2015年10月31日土曜日

小説:荻原浩『砂の王国』

〜ストーリー〜
エリート証券マンからホームレスに転落した山崎は、
占い師の龍斎と容姿端麗なホームレス仲村と出会い、
人生を逆転させる妙案を思い付く。
それは、宗教団体を作ることであった。
3人が立ち上げた「大地の会」は順調に規模を拡大し金を生み出していくが、
会員が増えていくのに従って徐々に綻びが生じ始める…。

『オロロ畑で捕まえて』『明日の記憶』『噂』など、
幅広いジャンルで才能を発揮する小説家・荻原浩による長編小説。
ストーリーはホームレス期・創立期・転換期の主に3部構成により成り立っており、
山崎の過去や心理を深く描写する事で、
人生の逆転の道を進みながらも苦悩にもがく人間の姿と、
彼を取り巻く心に何かを抱えた人々の人間模様を描くヒューマンドラマが展開される。
他方で、様々な思惑の元、
肥大化する組織がその性質を変容させていき、
ややもすれば暴走し危険性を孕んでいく様子も描かれる。
宗教団体の暴走というと日本人にとってはアレルギーすら引き起こしかねないテーマであり、
本作においては主題には添えられていないが、
不吉なものを予感させる少し怖い作品ともなっている。
相変わらず著者の文章は読みやすく、
文庫本にして上下2巻の大作であるが時間を忘れて読書に没頭できる。

2015年10月30日金曜日

映画:『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』

〜ストーリー〜
核戦争により荒廃した近未来。
元警官のマックスは過去のトラウマと対峙しながら、
愛車V8インターセプターで荒野を走る日々を送っていた。
ある日、暴徒に襲撃されたマックスは、
イモータン・ジョー率いるシタデル砦に連行され、
疾病を患う住民たちのために血液を提供するために拘束される。
そんな中、バッサ大佐は自身の出生地である「緑の地」にジョーが監禁している女性達を逃す計画を立てていた。
とある偶然によりシタデルからの脱出を果たしたマックスは、
バッサ大佐と共に緑の地を目指すが…。

マッド・マックスシリーズの監督でありながら、
ベイブやハッピーフィートシリーズみたいな可愛らしい作品の製作・脚本も務めるジョージ・ミラー監督のマッド・マックスシリーズ最新作。
主演にトム・ハーディとシャーリーズ・セロン。
北斗の拳よろしく世紀末ヒャッハー!感満載の本作。
上映時間の多くをド迫力のアクションシーンに割きながらも、
要所要所でセンチメンタルなストーリーも織り交ぜ、
まったく飽きを感じさせないエンターテイメント作品となっている。
強いて難点を挙げるとすれば、 
どのキャラクターも個性が強くて、
主人公のマックスの存在感が薄いところか。

2015年10月25日日曜日

雑記:牛久大仏

映画『下妻物語』において何かと存在感を放つ大仏様。
世界一高いブロンズ立像としても有名。
とにかくデカい。
不安を覚える人すらいるんじゃないかと思う。
ただ、展望台からの景色はただの田舎の風景。

2015年10月21日水曜日

映画:『チャッピー』

〜ストーリー〜
ヨハネスブルグでは人型警察ロボットが導入され、
犯罪率の抑制に効果を上げていた。
開発者であるディオンは、
独自に構築した人工知能の導入を提案するが却下され、
廃棄寸前のロボットを自宅に持ち帰りプログラムをテストしようとする。
しかし、帰宅の途中でギャングの襲撃に遭い、
奪われたロボットはチャッピーと名付けられる。
廃棄寸前であったチャッピーの寿命であるバッテリーは5日分の残量しかなく、
チャッピーはギャングに生活の術を学びながら生き残る道を模索するが・・・。

『第9地区』『エリジウム』のニール・ブロムカンプ監督の最新作。
「南アフリカ」「近未来」「ギャング」「マイノリティー」というキーワードで、
『第9地区』との共通点を見出す事の出来る本作。
『第9地区』がアパルトヘイトを題材とし、
組織に追われる身となった男の孤独を緊迫感を持って描こうとしていたのに対し、
本作は人工知能を備え人と同じく心も成長するマシンを、
彼を取り巻く人々がそれぞれに導こうとしそれにチャッピーが苦悩するという、
青春映画にも通ずるような「心の成長」がテーマとなっている。
ただ、生後3〜4日でとある大発明を成し遂げるほど知性のあるチャッピーの精神年齢がいつまでも子どもであるなど、
SF映画としては色々と矛盾してしまっている点がどうしても引っかかってしまう。
アクションシーンも終盤に固まっているため、
アクション映画として楽しもうとすると肩透かしを食らう可能性がある。

