2014年9月30日火曜日

映画:『CARGO カーゴ』

〜ストーリー〜
2267年、地球の環境は人が住めないほどに荒廃し、
人々は自然豊かな星レアへの移住を目指していた。
医師であるラウラは移住費用を稼ぐために、
貨物船の勤務医の任務に就く。
コールドスリープから目覚めた彼女は、
自分以外誰もいないはずの船内に人の気配を感じる。

スイス製SF作品。
とにかくテンポが悪くて非常に退屈。
貨物船や船内の造詣はよく作り込まれているが、
それを観てもらいたかったのか、
意味もなく主人公が船内を歩き彷徨うシーンが多く、
これが本作の冗長さに拍車をかけている。
事件の意外な真相を含めプロット自体は悪くなく惜しい作品。

映画:『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』

〜ストーリー〜
3基のヘリキャリアーにより、
世界や国家の敵に先制攻撃を加えようとする『インサイト計画』に不審を感じたロジャース(=キャプテン・アメリカ)やフューリー、ブラック・ウィドゥらは、
機械の腕を持つ謎の男や同僚であるはずのS.H.I.E.L.D.から攻撃を受ける。
事件の真相を探る内に、
かつてロジャースが壊滅させたはずのヒドラの影がその背後にあることを3人は知る。

キャプテン・アメリカシリーズの第2弾にして、
アベンジャーズの続編でもある本作。
登場人物紹介とエピソードの切り貼りに終始した1作目に比べると、
それがなくなっただけですっきりとしたストーリーとなり、
ど迫力のアクションシーン満載の作品となった。
ただし、完全に楽しむには1作目の復習が必要。
原作でのキーキャラクターのひとりであるバッキーの登場や、
ヒドラの残党、ツインズなど、次作へのネタ振りも万全。

2014年8月31日日曜日

映画:『LUCY』

〜ストーリー〜
マフィアの闇取引に巻き込まれ、
麻薬の運び屋に仕立てられたルーシー。
とあるアクシデントから麻薬を摂取してしまった彼女の脳は急速に進化し、
自らの身体のみならず、他人の身体、物質、空間をもコントロールする能力を身につける。

リュック・ベッソン監督がによるSFアクション作品。
主演にスカーレット・ヨハンソン、モーガン・フリーマン。
最初から最後までほころびだらけのストーリーで、新鮮味も感じられない。
アクションも期待したほどではない。
「こんな事になったら面白いんじゃね?」というノリで作られたとしか思えない。
設定自体がアメコミ的なものなので、
いっそ本作でいう30%くらいの能力に抑えたマトリックス的なアクション映画とし、
その中で薬の効用が切れていくことによる時限性のスリルや、
失われていく人間性と身につけた能力との葛藤の描くべきだった。

2014年8月18日月曜日

映画:『アナと雪の女王』

〜ストーリー〜
アレンデール国の王女・エルサは、
氷を自由に操る能力を持っていた。
ある日、自分の能力で妹アナを命の危険にさらしてしまった事から、
エルサは自室に閉じこもり、
能力を制御できる日が来る日を待つこととなった。
両親が死んでしまい数年後、
王位の継承式でエルサは再び能力を暴走させてしまう。
国がどんどん雪と氷に閉ざされていく中、
アナは山岳地帯に姿をくらませたエルサを追う。

主題歌「Let It Go」と共に世界中で大ヒットを飛ばしたディズニーのCGアニメーション映画。
雪と氷の表現は素晴らしいし、
「Let It Go」を始めとした楽曲もキャッチーで耳触りが良いものが多い。
この辺りはさすがディズニーと思う一方、
ストーリーは甚だ凡庸で特筆すべき点はない。
雪だるまが夏に憧れるという退屈なミュージカルに5分を割くくらいなら、
やけにアッサリとした序盤の”事件”から両親の死を経ての王位継承式までを深く描くことで、
ストーリーやアナとエルサの姉妹愛しっかりとした背景を持たせるべきだった。
本作を凡庸・またはつまらないと評する声に対して、
原語である英語でストーリーを理解すべきという指摘もあるが、
例えばアラジンにしろ美女と野獣にしろ、
元の言葉の意味が分からなくても素直に楽しく満足を覚えられる作品は山ほどある。
本作のヒットには、
映像と音楽、そして、マーケティングの効果が寄与していることは、
違えようの事実であると思われる。

2014年8月10日日曜日

映画:『ファインティング・タイガー』

〜ストーリー〜
太極拳の優れた使い手であるタイガーは、
彼が修行する寺院を守るために大金が必要となる。
そこに現れた警備会社の社長ドナカは、
彼に闇の格闘大会への参加を呼びかける。

キアヌ・リーブスの初監督・主演作品。
スタントマン・俳優として活躍のタイガー・チェンと、
我らがカレン・モク姉様を主演に迎え制作された、
太極拳カンフームービー。
キアヌ・リーブスも久々にキレの良い肉体アクションを見せてくれる。
ストーリー自体は可も不可もなく、
ひとりの青年の栄光と挫折、そこからの復活を淡々と描いている。
ただ、たったこれだけのストーリーなら、
アクション満載のB級映画にしちゃった方が満足できたのではないかという気がする。
良いところも悪いところもなく感想に困る映画。

