2013年12月31日火曜日

映画:『マン・オブ・スティール』

〜ストーリー〜
幼い頃から他人とは違う能力を持っていることに苦悩していたクラーク。
ある日、彼はクリプトンという崩壊した星の生き残りであるという出自を知ることとなる。
その頃、クラークと同じく、クリプトン星の生き残りであるゾッド将軍が地球に襲来。
クリプトンを再興すべく地球人とクラークに戦いを挑む。

『ダークナイト』シリーズのクリストファー・ノーラン製作総指揮、
『300』のザック・スナイダー監督によるスーパーマン新シリーズ。

この作品は、スーパーマンについての知識や思い入れがないほど楽しめる映画である。
特に、
○本作のクラーク・ケントは33歳にして未だ自分探しをしているフリーター。
○街が崩壊して人々が危機に陥っても構わず敵と戦い続けている。
という2点についてはこれまでのスーパーマン像とはまったく異なる。
したがって、いわゆるスーパーマンを観たいと思って本作を鑑賞すると肩透かしを食らうだろう。
ただ、そうでない人も楽しめるかと言うと、それも微妙。
クラークが出自を見つけるまで1時間、
そこからなんやかんやがあって約15分、
ほとんどアクションがなく、
ひたすら33歳のおっさんのアイデンティティー探しと、
幼少期の思い出話を鑑賞しなければならず、非常に退屈。
そんな所は無駄に丁寧なくせに、
地球人とクリプトン星人が普通に英語で会話してたり、
いち新聞記者が辿り着いたスーパーマンの正体をアメリカ政府がいつまで経っても把握できてなかったりと、
適当な部分もまま目立つ。

続編の製作が決定しており、バットマンと共演するとの話もある。
前半のグダグダは次作では省けるため、
もう少し痛快なものになるかも知れない。
本作ではスーパーマンの弱点であるクリプトナイトや、
宿敵レックス・ルーサーが姿を見せていない。
この辺りとバットマンの絡みがあればそれはそれで面白そう。

2013年12月30日月曜日

映画:『パシフィック・リム』

〜ストーリー〜
突如現れた巨大地球外生命体KAIJU。
人類は人型兵器イェーガーを操り戦いを挑んでいたが、
次々と出現し進化し続けるKAIJUに苦戦を強いられ、
世界は滅亡の危機に瀕していた。
いよいよ最終決戦に臨まんとしたその時、
過去最大級のKAIJUが姿を現した…。

ギレルモ・デル・トロ監督によるロボット映画。
巨大ロボットで巨大怪獣と戦うというプロットが、
怪獣映画というよりは日本のロボットアニメを彷彿とさせる。
『インデペンデンス・デイ』とまったく同じストーリーで、
空軍とUFOの戦闘シーンの代わりに、
『トランスフォーマー』のプロレスが挿入されている、
といった感じの映画。
巨大ロボットと怪獣が画面所狭しと暴れ回るシーンを観て興奮する、
それだけの映画でありそれ以外を目的とした鑑賞はお断り。
ヒロインに菊地凛子、また、そのヒロインの幼少期を芦田愛菜が演じている。

2013年12月28日土曜日

映画:『YES/NO』

〜ストーリー〜
大恋愛の末に結ばれたジャックとケイト。
順調な新婚生活を送っているはずのふたりだったが、
ある日、ジャックが目を覚ますと、
彼は扉も窓もない部屋に幽閉されていた。
あるのは必要最低限の生活品と、
デジタル式のメッセージボード、
そして、「Y」と「N」のボタン。
やがて、少しづつケイトの秘密が明らかにされ、
ジャックは極限状態に追い詰められていく。
その頃、ケイトも同じタイプの部屋に幽閉されており、
自分の知らないジャックの一面を垣間見る事となる。

相手の秘密に関するクイズに答えながら、
間違うときっつい罰を与えられるという、
ダチョウ倶楽部も真っ青な部屋に閉じ込められた、
一組の新婚夫婦の様子を描いたソリッドシチュエーションスリラー。
この手の作品の割に、
こけおどし的な場面がほとんどなくグロ描写もほとんどない。
ちょっとだけハラハラドキドキしてみたいという時には良い映画だと思うが、
SAWやCUBE辺りが好きな人にとっては物足りないかも知れない。
とは言うものの、
物語をどう好意的に解釈しても理解不能な場面があったりで、
特別優れた作品というわけでもない。