映画:『シグナル』

〜ストーリー〜
MITの学生であるニックとジョナは、
ノーマッドという人物からハッキングと挑発を受けていた。
IPアドレスからノーマッドの居場所を突き止めたニックたちは、
恋人のヘイリーを連れてネバダにある廃屋に足を踏み入れる。
だが、気がつくと彼らは謎の組織に捕らわれ、
宇宙人と接触した事による感染症の疑いから施設に幽閉されてしまう。

若手俳優ウィリアム・ユーバンクと、
『マトリックス』シリーズのローレンス・フィッシュバーン主演のSFスリラー。
画面は美しいのだが、
とにかく説明不足のまま最後まで突っ走るうえに、
かったるい演出で話が遅々として進まない非常に退屈な作品。
考える余地を多分に含んだ作品と評価する声もあるようだが、
思考停止に陥っていたとしか思えないほど適当に継接ぎしたような酷いストーリーだった。

2015年10月19日月曜日

映画:『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』

〜ストーリー〜
突如死者が蘇り人間を襲い始めた。
テレビで、ウェブで、様々な情報が錯綜する中、
映画を撮影していた大学生一行は真実を残しためにビデオカメラを回し続けるのだが…。

ジョージ・A・ロメロによる2008年公開のゾンビ映画。
最近では何も珍しくないPOV形式のホラーだが、
それを更に編集してひとつの映像作品に仕立てたというフェイクドキュメンタリー形式を取っている。
しかし、それがどうしかしたのかと思うほど退屈で何の深みもない映画だった。
最後にゾンビで遊ぶ人間の映像が流れ人類がどうたらこうたらと講釈を垂れているが、
ストーリーとは関係がない全くの蛇足でむしろ無い方が良かったのではないかとさえ思う。

映画:『ジョン・ウィック』

〜ストーリー〜
ロシアンマフィア・ヴィゴの元で凄腕の暗殺者として名を馳せていたジョン・ウィック。
絶対不可能な任務の成功と引き替えに愛する女性ヘレンとの穏やかな生活を手に入れた彼であったが、
ヘレンが病により帰らぬ人となり失意のどん底に陥る。
彼女が遺した1匹の子犬と共に静かな生活を送ろうと決意したのも束の間、
彼の愛車を狙っていた若者らに自宅に押し入られ車と子犬の両方を失ってしまう。
その犯人がヴィゴの息子ヨゼフだったことを知ったジョンは、
復讐の炎を滾らせながらヴィゴ一味との戦いに身を投じる。

ここの所作品も私生活もパッとしないと言われていたキアヌ・リーブスが、
マトリックス以来のキレキレのアクションと共に復活したと話題のアクションムービー。
生きる希望を奪われた元伝説の殺し屋が、
カンフーと銃技を組み合わせた「ガン・フー」を駆使し単身マフィアに立ち向かう姿が描かれる。
動きはスタイリッシュながらも、
血みどろの泥臭いアクションを全編を通して堪能できる。
それだけの作品と言えばそこまでなのだが、
如何せん子犬が可愛過ぎてそれだけでジョンの行動に説得力を持たせてしまっているのが本作の一番恐ろしいところである。
女殺し屋が必要だったのかは大いに疑問の残るところで、
彼女の登場シーンを削ってヘレンや子犬との交流を描いた方が物語に深みが生まれた気はする。
『ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル』で敵役を演じたミカエル・ミクヴィストを始め、
ウィリアム・デフォー、ジョン・レグイザモら渋いキャスティングも光る。

2015年10月8日木曜日

漫画:『CIVIL WAR』

〜ストーリー〜
ヤング・アベンジャーズが一般市民を巻き込む大惨事を引き起こしたことにより、
ヒーローの持つスーパーパワーが危険視され、
政府に登録されたヒーローのみが活動を許されるという法案が可決された。
法案を推進するアイアンマンと反対するキャプテン・アメリカは、
考えを同じくする同志を集めながらそれぞれの信念の元対立するが、
それはやがてヒーロー同士の争いへと発展していく。

映画『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』の原作コミック。
とある法案を軸に、
それに賛成する者、反対する者、中立を決め込む者など、
ヒーローがそれぞれの信念の元に対立してしまうという悲劇を描いたクロスオーバー作品。
どちらの考えを正解とするでもなく、
それぞれの思惑が複雑に絡み合いながら、
衝撃のラストを迎える大変読み応えのあるストーリーが展開される。
ただし、映画のアベンジャーズシリーズを観ているだけでは、
主要登場人物やその人間関係すら分からない可能性がある。