2014年7月21日月曜日

映画:『TRICK 劇場版 ラストステージ』

〜ストーリー〜
レアメタルの採掘を邪魔する呪術師の正体を暴いて欲しいとの依頼を受けた上田は、
山田を連れて赤道スンガイ共和国へ向かう。
だが、ジャングルの奥で呪術師によるものと思われる連続殺人事件が発生。
さらに、呪術師の考えを知った山田はとある決断を下さざるを得なくなる。

トリックシリーズの完結編。
「ドラマは良いけど映画はダメ」な堤幸彦監督なので、
どれだけグダグダになるんだろうと思って鑑賞したが、
とんでもない!
シリーズ独特の雰囲気やノリは残しつつ(もちろん、小ネタだらけ)、
まさに14年間を総括するような「感動できるトリック」に仕上がっている。
やればできるじゃん!
唯一頂けないがのはSPECのメタネタがちょいちょいあるところ。

2014年7月20日日曜日

映画:『REC/レック2』

〜ストーリー〜
とあるアパートで起きた謎の集団感染事件。
事態の沈静化のために、
武装した警官隊と医師がアパートに突入する。
だが、想像を絶する事態と医師の行動に、
警官たちは不信感を募らせていく。
時を同じくして、彼らの元にたまたまアパートに迷い込んでしまった子どもたち、
そして、闇の中に消えたと思われたアンジェラが集い始めた。

スペイン産POV×ゾンビ映画の2作目。
前作の直後から物語は始まり、
今作では感染源が明らかにされる。
映画のテイストそのものは前作と変わりなく可もなく不可もなしといったところだが、
主役のひとりである医師の行動がとにかく観ていて腹立たしいうえに、
行動すればするほどストーリーに矛盾を提供していく。
オチありきでストーリーを作っていったのが丸分かり。
そのオチなのだが、2/3くらいのところで大ヒントが登場するため、
エンディングを迎えても何の驚きもない。
POVということにこだわらないのであれば、
『ドーン・オブ・ザ・デッド』や『ワールド・ウォーZ 』でみ観ている方がよっぽどスリリングである。

2014年7月19日土曜日

映画:『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世記』

〜ストーリー〜
母の墓参りに来たバーバラは、
突如ゾンビの襲撃を受け近くの民家に逃げ込む。
そこには数人の先客がおり、
防衛手段と脱出方法について対立してしまう。
だが、その間にもゾンビはどんどん群れをなして近付いてきており・・・。

ジョージ・A・ロメロがその後のゾンビ像を決定づけた『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を、
本人が脚本を担当、数多くのゾンビのメイクアップのみならずスタントまでこなしてしまうトム・サヴィーニがリメイク・監督した1990年の作品。
オリジナルと比較すると、
ヒロインが現代らしい強い女性に変わっている点と、
元々それほどでもなかったグロシーンがほぼ皆無になっている点が異なるくらいで、
(ただし、オリジナルは白黒なので別種の怖さがある)
ストーリーはほぼ踏襲されている。
極限状況における人間性の脆さを観る者の心に突き刺し、
最後の「人間も彼ら(=ゾンビ)も変わらない」というセリフで止めを刺す。
また、他のゾンビ映画を観ている人なら、
この映画がいかに以降の作品に影響をおよぼしているかが分かるはず。
本来ならオリジナル版をオススメしたいところだが、
ほぼ同じストーリー構成である点を鑑み、
グロシーンの少なさとカラー作品という見やすさから本作をオススメします。

映画:『ウィッカーマン』

〜ストーリー〜
警官であるメイラスの元に、
8年前に失踪した婚約者ウィローから、
行方不明となった娘ローワンを探して欲しいという手紙が届く。
彼女の生まれ故郷である島に向かったメイラスは、
その閉鎖的で独特な島の風習とその中で暮らす人々に翻弄されながらも、
ローワンの痕跡を少しづつ発見していくが・・・。

ニコラス・ケイジ主演のスリラー。
約1時間半の上映時間中、
1時間20分までほぼ動きがなく、
ただただニコラス・ケイジが島を走り回り、
たまに痛い目に遭うのを見ているだけという退屈な映画。
オチも見え見え。というか、タイトルが悪い。
一番の見所は、
アーロン・エッカートとジェームズ・フランコのカメオ出演シーン。

2014年7月13日日曜日

映画:『シャドー・ダンサー』

〜ストーリー〜
IRAの闘士でありシングルマザーでもあるコレットは、
ある日、MI5のマックに捕らえられ、
息子との生活を続けたければIRAの情報を流すように命じられる。
とある襲撃事件の失敗から裏切り者の疑いを向けられ始めたコレット。
マックは彼女を守ろうと捜査を進めていく内に、
コレットとは別の密告者「シャドー・ダンサー」の存在に気付く。

『インサイド・マン』『イントルーダーズ』のクライブ・オーウェンと、
『オブリビオン』のアンドレア・ライズボローが共演したスパイサスペンス。
ヨーロッパ映画らしい淡々とした雰囲気を持つ映画だが、
それが悪い方に転がっていてとにかくテンポが悪い。
それ故に緊迫感も感じられず、サスペンスとしての面白みを減少させてしまっている。
エンディングはそれなりに驚きをもって迎えられるべき質のものなのだが、
映画全体のテイストから言うと非常に唐突な印象を受ける。