2013年12月15日日曜日

映画:『鑑定士と顔のない依頼人』

~ストーリー~
世界的に有名な骨董品の鑑定士でありオークショニアであるオールドマン。
彼の元にクレアと名乗る女性から、
亡き父が遺した骨董品の数々を鑑定するよう依頼が入る。
彼女は広場恐怖症という精神疾患にかかっており、
オールドマンを公私に渡り翻弄する。
しかし、交流を深める内に愛が芽生え始め、ついにふたりは結ばれる。
クレアの病状も急速に回復し順調に見えたふたりの結婚生活。
しかし、それでもなおクレアには秘密があることをオールドマンは知る由もなかった…。

『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督が、
パイレーツ・オブ・カリビアンシリーズにおけるキャプテン・バルボッサの怪演が記憶に新しいジェフリー・ラッシュを迎え製作したミステリー。

ストーリーの全てが伏線。
全ての謎や鑑賞中に感じた違和感がラストのどんでん返しで見事に氷解される。
そんなサスペンスとしての構成の巧みさもさる事ながら、
登場人物が織り成す重厚な人間ドラマも見もの。
この辺りはさすがジュゼッペ・トルナトーレ監督。
半券の提示で2回目1000円というキャンペーンが行われているが、それも納得の出来。
ややネタバレになるが、プロットとしては『dot the i』に似た部分があり、
両作品ともオススメしておきます。

2013年12月1日日曜日

映画:『シェルター』

〜ストーリー〜
多重人格を否定する精神科医カーラは、
同じく精神科医である父からデヴィッドと呼ばれる男を紹介される。
デヴィッドは多重人格が疑われるだけでなく、
人格が交代する時に脊椎の構造まで変化するというあまりに特異な体質の持ち主であった。
彼の正体を暴くべく奔走するカーラであったが、
やがて彼女の周囲で不可解な出来事が起こり始める。

ジュリアン・ムーア主演のサイコホラー。
物語の中盤まではよくあるサイコサスペンスとして普通に観られるのだが、
時が経過するに連れてどんどんストーリーが破綻。
真相が明らかになっても他のシーンとの整合性が取れず、
気分がモヤモヤしたままエンディングを迎えてしまう。
最後のとあるシーンも普通なら驚きをもって迎えられるはずだが、
蛇足的で白々しく見えてしまう。

2013年11月29日金曜日

映画:『SPEC 結 爻ノ篇』


※ネタバレは避けていますが重要な場面について幾つか触れています。
鑑賞予定の方はご注意を。



〜ストーリー〜
城旭斎浄海により発動されたシンプルプラン。
全ての首謀者であるプロフェッサーJと目された彼女であったが、
当麻はふとした事をきっかけにJの真の正体を暴く事に成功する。
だが、Jの目的と残忍なやり口に怒りを覚えた当麻は、ついに自身のスペックを発動。
J、そして、セカイとの最終決戦に挑む。

テレビドラマから始まったSPECシリーズ、真の完結編。
これまでさんざっぱら張り巡らせてきた伏線は何だったのかと思うほど説明不足・未解明・矛盾している部分が多く、
観客の理解を置き去りにしたままストーリーが進んでいく。
そのくせ、特に向井理扮するセカイを中心にクサイ・冗長な台詞回しが多くじれったさを感じる事もある。
ストーリーもろくに飲み込みきれないまま暗い雰囲気でストーリーが進んでいくため、一部を除いてお笑いシーンも全く笑えない。
お葬式なのに談笑しまくってる参列者に「空気読めよ…」という気持ちになるのと似たような感じ。
映画としての出来は最低クラスだと思う。
「ドラマは良いが映画はダメ」な堤監督のある意味最高傑作。
最後のシーンの意味も、ケイゾクの事をある程度知っている人でないと、絶対に分からない。
個人的にはアリだけど、知らない人にとっては蛇足以外の何物でもない。

