍者集団ハンドの蜂起。
その首謀者であったエレクトラは、
実はスクラル星人が変身した姿であった。
これをきっかけに、ヒーローの中に変身したスクラル星人がいることが発覚。
さらに、時を同じくしてスクラル星人の侵攻が始まった。
誰が本当の味方で誰が敵なのか、
疑心暗鬼の中、ヒーロー達はスクラル星人との戦いに挑む。

ヒーロー同士の戦いを描いた『シビル・ウォー』と、
その直後のキャプテン・アメリカ新シリーズに続く、
一大クロスオーバー作品。
地球侵略を狙うスクラル星人がヒーローとして人々の間に紛れ込み、
ヒーローに関わるあらゆる事件の裏で手を引いていたことが発覚するという衝撃の作品。
さらに、本作のラストは新シリーズ『ダークレイン』(これまでのヒーローに代わり本作で活躍したグリーンゴブリンことノーマン・オズボーンらが国家や地球の防衛を任されるようになる作品群)へと繋がっていく。
本作に至るまでのストーリーは原作を読むしかないので、
英語が得意でない限り事件の背景を理解するには解説に頼らざるを得ないところが難点だが、
そこは飲み込んでマーベルヒーロー達の活躍と細かく描き込まれた美しいグラフィックを楽しめればそれで良し。

2016年7月9日土曜日

映画:『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』

※ややネタバレ注意

〜ストーリー〜
人類がエイリアンの襲撃を退けた「1996年の戦い」から20年。
外宇宙の敵の存在により人類は手を取り合い平和の時代を迎えるとともに、
エイリアンのテクノロジーにより科学技術を発展させ、来るべき戦いに備えていた。
しかし、墜落したエイリアンの宇宙船が密かに発信していたSOS信号により、
20年前よりもはるかに強大なパワーを持ったマザーシップが襲来。
再び地球を滅亡の危機に陥れる。
このままなす術なく滅びの時を迎えるかと思われた人類であったが、
そこに思いも寄らぬ味方が現れる…。

『ユニバーサル・ソルジャー』やあの悪名高き『GODZILLA』のローランド・エメリッヒが、
ウィル・スミスや『ジュラシック・パーク』『ザ・フライ』のジェフ・ゴールドブラムを迎え製作した『インデペンデンス・デイ』の20年越しの続編。
ジェフ・ゴールドブラムや大統領役のビル・プルマンらは続投し、
降板したウィル・スミスの代わりに『マイティ・ソー』シリーズのクリス・ヘムズワースの弟、リアム・ヘムズワースや、
脇役会一の名優ウィリアム・フィクナーらが主役を固める。

元々その御都合主義的な展開や、
アメリカ至上主義的なストーリーを批判されながらも、
1996年当時最高峰のSF技術となんだかんだで白熱するシーン満載のストーリーで大ヒットを飛ばした作品であったが、
今作は枚挙を挙げれば暇がないほど設定からストーリーから何もかもが酷過ぎる。
一例を挙げると、

○散々科学技術を発展させたのに一番苦戦させられたはずのバリア技術を全く研究していない馬鹿な人類。

○単なる赤外線でUFOの内部を事細かに観察できたくせに、とある理由による地球滅亡までのカウントダウンをたまたまUFOの近くにいたトレジャーハンターに任せるアホな人類。
↑おまけに何をどう計算したらそうなるのか、ずっと計測していたはずなのに土壇場になって5時間も計算をミスっていたというアホなトレジャーハンター。
↑それをサクッと受け入れるちきゅうぼうえいぐんの皆さん。

○重力を操り大都市を一瞬で壊滅させた力を地球に着陸する時にだけ使い、後はドンパチを繰り広げるだけの愚かなエイリアン。

○死ねば撤退を余儀なくされるほど重要な役割を持つ女王の危機をほったらかしにし、人間とドンパチ続けるやはり愚かな雑魚エイリアン。
↑女王が死んだところであと2分頑張れば地球を滅亡させられていたのに。
こんなものは序の口で、
とにかく思いついた展開を繋ぎ合わせただけとしか思えない酷いストーリー展開が延々続く。

アクションにしてもこの映画レベルのSFであれば、もはや幾らでも存在しており、
アクションシーンすら見せ場でなくなってしまった。
ウィル・スミスのように、
画面に映っているだけで映画を牽引していく力を持った大スター不在も痛い。
ただし、アンジェラベイビーだけはめちゃくちゃ可愛い。

前作は個人的には大好きであれやこれやの批判にも擁護してきただけに、
今作の出来は非常に残念。
実はさらなる続編を匂わせる終幕なのだが、
これならいらない。

2016年6月12日日曜日

映画:『マネーモンスター』

〜ストーリー〜
人気投資番組「マネーモンスター」の生放送に銃と爆弾を持った男が押し入った。
犯人であるカイルは、
司会者リーが「銀行に貯蓄するよりも安全」と投資を勧めたアイビス社に全財産の6万ドルを投資したが、
その夜、彼の財産は、同社の投資システムの原因不明のバグにより、
8億ドルもの株価と共に一晩で消え去ってしまったのだった。
アイビスのCEOであるウォルトに対し、
生放送での謝罪と真相解明を求めるカイル。
リーは彼の元妻であり番組のディレクターであるパティと共に事態の収拾に乗り出すが…。