2014年6月30日月曜日

映画:『猿の惑星 創世記ジェネシス』

~ストーリー~
特殊な遺伝子操作により優れた知能を持った母親から産まれたチンパンジーのシーザー。
とある出来事をきっかけに人間に絶望した彼は、
仲間を解放するための戦いに身を投じることとなる…。

もはや古典と言っても過言ではないSF映画『猿の惑星』の、
言わば”エピソード0”を描いた2012年の作品。
主演にトビー・マグワイア版スパイダーマンシリーズで、
主人公の親友にして最大の宿敵であるオズボーン=グリーンゴブリンを演じたジェームズ・フランコ。

そもそも猿たちがいかに人間を支配できるほどの知能を持つに至ったのかという点から始まり、
それにしたって現代兵器を駆使すれば猿くらい殲滅できるだろうという意地悪な問いかけに多少強引ながらも解答を提示している。
また、あまりに有名過ぎるかのエンディングに頼ることなくストーリーを終結させた点にも非常に好感が持てる。
だからこそ惜しむらくは、
公開当時から指摘があったようだが、
各エピソードをもう少し丁寧に描けなかったのかという点。
本作においてヒロインは物語に何の影響も及ぼさない全く不要の存在であるし、
それを削ってシーザーが主人公と心の交流を重ねながら知能を発達させていくと同時に、
より人間に対し不信を描く出来事を積み重ねていった方が、
ぐっとストーリーに深みが生まれたと思う。

2014年6月7日土曜日

漫画:筒井哲也『予告犯』

~ストーリー~
「しんぶんし」と名乗る男がインターネットを通じて次々と犯罪を予告、実行していた。
ネット上で初めは少数派だった彼らの支持者は、
犯行を重ねるごとに増えていく。
警視庁サイバー犯罪対策課の吉野犯人を捕らえようと奔走するのだが…。

『マンホール』など良質のサイコスリラーを提供しているSTUDIO221の筒井哲也の作品。
インターネットを通じての犯罪予告という設定自体にそれほどの目新しさはない(古くはYouTube黎明期に『ブラックサイト』という良質のハリウッド製スリラーがある)ものの、
犯人の緻密な計算とそれを追う刑事との攻防にワクワクしてしまう。
また、人物描写が大変緻密でドラマ性も非常に高い。
最後に明かされる、悲しい過去を抱える犯人の犯行動機はあまりに切ない。
全3巻とサクッと読めるのもGOOD。
上述の『マンホール』と共にオススメします。

2014年6月3日火曜日

小説:深町秋生『果てしなき渇き』

~ストーリー~
元刑事の藤岡は、
離婚した元妻から失踪した娘・加奈子の捜索を依頼される。
時を同じくして発生したコンビニでの殺人事件と、
加奈子に恋心を抱く同級生が残した手記。
3つの事象がひとつに重なりあった時、
加奈子が隠し持っていた裏の顔が明らかになり、
やがて暴力団や中国系マフィアをも巻き込む凄惨な事件の幕が開く…。

深町秋生が「このミス」を受賞したハードボイルド小説。
役所広司主演で今夏映画化。
ひたすら救いようのない話であり、
どの登場人物とてまともな人間が一人もいない。
扱われるテーマも、暴力・殺人・麻薬・いじめ・少年少女の売春など、とにかく重苦しい。
だが、徐々に白日の下に晒されていく驚愕の真実の連鎖や、
一見関係がなさそうな同級生の手記と一連の事件の関係性が明らかにされていくにつれて、
読者をぐいぐいとその世界観に引き込むパワーを持った小説でもある。
思わず読むことを躊躇ってしまいそうなほどグロいシーンも満載のため、万人にお勧めはしない。
だが、決して面白くない小説であるという事はなく、
むしろ体調を万全にして本書を手に取ることをお勧めします。

2014年6月1日日曜日

映画:『さんかく』

〜ストーリー〜
百瀬と佳代が同棲している部屋に佳代の中学生の妹・桃が夏休みを利用してやって来る。
佳代と倦怠期にあった百瀬は天真爛漫な振る舞いをする桃に恋心を抱いてしまう。
桃が田舎に帰ってからも連絡を取ろうとする百瀬。
だが、彼の微妙な心境の変化に気付いた佳代はいらぬ喧嘩を百瀬に仕掛けてしまい、ふたりは破局することになる。
取り返しのつかないことになり慌てた佳代は、何とか百瀬の気持ちを取り返そうとするが・・・。

高岡蒼甫・田畑智子・小野恵令奈共演の恋愛映画。
アラサーのバカ男代表・百瀬。
同じくアラサーのイタ女代表・佳代。
思春期の無邪気な悪意の権化・桃。
その他、人のいい佳代をマルチに引き込もうとする女友だちや、
アホで生意気で先輩ヅラを吹かせることだけ一流の百瀬にうっかりため口を聞いちゃう後輩など、
登場するキャラクターほぼ全員に妙なリアリティや「あるある」が詰め込まれている。
それ故に、彼らの織り成す人間模様をはじめは滑稽に感じることもあるのだが、
次第に笑えなくなり痛々しさすら感じるようになってくる。
サスペンスばりに伏線が張られたストーリーで、
それがキャラクターに説得力を持たせ物語をより真に迫ったものにしている。