こんなどうしようもない作品なのだが、
一番の見所は当麻を慕うスペックホルダー達が集結する場面。
やはりSPECの魅力の一つは個性的なキャラクター達なのだという事を改めて認識した。
また、前編に引き続き、北村一輝・渡辺いっけいの怪演が素晴らしい。
特に渡辺いっけいのメンインブラックのゴキブリ星人並のコミカルな動きに注目。
そして、これは賛否両論あるようだが、
個人的には当麻と瀬文が迎えた結末は一つのかたちとして納得できるものではあった。

2013年11月6日水曜日

映画:『SPEC 結 漸ノ篇』

※注意1:ドラマの中の専門用語がたくさん出てきますが、意味はスルーします。
※注意2:結構ネタバレ含んでいます。



~ストーリー~

世界のブレイン達は、
スペックホルダー殲滅のための計画、
シンプルプランの本格発動を決定した。
しかし、その裏に各国の思惑を感じ取った卑弥呼と名乗る日本の代表者はそれに反対の意を表明。
罵詈雑言を浴びせる他国のブレイン達を、セカイと同じ能力で消し去った。

一方、セカイは白い女(大人の潤)とともに、
現在のバブルをリセットするタイミング、
そして、その障害となりうる当麻が死ぬ瞬間を虎視眈々と待ち構えていた。

その頃、未詳のメンバーは、
病院から消えた里子と潤の行方を追っていた。
しかし、世界の動きに異変を感じた野々村は、
シンプルプランの発動を阻止すべく、単独行動に移った。

各国の思惑と暗躍、
当麻の両親に隠された秘密、
全ての鍵を握るプロフェッサーJという女、
当麻をはじめ未詳のメンバーの命を狙う謎のスペックホルダー。
それらが帰結する先にあるものとは…?


『ケイゾク』の続編として始まったテレビドラマSPEC。
その完結編、の前編。
さんざん広げまくった風呂敷をどう畳んで、
さんざん張り巡らした伏線をどう回収していくのか。
それらを期待して鑑賞する訳だが、
結論から言うと、
今回は"漸ノ篇"ではなく"係長ノ篇"、
そして、映画と同じ料金を支払って真の完結編である爻ノ篇の予告編を観に行った、
という表現が正確かも知れない。

初めはやたらとシーンの切り替わりが多い映画だなぁと思っていたけど、
これは恐らく伏線を全て回収しようとするとあまりに時間が長くなってしまうため、
とにかく本当に必要なシーンだけを詰め込もうとした結果だと思われる。
それでも長くなってしまうため、
いっそ丁度良いところで真っ二つに切って前後編にしてしまおう。
製作サイドの考えはこんなところだろうと思う。
映画の構成として、当然主役ふたりの活躍を後半にたっぷりと残した方が盛り上がるので、
前半で裏の主役とも言える野々村係長の活躍がクローズアップされるのは必然。
それを1本の映画として纏めたなら、そら"係長ノ篇"になりますわな。

それにしてもびっくりしのは、
映画本編終了後に爻ノ篇の予告が流れた後、
エンドクレジットもなく映画が終了したこと。
本当に真っ二つ!


上記の通りなので、
ストーリーとしてはとにかくぶつ切りな感じを受け、
決して出来が良いと言えるものではない。
長めのアクションシーンがもうワンシーンあれば、
ストーリーにメリハリがついたと思う。
幾つかの謎は解決されたが、また新たな謎も加わり、
それを爻ノ篇でどう終わらせるのかは楽しみではある。
そう、なんだかんだでこれだけ金のかかった壮大な予告編を見せられると、
否が応でも後編を観たくなってしまう。
その点で、映画の構成としても商業的な戦略としても、成功している作品と言えるかも知れない。
SPECらしいギャグシーンも結構あるのだが、
ストーリー自体が結構ダークなため、
あまり笑える雰囲気ではない。
そんな中で光っていたのは、
バナナ好きの医師を演じた渡辺いっけいと、
まさかの復活を遂げた吉川を演じた北村一輝の両名優。
また、ラッパーのバイク便など忘れかけていた小ネタも、
ドラマからのファンなら笑えない事もない。
小ネタと言えば、
香椎由宇演じる水を操るスペックホルダー、城旭斎浄海。
奇抜な外見とキャラ設定もさることながら、
"ジョジョ立ち"で未詳のメンバーの前に現れ当麻にそれを突っ込まれるという登場シーンがあるのだが、
よくよく考えると名前が城旭斎浄海(ジョウキョクサイジョウカイ)、つまり、ジョジョ。
先述したアクションシーンをもうひとつ加えるとするなら、
彼女に別の見せ場を与えても良かったと思う。