2015年9月22日火曜日

映画:『ナイトクローラー』

〜ストーリー〜
定職に就くことができず、
コソ泥をしながら自堕落な生活を送るルー。
ある日、彼は偶然居合わせた交通事故の現場で、
その様子を撮影する男達ー事件や事故専門のパパラッチに遭遇する。
撮影用のカメラとアシスタントを手に入れたルーはやがてメキメキと頭角を現し、次々と特ダネを飛ばす。
しかし、その取材はやがて超えてはならない一線を超え始め…。

ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ主演。
事件・事故専門のパパラッチとなった青年が、
業界のルールも法も無視した常軌を逸する取材で成り上がっていく姿をスリリングに描いたスリラー映画。
このテの映画にありがちなマスコミ・パパラッチあるいは一般大衆批判には目もくれず、
ひとりの青年の狂気とそれを助長するテレビディレクターとの「共犯関係」をひたすら描いている。
この点ではクライムムービーという見方さえ出来ると思う。
勧善懲悪ストーリーではないので、
主人公が犯した罪が裁かれることもなく、
人によってはモヤモヤした思いを抱えたまま鑑賞を終える事になるだろう。
それでも常に画面上を漂う緊張感と、
ジェイク・ギレンホールの鬼気迫る演技で最後まで引っ張ってくれる見応えのある作品。

映画:『アントマン』

〜ストーリー〜
SHIELDのハンク・ピム博士は、
原子間の距離を変化させ万物を拡大・縮小させるピム粒子と、
それを制御するスーツを開発する。
だが、その軍事転用を防ぐためSHIELDを退職。
会社を設立し技術とスーツを封印することを決意する。
彼の弟子であったクロスは、独自にピム粒子の研究を続け、
数年後、イェロージャケットを完成させる。
これを危険視したピム博士は、
窃盗の罪により生活と愛する娘との関係に困っていたスコットをスカウト。
彼にスーツと蟻を操る装置を与え、
アントマンとしてイェロージャケットの奪還を指示する。

マーベルシネマティックユニバースフェーズ2の最終作として公開され、
近日公開予定の『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』にも登場予定のアントマンを主人公とした作品。
ほかのアベンジャーズ関連作品の1作目同様、
ヒーローが生まれるまでの過程とトレーニングが中心の作品だが、
主人公スコットと娘キャシーの関係と、
ピム博士とその娘ホープの関係をクロスさせたドラマパートに力が入れられている。
また、他の純然たるヒーローを描いた作品と比べると、
主人公が元窃盗犯であったり、
平和のためではあるが侵入と窃盗が目的となっている点で異色の作品となっている。
サブキャラもいい味を出しておりアクションシーンにおいてもコミカルなシーンが多く、
親子で安心して楽しく観られるような作りとなっている。
もちろん、他シリーズとの関連を持たせる要素もふんだんにあり、
アベンジャーズの一員であるファルコンとのアクションシーンや、
シビルウォーのキーキャラクターのひとりであるとあるヒーローの登場シーンもあり、
これまでアベンジャーズシリーズを観てきた人なら更に楽しめる趣向もある。
また、アントマン原作からは、
イェロージャケットの他に今後ヒロイン・ワスプの登場を示唆するシーンもある。
ただし、蟻が嫌いな人はトラウマになるほど画面所狭しと登場するので注意。
主人公スコットを『40歳の童貞男』などのポール・ラッド、
また、ピム博士を名優マイケル・ダグラスが演じている。

2015年9月21日月曜日

映画:『キングスマン』

〜ストーリー〜
表向きはスーツの仕立屋として、
あらゆる国際機関から独立し諜報活動を行うスパイ組織「キングスマン」。
要人誘拐事件を追っていたメンバーのひとりが殺害された事から、
捜査の引継と新たなメンバーのスカウトを命じられたハリーは、
かつて命を賭して彼を危機から救ってくれた同僚の息子エグジーをスカウトする。

『キック・アス』のマシュー・ボーン監督が、
新鋭の俳優タロン・エガートを始め、
コリン・ファース、サミュエル・L・ジャクソン、マイケル・ケインら豪華キャストを迎え製作したスパイアクションムービー。
「英国紳士のスパイ」というのを新機軸に打ち立てようとしているのだが、
全体的には暴力的だったり粗暴な人間の出てくるシーンが多くそれほどスマートな印象は受けない。
むしろサミュエル・L・ジャクソンらの登場する極彩色豊かなシーンの方が印象が強く、
ノリ的には『チャーリーズ・エンジェル』に近い気がした。
それは、アクロバティックな動きやスローモーションを多用するアクションシーンという点でも共通しているし、
その中でも敵のボス・ヴァレンタインの義足の秘書の変則的な動きと強さは、
チャリエンの「細い男」とほとんど被って見える。
(とは言え、別にパクリ映画として糾弾したい訳ではない)
ストーリーはスパイものとひとりの青年の成長譚をミックスした可も不可もないもので、アクションシーンは多め。
決して退屈な映画ではないので、
上述のチャリエンや『キック・アス』が好きな人なら同様に楽しめるのではないか。
続編の製作が決定しているらしく、
次回作は世界観の説明が不要になる分、
さらにアクションで楽しませてくれる作品となることを期待したい。