2014年5月27日火曜日

漫画:巴亮介『ミュージアム』

~ストーリー~
連続猟奇殺人事件が発生。
被害者は残忍な方法で殺害されており、
遺体の傍らには殺害方法に応じた刑罰の名前が記されたメモが残されていた。
事件を担当していた刑事の沢村は被害者の共通点に気付くが、
それは別居中の妻子の身に危険が迫っていることを意味していた。
だが、犯人の魔の手は既に愛する家族に及びつつあり…。

話題のサイコスリラーコミック。全3巻。
ストーリーを見てピンとくる人もいるかも知れないが、
○主人公が事件を担当する刑事。
○猟奇殺人とその方法に応じた刑罰が与えられている。
○主人公の家族にも身の危険が及ぶ。
など、プロットが映画『セブン』とほとんど同じ。
なので、面白いと言えば面白いのだが、
新鮮味に欠けると言えば欠ける。
ただ、ラストは一捻り入っているので、
もしかすると著者自身それを分かっていて、
ミスリードを導こうとしているのではないかという気がしなくもない。


2016.1.5追記
映画向きだなーと思っていたら、
小栗旬主演で映画化が決定したとのこと。
監督はるろうに剣心シリーズの大友啓史。
邦画にありがちなオリジナリティによる原作破壊は抑えて、
ぜひ原作を忠実に再現して欲しい(笑)

2014年5月23日金曜日

小説:小林泰三『百舌鳥魔先生のアトリエ』

~ストーリー~

『ショグゴス』
突如南極に現れた謎の不定形生物群。
大統領と科学者はロボットを使いそれを排除しようとするが…。

『首なし』
とある令嬢と頭の半分を失いながら生きた元使用人である夫。
とある疑念を抱いた息子は両親の馴れ初めを聞く。

『兆』
教師に殴られた女生徒・直美が学校を抜け出しとあるマンションから飛び降り、自殺した。
事件に疑惑を持ったフリーライター・なえ子は取材を開始する。
その頃、直美の同級生である欒花の前に直美の幻影が現れ、
人間を超越した「兆」という存在への昇華へいざなおうとしていた。

『朱雀の池』
戦時下のアメリカ。
軍から日本の文化財リストを作成するように言われたウォーナー博士は、
何故か自分が日本の京都に住む蘭蔵という男であるという夢を見る。

『密やかな趣味』
性的欲求を満たすためのアンドロイドを購入した「わたし」は、
届いたアンドロイドに様々な要求を押し付ける。
だが、それは徐々にエスカレートしていき…。

『試作品三号』
強大な力を持った妖怪達を兵器とするための研究施設が破壊された。
妖怪の中でも最強の力を持つという妖怪・試作品三号は、調査のためにやって来た鎧の男と対峙する。

『百舌鳥魔先生のアトリエ』
妻が習い事として始めた「芸術」は、
生物の身体を極限まで切り刻んだまま生体機能を維持させるという悪魔の所業だった。
ある日、失踪した妻を追って「わたし」はその「芸術」の講師である百舌鳥魔という男のアトリエに向かう。


奇抜な設定・グロ描写・ブラックユーモアと屁理屈を武器に、
主にホラー・SF・サスペンスの分野で活躍する作家・小林泰三の、
過去の作品を収録した短編集。
「クトゥルフ神話」をベースにしながらそれを逆手に取ってまさかのオチに持っていくSF作品『ショグゴス』、
読んでいるだけでこちらの身体か痛くなるかのような錯覚に陥るほどグロ描写満載の『密やかな趣味』『百舌鳥魔先生のアトリエ』、
現実と虚構を織り交ぜ読者を混乱させる『首なし』『朱雀の池』『兆』、
最強の妖怪とそれをも上回る力を持った鎧の男との戦いを描いた『試作品三号』など、
7作品とも著者のテイストがよく表れている。

2014年5月17日土曜日

小説:若竹七海『暗い越流』

~ストーリー~

『蝿男』
探偵の葉山は、
今は誰も住んでいない屋敷に母の遺骨を取りに行って欲しいという依頼を受け現場に赴くが、
そこで何者かの襲撃を受ける。

『暗い潮流』
5人を殺害、23人を負傷させた死刑囚・磯崎の元に山本優子という女性からファンレターが届く。
山本の正体を探るよう依頼を受けた雑誌編集者は調査を続ける内に、
山本優子が実在しかつて磯崎と近所付き合いをしていた事を知る。

『幸せな家』
失踪した女性雑誌編集者の捜索を依頼されたライターは、
彼女が周囲の人間を脅迫し金銭を得ていたのではないかという疑いを持つ。
だが、事態は思わぬ方向に進んでいく。

『狂酔』
とある教会で立て篭り事件が発生した。
犯人である男はその教会と自分の生い立ちとの関係について話し始める。

『道楽者の金庫』
探偵を休業し古本屋でアルバイトをしていた葉山は、
ひょんな事からとある資産家の金庫の番号が隠されていると思われるこけしを探すよう依頼を受ける。
資産家の別荘に赴いた彼女は、
またしても何者かの襲撃を受ける。


表題作『暗い潮流』で日本推理作家協会賞短編部門を受賞した若竹七海の短編ミステリー集。
どの作品も「家」と「歪んだ家族・人間関係」がキーとなっている。
ほとんどの作品が依頼を受け調査をするという探偵ものの形式を取っている中、
一番のお勧めは唯一その形式を取らず犯人の独白でストーリーが展開される『狂酔』。
教会に隠された欺瞞に振り回された主人公とその周囲を取り巻く人物の惨めながらひたむきな生活は美しく感動的ですらあるのだが、
作者が最後の最後に設置した仕掛けに世界が反転し度肝を抜かれる。
その他の作品もミステリーとして及第点以上のクオリティ。
文体も読みやすいもので短編なのでサクッと読むことができる。