香椎由宇と言い、天の浅野ゆう子と言い、
よくこんなキャラOKしたなぁと思う。

そもそも観客の対象としているのが、
ドラマシリーズからのファン限定、一見さんお断りの作品だが、
せっかく天まで観たなら本作も観るべきだし、
本作を観たら後編を必ず観たくなると思う。


>>>後編はコチラから

2013年11月3日日曜日

小説:今邑彩『蛇神』

〜ストーリー〜

昭和52年。
蕎麦屋の若女将である日登美は、
住み込みで修行中であった少年に父と夫と息子を殺害されてしまった。
そんな折、彼女の本当の出生地であるという長野県日の本村から従兄弟を名乗る男・聖二が現れた。
彼は、彼女に村に戻ると共に、旧くから伝わる祭の巫女を務めて欲しいと要請。
日登美はこれを受け娘・春菜を連れて日の本村に赴いた。
だが、祭が近付くに連れて、
日登美は村人が隠そうとしている何かに違和感を感じ始める・・・。

時は流れ、平成10年。
恋人からプロポーズされ両家の顔合わせの日を迎えた日美香。
だが、女で一人で彼女を育ててくれた母はその日交通事故で帰らぬ人となってしまった。
失意の中、遺品を整理していた日美香は、日本の奇祭を集めた1冊の本を発見する。
それをきっかけに、日美香は、
自分の本当の母は日登美という名前で、
長野県の日の本という名の村で巫女をしていた事、
そして、彼女が殺人事件に巻き込まれ村に戻り、
その村を再び逃げるように出て行くまでの間に何かが起きた事を知る。
事件の真相とは?自分の本当の父親は誰なのか?
日美香はそれらを探るべく、日の本村に足を踏み入れる・・・。


深田恭子・北川景子主演で映画化の『ルームメイト』や『よもつひらさか』などを著作に持つ今邑彩のサスペンスホラー。
山奥の秘境の村に脈々と受け継がれる風習と奇祭に時代を超えて巻き込まれた女の姿を描いた小説。
ただ、ホラーとしては特別恐ろしい場面がある訳でもなく
サスペンスとして見てもオチが予測しやすくて、
イマイチ読み応えがなかった。
序盤にやたらと天照大神やヤマタノオロチがどうとかこうとかと詳しく解説が入るので、
伝奇小説の要素もあるのかしらと思ったけどそうでもない。
何もかもが中途半端な印象。
同じ題材なら、小野不由美の方が5倍は怖くて真相もビックリな小説が書けると思う。
元々この人の作品って、直球(ホラーなら怖がらせることやビックリさせることに主眼を置く)よりかはやや変化球よりの作品が多いけど、今作においてはちょっと悪い方に色が出てしまったと思う。

2013年11月1日金曜日

漫画:カネコアツシ『WET MOON』


〜ストーリー〜
1950年代、日本。
腐敗した警察組織の中で頑なまでに正義を貫こうとする刑事・佐田は、
自分がすんでのところで取り逃がした殺人犯・小宮山喜和子の逮捕に異常とも言える執念を燃やしていた。
しかし、その捜査中に頭に負った傷により、彼の意識や記憶は時折欠落を見せていた。
ある日、殉職したとある刑事から、警察組織の腐敗を暴くメモを託された佐田は、
身内である刑事達から追われる身となってしまう。
時を同じくして彼の目の前に現れた伝説の情報屋・玉山。
彼は小宮山喜和子が持つとある情報を探しているという。
現実と虚構が入り混じる中、
佐田は小宮山喜和子に辿り着き、
事件の真相を暴く事ができるのか…?