ジョディ・フォスター監督、
ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ2大スター主演のリアルタイムサスペンス。
ハリウッド映画ファン垂涎の製作・キャスト陣による作品だが、
名実共に備わったエンターテイメント作品に仕上がっている。
主人公、犯人、警察、大企業それぞれの思惑が複雑に絡み合うひたすら緊張感の漂う4すくみの状況ながら、
野球のように攻守がトントンと変わるためテンポが良くストーリーも分かりやすい。
株や投資に対する知識もほぼ不要。

また、現代社会に対する皮肉たっぷりな風刺が描かれているのも面白い点。
そもそも本作の犯人なんてのは、
(劇中の)マスコミがいい加減に垂れ流した情報に基づくマネーゲームに安易に乗っかり、
それに失敗したことを逆恨みした市井の人間である。
そして、そんな人間がテレビの生放送でとんでもない騒ぎを引き起こすのだが、
それを観ている人々にとっては現実味のない他人事となっており、
事件をネタにするバラエティ番組まで登場する。
おまけにそんな現実感も緊張感のない人々は、
とあるきっかけで爆弾を抱えたままスタジオを飛び出した司会者と犯人を取り囲み、
自分がエンターテイメントの中に入り込んだかの如く司会者の真似をして踊り始めたり、
SNSに写真を掲載しようと写メまで撮り始める始末。
そんな現代社会に生きる人間に対し冷めた目線を投げかけているように思われるのが大変興味深かった。
劇中に2度ほどロシアや中国を名指しして悪者扱いするシーンがあり、
それはさすがにやり過ぎだろうとは思ったのだが、
これはこれで現代アメリカ人のリアルな心象を誇張して描いているものとも考えられる。

間違ってはならないのは、
あくまでエンターテイメント作品であり、
株や投資の世界を主眼に置いた社会派作品ではないという点。
ここを間違えると映画に対する評価はだだ下がりするだろうが、
それはそもそものスタンスが間違っている。
納得できない人は本作はすっ飛ばして『マネーショート』をどうぞ。

あと、なんのかんの言っても、
やっぱりスターの存在感は偉大。
作品自体の面白さはさることながら、
やっぱり大スターの存在感とその安定性が作品の質を高めているのは違えようのないことのように思われる。

2016年6月7日火曜日

漫画:『アメイジング・スパイダーマン:シビル・ウォー』

〜ストーリー〜
トニー・スターク=アイアンマンの下で働いていたピーター・パーカー=スパイダーマンは、
シビル・ウォーの勃発を機にスタークの指示のもとかつての仲間との戦いを余儀なくされていた。
スタークのやり方に疑問を持ったピーターは、
MJやメイおばさんと話し合ったうえ、
ヒーロー登録法案に反対するスティーブ・ロジャース=キャプテン・アメリカのサイドにつくことを決意する。
しかし、それは愛する家族を危険に晒す選択であった。

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ3』原作コミック派生作品で、
人気キャラクター・スパイダーマンを主人公とした作品。
映画と違い原作本編ストーリーにおいて非常に重要な役割を果たすキャラクターであるため、
その背景を描く本作は、
原作を読むなら物語を補完し世界観を深掘りする意味で併せて読みたい一作。
『ロード・トゥ・シビル・ウォー』直後からストーリーが始まるため、こちらもセットでどうぞ。

2016年6月4日土曜日

映画:『デッドプール』

〜ストーリー〜
元傭兵のウェイドは全身を癌に蝕まれ余命宣告を受ける。
癌を治癒しさらに特殊な力を与えるという男の誘いに乗り、
恋人ヴァネッサを残し謎の組織の元に赴いた彼であったが、
そこでは人間をミュータントに変えるための非人道的な人体実験が行われていた。
火傷のように爛れた皮膚と引き換えに、
優れた身体能力と超再生能力ヒーリング・ファクターを得たウェイドは、
咄嗟の機転を利かし組織から脱出することに成功する。
復讐に燃えるウェイドはデッドプールと名乗り、
組織のリーダー・フランシスへの復讐を誓う。

マーベルコミックのヒーローのひとり、デッドプールの実写映画。
ウルヴァリンと同じヒーリング・ファクターを持ち、
お喋り、下品、いい加減というおよそヒーローらしくない性格をしたキャラクターだが、
一番の特徴は「第四の壁」を乗り越える能力、
つまり、自分が物語の登場人物であることを理解しているという点。
初出はX-MENのヴィランとしての登場だが、
上記の性格ゆえ、ヒーローの味方になったり敵になったり、
自分の都合に合わせてその立ち位置をコロコロと変える。

上記のキャラクターを理解しているか、
おバカ映画と割り切るかしなければ、
頭のおかしなマスク男が主人公で、
お下劣ネタ満載のちょっと派手なアクション映画くらいの認識しか持たれない可能性がある。
これに拍車をかけるのがメタネタの数々。
主演のライアン・レイノルズはかつて『X-MEN ZERO』でもデッドプールを演じているが、
あまりのキャラクター破壊に原作ファンから顰蹙を買ったことがある。
そんな過去を揶揄するかのようなネタがあったと思ったら、
彼が主演したDCコミックの『グリーン・ランタン』までネタにしてしまっている。
パンフレット読むまでそんなこと忘れてたよ…。

マーベル映画ではお馴染みのエンドロール後のおまけシーンは健在。
コミカルなシーンに仕上がっているので最後まで観て欲しい。
続編の存在を匂わせ、
デッドプールと縁の深いX-MENのとある一員の名前が出てくる。
のだが、X-MENの原作かアニメでも見てない限り誰も知らないであろうキャラなので盛り上がりには欠けるかも。

総じて、
お気楽アクションムービーと割り切るか、
マーベルコミックの原作に多少なりとも慣れ親しんでいる人なら楽しめるであろう作品。