2014年5月15日木曜日

小説:湊かなえ『白ゆき姫殺人事件』

化粧品会社の女性社員・三木が殺害された。
その疑いの目は事件直後から行方をくらました彼女の同僚である城野に向けられる。
フリーライターの赤堀は、
ふたりの後輩である狩野から事件の話を聞き取材を開始する。
彼女を犯人と確信する者、
彼女を擁護する者、
彼女の家族・親友・同僚、
彼女を取り巻く人々の話が城野という女性の人物像をあぶり出し、
それはやがて雑誌やSNSを通じて形を変えながら拡散していく。

『告白』『北のカナリアたち』など、
立て続けに映画化されたヒット作を世に放っている湊かなえの小説。
本作も井上真央・綾野剛・菜々緒らをキャストに迎え映画化された。
『告白』が主人公の独白によって成立していたストーリーであるのに対し、
本作は城野を取り巻く人物が話す会話や雑誌・SNSにより事件の真相が明らかになっていくという構成が取られている。
ジャンルとしては叙述トリックにより読者のミスリードを導くサスペンスということになろうが、
事件の真相に関して言えばサスペンス的な驚きは少なめである。
むしろ、人間がいかに自分に都合が良いように記憶を捻じ曲げ話をするかといった点と、
それらが情報化社会において様々な形で拡散していく可能性があるという恐怖を描くことに主眼が置かれているように感じた。
しかしながら、テーマとしては決して目新しいものではない。
また、物語の構成上仕方がない部分ではあるが、
各登場人物の会話が説明的かつ冗長になりがちであり、
読み進めるにあたり焦ったさを感じさせる点もある。
どの登場人物も一癖も二癖もある人間ばかりで、
事件の真相が明らかになっても誰も得をしないというところも、
人によっては読後の満足感を削ぐ原因たり得るだろう(個人的には嫌いではない)。

2014年5月6日火曜日

映画:『アメイジング・スパイダーマン2』

スパイダーマンとして活躍しながらも、
恋人のグウェンとの距離を縮められずにいたピーター。
そんな彼の前に親友ハリーが海外から帰ってくる。
ハリーは一族に伝わる特殊な遺伝病を克服するために、
スパイダーマンの血を欲していた。
スパイダーマンを捕らえるべく、
ハリーは事故により電気を操る能力を得た男マックス=エレクトロを使い、
また自らも特殊な血液とパワードスーツによりグリーン・ゴブリンと化し、
親友をその毒牙に掛けようとする。

http://kakidame-kakidame.blogspot.com/2014/05/blog-post_6.html』シリーズ第2弾。
前作同様のカラッとした明るい雰囲気と勧善懲悪のヒーローストーリーを引き継ぎつつ、
キャラクター説明が不要になった分を見応えたっぷり極彩色豊かなアクションできちんと補充している。
相変わらず諸々のエピソードもアッサリめに描いているが、
劇中にきちっと解決されるので不満なポイントという訳ではない。
ただ、前作のラストで主人公が下したとある決断が軽過ぎやしないかと評していたのだが、
それを今作でまさかあんな形で解決させるとは思わなかった。
ピーターとハリーの決着の行方、
ハリーにヴィランを手引きするミスター・フィアーの正体、
そしてこれは前シリーズも含めたファンサービスかも知れないが、
オクトパス風のパワードスーツなど、
次回作へ期待を抱かせる繋ぎも万全…
だったのだが、

商業権がソニーからマーヴェルに戻った今となっては続編があるかどうかは微妙。
まあ、もうちょっと早ければ『シビル・ウォー』に間に合ったんじゃないかと思うと非常に残念。

映画:『アメイジング・スパイダーマン』

トビー・マグワイア版のような、
陰気臭いキャラが織り成すウジウジ青春劇ではなく、
「悲しいことは悲しい!」
「好きな人は好き!」
「悪いやつはやっつける!」
「スパイダーマンはみんなのヒーロー!」
という単純明快なストーリー構成は好感が持てる。
なんだかんだでヒーローものはこれくらいアッサリしてる方が良い。
何よりもヒロインがサッパリした性格でちゃんとカワイイのが良い。
トビー・マグワイア版のキルスティン・ダンストは女優としては素晴らしいけど、
こんな○○○○な女に振り回されるかよ!と、
イマイチ感情移入しにくい感じだったので…。
あえて苦言を呈するとすれば、
主人公が最後に下したある決断が軽過ぎやしないか?というところ。
でも、今作の雰囲気からするとこの決断でないといけない気もするし、
ここは個人の嗜好の問題か。

個人的に嬉しかったのは、
それほど有名ではないキャストが多い中で、
往年の名優マーティン・シーンが、
主人公の人生に深く影響を与える重要な役所である育てのおじ役として存在感を光らせていたところ。
やっぱり映画って脚本+俳優なんだと改めて思った。