『バンビ』『SOIL』のカネコアツシ最新作。全3巻で完結。
ドロドロとした50年代の闇の街の雰囲気と、
カネコアツシ独特のペンのタッチがとてもマッチしていて、
ストーリーのおどろおどろしさに迫力を加えている。
時間軸のズレや佐田が時折見る妄想が読む者に混乱を引き起こし、
それが続きを読みたくなる原動力となりいつの間にかストーリーにぐいぐい引き込まれてしまう。
ただ、繰り返しストーリーを読み直したり、
ある程度時間軸を自分で整理しながら読み進めないと、
一言で「よう分からん話」で済ませられる内容でもある。
好き嫌いはハッキリ分かれると思う。
オチについても複数の解釈の余地が残されている点からして、
映画で言うなら『マルホランド・ドライブ』や『メメント』なんかが好きな人はハマるかも。

2013年10月14日月曜日

映画:『フッテージ』

〜ストーリー〜
ノンフィクション作家のエリソンは、
新作の執筆のために家族を連れ、
かつてある一家が殺害された一軒家に移り住んだ。
引っ越しの最中、エリソンは屋根裏部屋で8ミリフィルム=フッテージを見つける。
そこには時代も場所も異なる一家が様々な手段で惨殺される様子と、
それを見つめる醜い仮面の男の姿が収められていた。
事件の謎を解き明かそうとするエリソンだったが、
やがて彼の身の回りで不可解な現象が起こり始める。

『トレーニング・デイ』『ガタカ』のイーサン・ホーク主演のホラー映画。
『パラノーマル・アクティビティ』をPOVなしでとってみましたという感じの作品だが、
ストーリーに目新しさがある訳ではなく、
暗闇をうろちょろして何やってるのかよく分からないシーンが多いため、非常に退屈。
一番の見せ場が夫婦喧嘩のシーンである事が本作の一番恐ろしいところである。
途中に何度か現れるエンディングに向けての予兆のようなシーンも蛇足で興醒め。
しかし、アメリカでは興行収入1位を記録し、続編の構想があるらしく、
アメリカってこんな映画が好きだしそれを商売に繋げるのが上手いよなぁ、
と映画本編以外の部分に感心。

2013年10月13日日曜日

映画:『オブリビオン』

〜ストーリー〜
近未来、地球は異星の生命体スカヴによる侵略を受けた。人類は何とかこれを退ける事に成功したが、核兵器の使用により地球は荒廃し人類が棲息できない地となってしまった。
宇宙に逃げ延びタイタンへの移住を目論む人類は、海水から核融合に必要なエネルギーを抽出するマシーンを設置。
ジャックはスカヴの残党と戦いながらマシーンを保全する任務に就いていたが、5年前の記憶を消去されていた。それでもなお残るかつての記憶、荒廃したはずの地球に残された自然、数々の不可解な現象に違和感を覚えながら・・・。
ある日、謎の飛行物体が地球に墜落。そこには彼が毎晩夢に見る女がいた。飛行士である彼女のフライトレコーダーを回収するために本部に無断で出撃したふたりは墜落現場で襲撃される。
ジャックが目覚めた時、そこにはいるはずのない侵略戦争の生存者がいた・・・。

トム・クルーズ主演のSFアクション映画。
SF映画ファンなら「この場面ってあの映画に似てるな」というシーンが満載なのだが、
全体的にはスッキリまとまっていると思う。
最近のSF映画というとリアリズムの台頭があるのか、
近未来ものだったり荒廃した未来都市を舞台にしたものが多くて、
本作のように白を基調とした未来のテクノロジーを全面に押し出したSF映画が本当に減っている気がする。
この点においてだけでもなぜだな好感が持ててしまう。
中盤から終盤にかけて幾つかのどんでん返しもあり、
普段SF映画を観ない人こそ楽しめる作品になっているのではないか。
ただ、ラストシーンが必要なのかどうかについては大いに疑問の残るところではある。
個人的には無くても良かったかなと思う。

2013年8月19日月曜日

映画:『LOOPER』

〜ストーリー〜
30年後の未来から送られてくる人間を殺害するルーパー。
その一人であるジョーは、日々転送されてきた人間を銃で撃ち、稼いだ金でクスリと女を買う自堕落な生活を送っていた。
しかし、ある日、いつも通り仕事を済ませようとした彼の目の前に、30年後の自分が転送されてきた。
不意を突かれ逃げられたジョーは、組織からの制裁を恐れ、
未来の自分を殺害するために画策するのだが…。

『G.I.ジョー』『インセプション』『ダークナイト ライジング』など近年活躍目覚ましいジョゼフ・ゴードン=レヴィットと、ブルース・ウィリスが共演した近未来SFアクション。
映画の設定を確認しておくと、