2015年9月18日金曜日

映画:『インクレディブル・ハルク』

〜ストーリー〜
キャプテン・アメリカを生み出したスーパーソルジャー計画を復活させるため、
自らガンマ線による実験の被験者となったバナー博士。
しかし、実験は失敗し、心拍数が高まると緑の超人ハルクに変化する体質となってしまう。
バナーはブラジルに身を潜め治療法を研究する日々を送る。
しかし、ひょんな事から居場所が発覚。
彼を追うロス将軍と凄腕の兵士ブロンスキーの襲撃を受けることとなる。

マーベルシネマティックユニバースの作品としてはアイアンマンの次に製作された2作品目で、
エドワード・ノートン、リブ・タイラー、ティム・ロス、ウィリアム・ハートら豪華キャストが主演を務める。
アベンジャーズに関わることとしては、
唯一主演が変わった作品であり、また、唯一続編が作られていない作品でもある。
内容としてはバナーが治療法を求めて奔走する姿がメインであり、アクションシーンは控えめ。
ハルクがスーパーパワーで画面所狭しと暴れまくる作品…なんてことを期待すると大いに肩透かしを食らうこととなる。
ただ、これは、その他の関連作においても同様の事が言えるので、
続編が作られていないというのはある意味不幸なことかも知れない。

映画:『ギリシャに消えた嘘』

〜ストーリー〜
アテネでツアーガイドとして生計を立てるライダルは、
チェスターとコレットという富豪の夫婦と出会う。
コレットに一目惚れしたチェスターはガイドを申し出て夫婦と共に1日を過ごす。
その晩、夫婦の元にひとりの男が現れ、
口論の末チェスターは男を殺害してしまう。
実はチェスターは架空の投資話を持ちかけ多数の投資家を騙した詐欺師であり、
男は投資家に雇われた探偵であった。
偶然現場に居合わたコレットは、
ふたりを国外へ脱出させるべく同行するが、
時が経つにつれ事態は悪化の一途を辿っていく…。

ヴィゴ・モーテンセン、キルスティン・ダンスト、オスカー・アイザック主演のサスペンス映画。
殺人事件の罪を逃れようと国外脱出を図る夫婦と、
妻に惚れた事から夫婦に協力する若者、
その3人の微妙な三角関係を描く逃亡劇。
ギリシャの美しい風景とは裏腹に、
時が経つにつれ追い詰められ危うくなった精神状態により人間関係にもヒビが入っていく。
全体的にトーンもテンションも低めの映画だが、
先が気になるような緊張感が続き退屈することなく鑑賞できる。
この映画の唯一の難点は大変個人的なことで恐縮なのだが、
キルスティン・ダンストが一目惚れするほど美人でないこと。
本作に限らず女優としては素晴らしいと思うのだが、
どうも彼女が美人扱いを受けるのに違和感を感じてしまう。

2015年9月2日水曜日

映画:『アベンジャーズ』

〜ストーリー〜
ソーとの戦いに破れ宇宙空間に追放されたロキは、
チタウリという種族に遭遇し地球侵略を目論む。
事態を重く見たSHIELDSのニック・フューリーは、
アイアンマン、ハルク、キャプテンアメリカ、ソー、ホークアイ、ブラック・ウィドウらを集め、
アベンジャーズを結成する。