お気軽デートなんかにはもってこいの作品。

2014年5月5日月曜日

小説:安生正『生存者ゼロ』

北海道沖の採掘プラントの従業員が、
一夜にして凄惨極まる姿に成り変わり発見された。
その遺体からは未知の最近が採取され、
新型の感染症が疑われたが被害は広がることなく、
原因不明のまま事件は収束するかと思われた。
だが、1ヶ月後、北海道のとある街の住民6万人が、
やはり一夜にして同じ症状で全滅するという事態が発生。
両方の現場に居合わせた自衛官・廻田は原因と被害拡大の防止策を探るように命じられる。

安生正の第11回このミス受賞作品。
たった一夜にして多くの人間を死に至らしめる謎の感染症とその意外な原因、
その対応に追われ醜態を晒す日本政府と諸外国との緊張など、
プロットとしては面白い部分が多々ある。
しかし、何もかもを詰め過ぎた結果、
不必要だったのではないかという要素や説明不足のまま読者を置いていく部分も多々ある。
例えば、
主役のひとりである覚醒剤中毒の元細菌研究者は、
事件の原因究明のキーパーソンになるのか(羊たちの沈黙のレクターみたいな)と思えば、
ストーリーをかき回すだけで不快感しか感じられない。
あるたは、全く異なる時間と環境にあるはずの人物が共通して聞いた「神の啓示のようなもの」については何の説明もない。
一時は実は本作はカルトホラーなのかと思ってしまうほどこのプロットは不要だ。
そうかと思えば、政府のグダグダな対応、政治家のダメさという部分については執拗なほど細かく描写があり、
著者は国に身内を殺されたことでもあるのかと首を傾げたくなる。
このようなチグハグさが全体的に感じられ、
せっかくの良いプロットが台無しになってしまっていると思う。
ただ、見せ場を視覚的にイメージすると映画に向いているような箇所が散見されるため、
上述したような余分な要素を削り取れば、
なかなかのエンターテイメント作品になりそうな気はする。

2014年4月29日火曜日

映画:『隣人は静かに笑う』

FBIの捜査官であった妻をテロで亡くしたマイケル。
彼は大学でテロリズムの歴史について教鞭を振るっていた。
ある日、設計技師であるラングとその家族が隣家に越してきた。
大怪我をしたラングの息子を助けた事から交流を深めるふたり。
しかし、マイケルはひょんな事からラングがテロリストではないかという疑念を抱き始める。

ジェフ・ブリッジス、ティム・ロビンス共演のサスペンス映画。
隣人がテロリストである事に気付いた男が、
そのテロ計画を阻止せんと孤立無援の中奮闘する姿を描くという、
古いシュワちゃんの映画にでもありそうなストーリーなのだが、
1シーンも見逃せない緻密なストーリー構成、
深いキャラクター造形とそれにリアリティを持たせる俳優陣の演技、
この2つがうまく組み合わさって、
最後まで緊張感を維持したまま鑑賞を楽しめる。
そして、全ての謎が氷解する最終盤のワンシーンと、
その後のエピソードに度肝を抜かれる事間違いなし。
1999年公開の古めの映画だが、
テロに対する恐怖や素性のわからない隣人との人間関係というテーマは、
むしろ現代の方が真に迫ってくるテーマであると思う。

2014年4月12日土曜日

映画:『ゾンビランド』

突如発生したウィルスにより人類はゾンビと化した。
元ひきこもりのゲームおたくであったコロンバスは、
生き残るための32のルールを自らに課し生き延びていた。
生まれ故郷を目指す旅の道中、
ウィンキーを愛しゾンビを憎む癇癪持ちの男タラハシーや詐欺師姉妹と合流する事になった彼は、
そんなメンバー達との間に絆が芽生えた事に気付き始める。

ゾンビ映画でありながら、
個性的な4人の人間の心の交流を描くロードムービーであり、
ティーンエイジャーの恋愛模様を描くラブストーリーであり、
ゾンビのみならず様々なジャンルの映画へのオマージュを含むコメディであるという異色の作品。
ポイントポイントで登場人物の過去の場面が現れるのだが、
その中でも特に、4人の中で最もヤバそうに見えるタラハシーの過去が、
全体的に緩い感じのストーリーにスパイスとなって効く。
グロい場面はほとんど無く、急にゾンビが現れてビックリするようなこけおどしも無し。
R15指定作品だがほぼあらゆる世代のあらゆるジャンルの映画好きが楽しめる映画。

名優ウディ・ハレルソンをはじめ、
『ソーシャル・ネットワーク』でFacebook創始者を演じたジェシー・アイゼンバーグ、
『アメイジング・スパイダーマン』のヒロインであるエマ・ストーン、
『サイン』『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリンらが主要キャストを演じており、
また、特別ゲストとしてビル・マーレーが本人役で登場。
『ゴーストバスターズ』に親しんだ人なら最も笑えるシーンを提供してくれる。

2014年3月30日日曜日

映画:『トランス』

~ストーリー~
ギャングのリーダー・フランクはオークショニアであるサイモンと共謀して、
2500万ドルの価値がある絵画を盗み出そうとする。
だが、サイモンが計画外の行動を起こし、絵画は行方不明に。

さらに、彼は記憶喪失に陥る。
絵画の行方を探すために、
二人は催眠療法士のエリザベスの元に赴く。

『ウォンテッド』『つぐない』のジェームズ・マカヴォイと、
『オーシャンズシリーズ』『ブラックスワン』のヴァンサン・カッセル共演のスリラー。
監督は『28日後』『ザ・ビーチ』のダニー・ボイル。