◇2044年。アメリカは経済が破綻しており住民の多くがスラムに住むか浮浪者となっている。警察もほとんど機能していない。逆にフランスや中国はおおいに発展している。また、人口の10%に念動力が発動している(と、言ってもライターを宙に浮かせるくらいのもの)。
◇太陽光で動く車や空飛ぶバイクもあるにはあるがボロボロでDIY感満載(例えば、車はソーラーパネルもボンネットにパネルを貼り付けただけのものであるとか、バイクのエンジンボタンがちゃちいプラスチック製のボタンだったり)。
◇30年後にはタイムワープの技術が完成しているが、政府は使用を禁じており、犯罪者が邪魔者を消すために秘密裏に使用している。
◇30年後から転送されてきた人間を殺害するのがルーパー。ギャラは転送された者の背中に貼り付けられた銀の延べ棒。
◇ルーパーが契約を打ち切られる時は未来の本人が送られてきて、ギャラも金の延べ棒に変わる。これをループを閉じると呼ぶ。
◇近未来では"レインメーカー"と呼ばれる男が恐怖政治を敷いており、ループを閉じる事も積極的に行っている。
◇未来のジョーは愛する妻の殺害をなかったことにするために、30年前にはまだ子どもであったレインメーカーを殺害し未来そのものを改変しようとしている。

と、こんな感じで、
『バタフライ・エフェクト』『X-MEN』『ターミネーター』など、ありとあらゆるSF映画の要素をごちゃ混ぜにして、
最後に『ダイ・ハード』並のブルース・ウィリス無双で味付けした作品。
結果、まとまってはいるがパンチに欠ける味になってしまった、という感じを受ける。
余分な具材を省けば他の具材が引き立って深みのある味に仕上がったかも知れないけど、
そうなったらそうなったでこの映画の魅力を無くす事になりそうなので判断に非常に迷う。
だったら詰めれるもの全部詰め込んどけ!と考えるのはあながち間違いではないかも知れない。
不思議と完食はできてしまうし。

2013年8月14日水曜日

映画:『ワールド・ウォーZ』

~ストーリー~
人間が凶暴になる謎の感染症が世界各地で広まりを見せていた。
ジェリーはかつて国連に所属し、
内戦や紛争解決のエキスパートとしてその任に就いていたが、
現在は引退し愛する家族と心穏やかな生活を送っていた。
しかし、家族と出掛けたマンハッタンで、
人間が人間を襲い、襲われた人間がまた他の人間を襲うという光景を目の当たりにする。
何とか被害から逃れる事のできたジェリーはかつての同僚から要請を受け、
家族の安全と引き換えに原因究明のために再び"戦地"に身を投じる。

ブラッド・ピット主演のゾンビ・パニック映画。
原作は「Z(=ゾンビ)戦争」を生き延びた人々へのインタビューという形式をとったマックス・ブルックスの同名の小説。
ゾンビそのものの恐怖よりも、
ゾンビの発生によるパニックとそれに伴う終末的世界を描く事に重きが置かれており、
パニック映画としての見方をした方が正解かも知れない。
血飛沫が上がるとかゾンビが内臓をくちゃくちゃと喰らうようなグロいシーンも皆無。
本作のゾンビは『28日後...』以降の「走る感染者」設定を踏襲しており、
走るだけでなく獲物に噛み付く時には飛びかかっちゃうほど元気一杯!
そんなゾンビが大量発生する場面は、
まさにゾンビ渦(禍)という言葉そのもの。
特に、大量のゾンビか壁をよじ登り街に侵入するイスラエルでのシーンは、
どうやって作ったのかが全く分からないほど無数のゾンビが出現し、
大迫力かつ本作の全てを象徴するシーンになっていると思う。