『アイアンマン』を皮切りに、『インクレディブル・ハルク』、『マイティ・ソー』『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』と続いたマーベルコミック映画の集大成的作品。
映画に必ず知性や思想をテーマとして求める人は絶対に観てはいけない。
この作品は、アクションの迫力だけでも映画を楽しめる人、単純にドキドキやワクワクを楽しみたい人にとって、最高の2時間を与えてくれる。
過去4作を観ていなくても、各キャラクターの能力を把握しておけば十分に楽しむ事ができるだろうし、
観ていた人ならこれまでシリーズに散りばめられた伏線が回収され最高に楽しめること間違いなし。
いがみ合う仲間、強大な敵、絶体絶命の危機、結束するチーム、反撃の瞬間、最後に訪れる大円団…
というヒーローものの醍醐味を頭をカラッポにして楽しめばOK。
アクションは各キャラクターの能力を最大限に活かしたものとなっており、爽快かつ大迫力。
アイアンマンが自由に空を駆け回りミサイルで敵を殲滅したと思ったら、
ハルクはそのスーパーパワーで敵を粉砕。
それを後半はキャラ同士のコンビネーションも組み合わせてこれでもか!これでもか!!と見せつけてくれる。
「日本よ、これが映画だ」というキャッチフレーズが一部で顰蹙を買っていたが、
確かにアクションやSFというジャンルに限れば今の日本じゃ絶対にこんな映画は作れない。
エンドクレジット中に登場するサノスは、
アベンジャーズの言わばラスボス的存在であり、
続くエイジ・オブ・ウルトロンにもエンドクレジットで登場。
また、ガーディアンズオブギャラクシーでは、本編中に登場している。

小説:フランク・ティリエ『GATACA』

〜ストーリー〜
双子の娘を誘拐されひとりの命を奪われ、
失意に陥ったリューシーは警察を辞職し、
残された娘と母と共に静かに暮らしていた。
ある日、リューシーはかつての同僚から、
犯人が不可解な方法で自殺したことを聞き、事件の真相を独自に追い始める。
一方、リューシーと同じく心に傷を負い、
殺人課に異動したシャルコは、
とある研究施設でチンパンジーによるものと思われる殺人事件の捜査にあたっていた。
やがて、2つの事件は交差し始め、
恐るべき犯人の正体と、人間の遺伝子に潜む秘密が明らかとなる…。

2015年8月23日に紹介の『http://kakidame-kakidame.blogspot.com/2015/08/e.html』のその後と新たな事件を描いた続編。
本作においても著者お得意の猟奇殺人事件と、
生物の進化や遺伝子という壮大なテーマをベースとし、
無関係に思われる事象が収束したうえに事件の意外な真相と犯人が明らかになるという、
優れたサスペンスを読んだ時に覚える快感を味わう事ができる。
また、本筋とは無関係ながら残された謎があり、
その真相は日本未訳の『ATOM[KA]』という続編に委ねられている模様。

2015年8月27日木曜日

映画:『アイアンマン3』

〜ストーリー〜
『アベンジャーズ』の戦いから1年。
外敵の力に脅威を感じたスタークは寝食を忘れてスーツの研究に打ち込む内に重度のパニック症候群を患ってしまう。
そんな折に現れたテロリスト・マンダリン。
優れた身体能力と発熱能力を持つ兵士を擁するマンダリン一味との戦いに苦戦を強いられる中、
恋人ペッパーが敵の手に堕ちスタークは更なる窮地に追いやられる。

ロバート・ダウニーJr.最大の当たり役アイアンマンシリーズの第3弾。
グィネス・パルトロゥ、ドン・チードルら前作からの続投組に加え、
『メメント』『LAコンフィデンシャル』のガイ・ピアーズや名優ベン・キングスレーを敵役に迎えた豪華キャスト。
序盤で自宅が破壊されてしまい、
終盤までスタークがスーツを着て戦闘するシーンはほとんどなし。
遠隔操作できる新型スーツを利用した戦いや、
一部分のみスーツを着用した戦いなど、
スターク自身の生身の戦いがメインに描かれており、
ちょっとSF要素が強くてノリの軽い007シリーズといった感じになっている。
圧倒的な破壊力と機転の良さで敵と戦う前作までとは少々テイストが異なるので、
これを良しとするか悪しとするかだが、個人的には悪くはなかった。
一番エキサイトできたのは、
破壊されたエアフォースワンから飛び出してしまった人々をさながらスカイダイビングのように救出していくシーン。
こういうベタなのがヒーローっぽくて良い。
アベンジャーズシリーズに共通のエンドクレジット後のおまけシーンももちろん健在。
『アベンジャーズ2』を観た後だと、
遠隔操作型のアイアンマンの登場はウルトロン登場への伏線になっていた気がする。

2015年8月23日日曜日

映画:『キャビン』

〜ストーリー〜
森の奥の別荘にやって来たデイナら5人の大学生。
地下室で見つけた日記に書かれた文言を読み上げた瞬間、
地中から死者が蘇り彼らを次々と殺害していった。
だが、これはとある目的のため謎の組織がひ仕組まれたものだった…。