夢や記憶を扱うサスペンスは、
一見荒唐無稽な場面にも必ず意味があり、
鑑賞中には訳が分からなくても、
最後にそれらを理路整然と並べるとパズルの如く事件の全体像が見えるようになる、
という所にひとつの鑑賞の醍醐味がある。
本作の場合も確かにそのような伏線は引いてあるのだが、
それらをストーリーで語るのではなく、
登場人物や舞台設定で視覚的に語っているため、
最後のとある人物の独白まで物語の全体像が見えにくく焦ったさを感じさせる。
それに加え、設定にチグハグな部分があったり人物描写が薄いため、
「なんでこんな事になるんだ?」と首を傾げたくなる場面も散見される。
やたらと音楽と画面効果には凝ってるけど実はそのシーン意味ないよね!?というダメな時のダニー・ボイルのクセも全開。
事件の真相はそれなりに衝撃的なもののはずなのに、
全くそれを感じさせない作品になってしまっている。

2014年3月3日月曜日

映画:『ゼロ・グラビティー』

〜ストーリー〜
医療技師でありながら宇宙飛行士となったライアン。
指揮官であるマットと船外活動を行っていたさなか、
ロシアが破壊した人工衛星の破片がステーションに直撃し、
ライアンは宇宙空間に放り出されてしまう。
パニックに陥りつつも機転を利かせなんとかマットと合流したライアンは、
他の宇宙ステーションにある脱出艇を求め宇宙空間をさ迷うが、
その間にも人工衛星の破片は地球を周回していた…。

『天国の口、終りの楽園。』といったミニシアター系作品から『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』といったファンタジー大作まで、
あらゆるジャンルの作品をこなすアルフォンソ・キュアロン監督が、
サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニーをキャストに迎え製作したSFパニック。

雪山やら鮫の棲息する海やらロッククライミング中の事故やら、
孤立無援で極限状況下に置かれるパニックものは数多くあれど、
その舞台を宇宙空間に置き新境地を開いた作品。
宇宙や無重力の映像表現は素晴らいし、
50歳のおばちゃんにも関わらず、
身体をクルクルクルクル回転させらたサンドラ・ブロックの撮影中の労苦が偲ばれはするものの、
ストーリー自体は危機→脱出→危機→脱出の繰り返しで単調なものだし、
ややご都合主義的な展開が散見される。
(例えば、これだけの惨事にも関わらず、脱出艇だけは毎度無事とか)
主人公ライアンのとある過去のエピソードも蛇足的でしかなく、
どうせならより掘り下げることで危機を脱出する強い意思の裏付けとするか、
いっそ無しにしてパニックに陥る人間の姿を描く事に主軸を置いた方がエンターテイメント性は上がったと思う。
このような点を抜きに単にパニックものとして楽しむにしても、
3D鑑賞するか大画面で鑑賞するかしないと、
単にDVDやBRだけでは映像表現も堪能できないかも。

2014年1月28日火曜日

映画:『女子高生サバイバル・ドライブ』

〜ストーリー〜
ドライブを楽しんでいた5人の女子高生。
しかし、道に迷ってしまい時間はすっかり真夜中。
ただでさえ険悪な雰囲気の中、 他の車に衝突してしまい、さらにもめる5人。
人のいる所に戻り道を確認しようとしたところ、
ぶつけた車に追いかけ回される羽目に陥る。
おまけに、その女運転手の手にはショットガンが…。 

気が狂った女に追いかけられた5人の女子高生の一夜の災難を描いたスリラー。
女の子同士のイザコザを見るのは楽しいのだが、
肝心のキチガイ女の行動にあまりに一貫性がなく、
これから盛り上がりそうだという所で急に行動をやめていなくなったり、
その手に持ってるものを使えよ!というシーンがあったりと、
最後までテンションが中途半端のまま映画が終わってしまう。
内容自体はB級にも引っかからないどうしようもない映画なのだが、
この映画の全ては邦題にある。
原題は『FIVE ACROSS THE EYES』。
それに『女子高生サバイバル・ドライブ』なんて名前を付けた配給会社の担当者のセンスを高く評価したい。
 この邦題だけでどんな映画なのか大体想像がつくうえに、
「女子高生のサバイバルなドライブ」という響きで男のエロい妄想を掻き立てるというターゲティングまで兼ねている。
だが、ジャケットと比較して、 女優のレベルはかなり落ちる事も付記しておく。

2014年1月26日日曜日

映画:『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』

~ストーリー~
死刑反対論を唱える大学教授デビッド。
彼に元同僚の女性をレイプし殺害した容疑で死刑が下される。
刑の執行日が決まると彼は手記を残すために、
新聞記者であるビッツィーを呼び寄せる。
当初はデビッドの犯行を疑わなかったビッツィーだったが、
話を聞く内に冤罪の可能性に辿り着き、
やがて独自に調査を開始する。

ケヴィン・スペイシー、ケイト・ウィンスレット、ローラ・リニーが共演したサスペンス映画。
死刑制度の是非がテーマとなっており、
本作の立ち位置としては反対の立場。
鑑賞者が死刑制度に対しそもそもどういうスタンスを取っているかによって評価が左右されるきらいはあるが、
それを横に置いたとしても、
ひとりの人間が転落の人生を歩むまでの重厚なドラマと、
丁寧に組み上げられたプロットの末に驚愕の真実が明かされるというサスペンスの醍醐味を、
同時に味わう事ができる作品。
ケイト・ウィンスレットのいかにも運動できなさげなランニング姿にも注目。
そりゃこの人アクションには出せんわ…。

2014年1月20日月曜日

映画:『"アイデンティティー"』

~ストーリー~

大雨の夜、とあるモーテルに避難を余儀なくされた人々が集まった。
年齢も性別もバラバラの一行は雨が過ぎ去るまでのひと時を共に過ごすだけに集まった…はずだった。
しかし、連続殺人が発生。
死体には残された人々に死までのカウントダウンを告げるかのように数字が握らされていた。

その頃、とある連続殺人鬼が精神鑑定に掛けられていた。
彼の精神状況を巡り検察・弁護士・裁判官の審議は難航。
事態を打開するために、彼には特別な精神鑑定が施されていた。

一見関連性がないように見える二つの事件。
これらがクロスした時、驚愕の真実が明らかになる。


ジョン・キューザック、アマンダ・ピート(『隣のヒットマン』など)、レイ・リオッタ(『ハンニバル』など)ら共演のスリラー。
ストーリー終盤に訪れるある衝撃のシーンと、
ラストに訪れる大どんでん返し。
そのあまりに衝撃的かつ非現実的な展開に説得力を持たせるだけの伏線の積み重ねがあり、見応え充分。
鑑賞後には悪い意味でなく「ヤラレタ!」とニヤけてしまう。
優れたサスペンスやスリラーを探している場合にオススメする1本。

映画:『G.I.ジョー バック2リベンジ』

〜ストーリー〜
パキスタンでの核弾頭奪取作戦に成功したのも束の間、
謎の軍隊の襲撃を受けG.I.ジョーは壊滅状態に陥る。
コブラのメンバーであり、
米国大統領に成りすましているザルタンの命令によるものだった。
コブラの復活を阻止すべく、
生き残ったG.I.ジョーのメンバー達は、
隊を設立した伝説の人物の元へと赴く。

伝説の人物ジョーにブルース・ウィリスを迎え製作されたシリーズ第2弾。
何らかの事情があったのか、
キャストに大幅な変更が加えられている。
前作に比べるとスケールにしろアクションにしろ控えめにはなっているが、
少々スパイ映画の要素も入ったりして、
全体的にはコンパクトにまとまった印象を受ける。
あとは、ジョン・マクレーン的なブルース・ウィリスの活躍や、
全編ほぼ途切れる事のないアクションを純粋に楽しめればそれでいいのでは。
続編作る気満々な終わり方になっているが、
そこまで大ヒットしたとも聞かないしどうなんだろう?

2014年1月19日日曜日

映画:『ダイ・ハード ラスト・デイ』

〜ストーリー〜
長年疎遠になっていた息子ジャックが、
モスクワで裁判にかけられる事を知ったジョンは、
休暇を利用してロシアに飛ぶ。
しかし、裁判所でテロ事件に遭遇し、
それにジャックが関わっている事を知る。

ダイ・ハードシリーズ第5弾。
過去作と比べると、ストーリーが暗めでテンポも悪くアクションもイマイチ。
本シリーズの魅力のひとつにバディ・ムービーであることが挙げられると思うが、
今回のバディは息子というだけでただの劣化ジョン・マクレーン。
ひとつの映画に似たようなタイプのキャラクターはいらない。

2014年1月18日土曜日

映画:『エリジウム』

~ストーリー~
2154年、環境汚染や人口爆発による地球の荒廃から逃れるため、
富裕層はスペースコロニー”エリジウム”を建設し、
高度なテクノロジーがもたらす生活を謳歌していた。
一歩地球はスラム化し、まともな医療を受けられない人々で溢れかえっていた。
そんな中、工場で働くマックスは不慮の事故により致死量の放射線を浴び、余命5日と宣告される。
エリジウムでの医療を受けるために、
マックスは密航の手引きをしている男スパイダーに会い、
エリジウムの人間の脳に埋め込まれたデータを盗むように指示を受ける。
仲間を失いながらも作戦は成功。
しかし、盗み出したデータはエリジウムそのものの存在を根本から覆しかねないものであり、
マックスはエリジウムの防衛庁長官デラコートやその部下であるクルーガーから命を狙われる事となる。

マット・デイモン、ジョディ・フォスター主演のSFアクション。
支配からの解放というサイバーパンクの基本をなぞった内容で、ストーリーは極めてシンプル。
だが、本題に入るまで(約20分)が長過ぎて退屈な一方、
入ったら入ったで、登場する敵役が見事にアホばかりで、
ストーリーを無理矢理長くするような事ばかり引き起こす。
全体的に冗長さを感じさせる作品。
アクションにも特筆すべき点はない。
坊主頭で大リーガー養成スーツを着たマット・デイモンがワイヤーアクションを繰り広げるという、
ファンによっては悪夢の光景ともなりかねないB級映画感を楽しめるなら良いかも。
それにしても、マット・デイモンに限らず、
ジョディ・フォスターやシャールト・コプリー(『第9地区』)など、
演技力のある俳優が主要キャストを務めており、
キャラクターのシリアスさとストーリーのハチャメチャさに始終齟齬を感じる。