一見よくあるB級ホラーかと思いきや、
その全てをとある目的のために謎の組織がコントロールしていた…という異色のSFホラー。
『死霊のはらわた』『CUBE』『IT』『アナコンダ』『ヘルレイザー』など、
様々なホラー映画へのオマージュやモチーフが数多く登場。
西洋ホラー映画祭りとでもいうべき作品となっている。
(ちなみに、監督はアメコミヒーロー祭り『アベンジャーズ』のジョス・ウィードン。)
したがって、ホラーそのものを楽しむというよりかは、
ある程度ホラー映画を観ている人が半分コメディのような感覚で、
登場するホラー映画当てゲームを楽しむのが最も正解な見方。
「古きもの」なんて言葉でピンとくるものがある人ならストーリー中盤でオチも何となく読めると思う。
何よりこの映画で一番驚くのは、
最終盤で登場するとある女優と、
デイナを演じる佐藤かよ似のクリステン・コノリーが、
出演時点で32歳という年齢なのに女子大生にしか見えないという美魔女ぶりである。
また、大学生のひとりを『アベンジャーズ』のソー役ですっかりおなじみのクリス・ヘムズワースが演じている。
何も知らずに観ると「あ、昔はこんな端役をしてたのね」と思うかも知れないが、
本作の出演は『マイティ・ソー』『アベンジャーズ』ですっかりスターの仲間入りした後である。

映画:『ロンドンゾンビ紀行』

〜ストーリー〜
育ててくれた祖父が入居する老人ホームの閉鎖を防ぐため、
銀行強盗を企てたテリーとアンディの兄弟。
無事200万ドルを手に入れ銀行を脱出すると、
街にはゾンビが溢れ出していた。
祖父を守るために兄弟は老人ホームへ向かう。

『ショーン・オブ・ザ・デッド』にオマージュを捧げているというホラーコメディ。
グロシーンはほとんどなく、
ゆっくり動く定番のゾンビと足の悪いお爺ちゃんの追っかけっこや、
生前頭に鉄板を入れていたため倒せないゾンビなど、
ゆる〜い笑いが延々と続く。
原題は『Cockneys VS Zombies』。
訳すと『(下町の)イギリス人対ゾンビ』といった感じで、
当たり前だがこちらの方が邦題よりも映画の特徴を的確に表している。

小説:フランク・ティリエ『シンドロームE』

〜ストーリー〜
元恋人が失明に至った謎の短編映画を収めたフィルムを追うリューシー。
脳と目を摘出され殺害された5人の遺体の身元を追うシャルコ。
2人の刑事が追う2つの事件は、
シンドロームEという言葉をキーに交差し始める…。

フランスの作家フランク・ティリエの作品で、
2011年にハヤカワ文庫より出版されたスリラー。
それ以前に出版されている『死者の部屋』の主人公リューシーと、
『タルタロスの審問官』『七匹の蛾が鳴く』の主人公シャルコがW主人公として登場している。
いずれの作品も心に傷を負っている主人公が猟奇殺人を追うストーリーで、
人間の心の闇がテーマとなっている。
非常に暗い話が多いが意外な犯人などサスペンス作品としても読み応えのある作品ばかり。
本作はこれまでの著者の作品と比べると国や時代をも超える壮大なストーリーが展開されているが、
根底にあるテーマは変わらず、
先の読めない展開に思わずページをめくる手が止まらなくなる。
上に挙げた3作品を先に読むことをお勧めするが、
繋がりはほとんどないので独立した作品として読むことが可能。
また『GATACA』という続編があるが、
本作を最後まで読むとこちらも読まざるを得なくなる憎い構成をしている。

2015年8月19日水曜日

小説:小野不由美『残穢』

〜ストーリー〜
ライターであるわたしは、
とあるマンションについての取材とルポの執筆を始めた。
そのマンションでは次々と怪奇現象が起こり、人がなかなか居着かない。
さらに、怪奇現象はマンションだけでなく隣接の団地にも発生していた。
わたしが取材を進めていく内に、
その土地にまつわる歴史と穢れの連鎖が明らかとなっていく。

『屍鬼』の小野不由美によるルポ風ホラー小説。
著者お得意のドロドロホラーが展開されるかと思いきや、
一応ルポの形式を取っているので、
文章が客観的で臨場感が感じられなかった。
また、次から次へと登場人物が現れるので、
ストーリーを把握するだけで精一杯になる。
根底にあるテーマは大変著者らしいと思うのだが、
他の小説と同じような恐怖感などを求めると少し肩透かしを食らうかも。
竹内結子・橋本愛主演で映画化が決まっているが、
案外映像の方がリアリティーを感じられて面白いかも。

2015年8月15日土曜日

映画:『グランド・イリュージョン』

〜ストーリー〜
謎の人物に集められた4人のマジシャン。
彼らはフォー・ホースメンと称してラスベガスでマジックショーを開催。
そこで、遠く離れたパリの銀行の倉庫から3百万ドルを盗み出す。
FBIのローズはインターポールのアルマと共に捜査にあたるが彼らの尻尾を掴む事ができず、
マジシャンの種明かしを生業とするサディアスに協力を依頼する。

『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグや、
『お買い物中毒な私!』のアイラ・フィッシャー、
『アベンジャーズ』シリーズでハルクを演じるマーク・ラファロをはじめ、
ウディ・ハレルソン、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマンら豪華キャストが集結したサスペンスアクション。
フォー・ホースメンがド派手なトリックで観客を楽しませながらFBIを翻弄する姿は爽快なもので、単純に視覚的にも楽しい。
無駄のないシナリオで中弛みがなく、
事件の意外な真相もそれなりにインパクトがあり、
初めから終わりまで飽きずに鑑賞できる。
細かい所をツッコミだしたらキリがなくなるが、
そういうディテールには目を閉じて。
正統派のエンターテイメント作品という感じを受けた。

映画:『プリズナーズ』

〜ストーリー〜
ペンシルヴァニアで工務店を営むドーバーは、
家族と隣家のバーチ一家と共にサンクスギビングデーを楽しんでいたが、
その最中、ドーバーの娘・アナとバーチの娘・ジョイが行方不明となってしまう。
すぐさま容疑者としてアレックスという青年が浮上するが、証拠不十分で釈放となる。
しかし、アレックスの何気ない一言で彼を犯人と確信したドーバーは、
自白を引き出そうとアレックスを監禁し拷問にかける。
その頃、事件を担当するロキ刑事は、
ふたりの無事を祈るキャンドルナイトで不審な男を目撃。
尋問を試みるが男はロキの追跡を振り切り逃走してしまう。
果たしてふたりの少女を誘拐したのは…?

ヒュー・ジャックマン、ジェイク・ギレンホール主演。
二転三転する先の読めない展開を、
被害者と加害者両方の立場から、娘の誘拐の被疑者や事件を担当する刑事とのスリリングな駆け引きがストーリーの面白さを加速させる、
見応えのあるサスペンス映画。
一見バラバラに見える一つ一つの事象が実は伏線であり、
事件の真相が明らかになるにつれ収斂されていく構成もお見事。
ただ、「愛する者を助けるためならたとえ犯罪にも手を染めるのか?」
というテーマを、
ヒュー・ジャックマン扮する元々善良であった市民が理性を失っていく様子を描くことで観客に突き付けようとしているようだが、
ここだけはイマイチ乗り切れなかった。
元々堅物過ぎて何かヤバそうな雰囲気を出している親父だったので、
こうなる事が至極当然の事のように受け入れられてしまううえ、
監禁や拷問があまりにも”やり過ぎ”でまったく共感できなかったのが原因。
狂気に陥った親父を演じるヒュー・ジャックマンはさる事ながら、
狂った親父に監禁される10歳児並みのIQしかない男アレックスを演じるポール・ダノの演技がすごい。

2015年8月14日金曜日

映画:『ピラミッドの呪い』

〜ストーリー〜
2013年、エジプト。
カイロで反政府デモの嵐が吹き荒れる中、
アメリカの考古学チームが地中に埋もれた三角錐のピラミッドを発見する。
そのドキュメント映像を撮影にやって来たテレビクルーと考古学チームは、
ピラミッドの内部へ進入するがそこで謎の生物の襲撃に遭う…。

原題は『The Pyramid』、邦題は『ピラミッドの呪い』というストレートなピラミッドもの映画。
最近流行りのPOVが8割、第三者視点が2割という中途半端な構成。
これだけでなく、設定・ストーリー、CGに至るまで何もかもが中途半端な作品。
おまけに、ひたすら画面が暗いのでほとんど何が起きているのか分かりにくく、
POVである事がそれに拍車をかける。
唯一良い点を挙げるとすれば、
ピラミッド映画では定石のミイラやスカラベを使用せずに観客へ恐怖を与えようという挑戦的な姿勢だが、
代わりに大層なものが出てくる訳ではない。
ちなみに、呪いらしい呪いも出てきません。
この作品にお金を支払うくらいなら、
ハムナプトラでも買うか借りるかした方が良い。

2015年8月12日水曜日

映画:『デッド・サイレンス』

〜ストーリー〜
故郷を離れ幸せな生活を送るジェイミーとリサ。
ある日、二人の元に差出人不明の操り人形が送られてくる。
その夜、夕食の買い出しから戻ってきたジェイミーが目にしたのは、
舌を抜かれ殺害されたリサの無残な姿だった。
故郷に伝わる腹話術師の伝承に犯人を探るヒントがあると考えたジェイミーは生まれ故郷へ車を走らせるが、
彼の周囲で次々と怪奇現象が起こり始める。

『ソウ』のジェームズ・ワンとリー・ワネルが2007年に製作したホラー映画。
とある女腹話術師と彼女が残した操り人形を巡る呪いの連鎖を断ち切るべく奔走する男のストーリー。
全体的に静かでダークなトーンでストーリーが進む中、
表情のない操り人形それだけでなかなかの雰囲気を醸し出しているが、
それが100体も並んでいるシーンはかなりのインパクトがある。
こけ脅しがない訳ではないが、
来るぞー!と分かるタイミングできちんと驚かせにくるので、
それほど心臓に悪い作品でもない。
真相が明かされるシーンでは、
ジェームズ・ワン、リー・ワネルお得意の高速伏線プレイバック→どんでん返しも堪能できる。
特別に面白いかと言われるとそうとは言い切れないが、
欠点らしい欠点もない”ど真ん中”なホラー作品。

2015年8月11日火曜日

映画:『ジュラシック・ワールド』

〜ストーリー〜
ザックとグレイの兄弟は、
両親が離婚調停を行う1週間の間、
叔母のクレアが勤めるジュラシック・ワールドに送られることとなった。
ジュラシック・パークでの事件から22年。
インジェン社を買収したマスラニ社は、
ジュラシック・パーク事業を引き継ぎジュラシック・ワールドを開園し、
1日に2万人もの集客を誇る人気を博していた。
更なる顧客満足度の向上とスポンサー集めのため、 
クレアはTレックスをベースに遺伝子操作を施し、
高度な知能と凶暴性を併せ持つ新種インドミナス・レックスを生み出したが、
ある日、インドミナス・レックスが檻から脱走。
これを機に園内のシステムは破綻をきたし、
2万人の来園者に命の危険が及ぶこととなる…。

2001年の3の公開から14年の年月を経て公開された『ジュラシック・パーク』シリーズ最新作。
今作も製作総指揮をスティーヴン・スピルバーグが勤め、
主演に『ガーディアンズオブギャラクシー』のクリス・プラットと、
『ターミネーター4』でケイト・コナーを演じたブライス・ダラス・ハワード。
シリーズを追うごとに失速する本シリーズだが、
遺伝子操作によって生み出された何でもアリの新種を登場させた事で、
いよいよジュラシック・パークというタイトルを借りただけの怪獣映画に成り下がってしまった。
それだけならまだしも、とにかくシリーズの伝統を崩す設定やストーリーのほころびのオンパレードとなっている。
○シリーズ全作を通じて緊迫感あるシーンを提供してくれたヴェロキラプトルを手懐けるという厨二病的設定。
○恐竜の位置を把握するのにGPSよりも目視を優先する無能な運営陣。
○建物の壁をやすやすと突き破る恐竜がいるのに、プテラノドンの群れに襲撃された後扉もない建物に避難しこれでエンディングまで安全を確保された来園者たち。
などなど挙げれば枚挙に暇がない。
Tレックスの圧倒的な存在感も、
迫り来るヴェロキラプトルの恐怖感も、
最新の恐竜に関する知見も得られない、
単なる怪獣大暴れ映画となってしまい非常に残念。
一見さんならそれなりに楽しめるだろうが、
シリーズに思い入れのある人ほどつまらなく感じるのでは。

映画:『ジュピター』

〜ストーリー〜
ロシアに生まれ、
アメリカの親戚の元で掃除婦として退屈な日々を送るジュピター。
ある日、とある病院で謎のエイリアンに襲撃されたところを、
ケインと名乗る男に助けられる。
ジュピターは宇宙を支配するアブラサクス家の母の生まれ変わりであり、
彼女の存在により3人の子どもの王位継承争いが勃発しているという。
ジュピターは地球、宇宙の秘密に関わる戦いに巻き込まれていく…。

『マトリックス』のウォシャウスキー姉弟監督、
主演に『ブラック・スワン』で主人公のライバルを演じたミラ・クニスと、
『G.I.ジョー』シリーズのチャニング・テイタムを迎え製作されたスペースオペラ。
様々な要素を散りばめるだけ散りばめて、
それらを全く活かしきれていない。
ヒロインが宇宙を支配する名家の人物の生まれ変わりであるというそもそもの設定すら必要かと思うほど。
アクションにそれほどの尺を割いている訳でもなく、
かと言ってドラマパートも陳腐だし、
完全に吊り橋効果だけで恋に陥る主人公たちの微妙な恋愛関係も退屈。
特殊効果についても特筆すべき点はなく、
むしろいくらSFアクションだからって音響が軽過ぎるだろうと思う。