ただ、引っかかる点も幾つかあって、
まず、登場人物達の心理描写が弱い。
例えば、親がゾンビになり命からがら逃げた子どもはその後何もなかったかのように振る舞っているし、
家族の所在が不明になった主人公にしても一瞬悲しむだけ。
他にも家族や故郷を失ったという人物も出てくるのだけどほとんどが一言のセリフだけで終わっている。
この辺りを丁寧に描けば物語により深みが生まれただろうと思う。
ゾンビ映画愛好家の中には、
ゾンビ映画というのはグロいシーンを楽しむものではなく、
ゾンビ渦の発生により極限状況下に置かれた人間模様や心理を観るための映画という考え方をする人がいるくらいである。
その意味からいっても単なるパニック映画に留まってしまっている点が非常に残念。
また、アメリカが世界をどう見ているかが何となく見え隠れするようで、そこが気になる人もいるかも知れない。
例えば、発生源の一つであるとされる韓国の村は、いつの時代のどこの未開拓地だよと思うほど鄙びた描かれ方をしている。
上述のイスラエルのシーンにしたって、
せっかくイスラエルがアラブの難民を受け入れてやったのに、
野蛮に歌なんか大声で歌うから音に敏感なゾンビが寄ってきちゃった、とでも言わんばかり。
ラストでは、ロシアの事を解決策が見つかったにも関わらず戦いを続けるアホ国家扱い。
あー、きっとアメリカってそういう風に世界を見ているんだなぁ嫌だなぁと思う人も中にはいるはず(考え過ぎ?)。
あと、ド派手なシーンを中盤までに集約してしまう竜頭蛇尾的な構成も最終的に本作の評価を下げる原因になり得るのではないかと思う。
ゾンビが大量発生するシーンが前半に固まっているため、
後半の飛行機のシーンやある施設でのシーンはそれと比較してどうしても見劣りしてしまう。
その低くなってしまったままのテンションでエンディングを迎えるため、
何となく物足りないまま劇場を後にすることになる。
普通の映画ならやっぱり終盤に一番面白い所を持ってくるじゃないですか。
こういう映画の作りはパニック映画には結構ありがちで、
例えば、『デイ・アフター・トゥモロー』という映画の場合、
一番の見所であるブリザードで街がどんどん凍っていくシーンが早い内に訪れるので、
その後屋根から転げ落ちそうになるとかオオカミに襲われそうになるシーンが地味に見えて仕方がない。
え?これで終わり?となってしまう。

とは言え、お金がかかっているだけあって、
エンターテイメント性は十分にあるので、
映画でワクワクドキドキしたいという方にはオススメします。

2013年7月11日木曜日

映画:『アウトロー』

~ストーリー~
ピッツバーグでライフルによる無差別銃撃事件が発生した。
現場に残された証拠から、警察はすぐさま元陸軍のスナイパー、ジェームズ・バーを逮捕する。
取り調べの中でバーは「ジャック・リーチャーを呼べ」というメモを刑事と検事に渡す。
リーチャーは元憲兵隊捜査官で、現在は流浪の旅をしていた。
だが、リーチャーがピッツバーグに到着した時、
バーは同じ部屋に勾留されていた男たちから暴行を受け、昏睡状態に陥っていた。
リーチャーは、バーの無罪を信じる女弁護士と共に事件の真相を追う。

トム・クルーズ主演のクライムアクション。
前半までは残された手がかりから事件の真相を追うサスペンス要素に、
トム・クルーズ無双とでも言うべき肉体アクションが合わさって、
それなりに興味を持って鑑賞できるものの、
何の驚きもない事件の黒幕があっさりと登場した瞬間から、
ご都合主義的な展開が続く単なる泥臭いアクション映画に成り下がってしまった。
最後までサスペンス要素を引っ張れば良かったのに・・・。

2013年6月23日日曜日

映画:『ダークナイト ライジング』

~ストーリー~
稀代の犯罪者ジョーカーがゴッサムシティを恐怖に陥れてから8年の月日が流れた。
犯罪者を厳しく取り締まるデント法により、ゴッサムシティの犯罪率は激減していた。
だが、その秘密を知るウェインは身も心もボロボロのまま屋敷に引き籠り続けていた。
また、ゴードンも犯罪のないゴッサムシティではもはや「過去の人」であった。
だが、ふたりはある事をきっかけにベインという男がゴッサムシティを再び恐怖に陥れようとしている事を知る。

事前にビギンズとダークナイトの鑑賞は必須。
ストーリーの深さだけならダークナイトに軍配が上がるかも知れないが、
観客の感情を動かすという意味では本作の勝ち。
3部作の締め括りとして、これ以上ないものになっていると思う。
実際映画館にて上映終了後の観客の反応も興奮冷めやらぬといった感じの人が多いように思われた。
これは、結局のところ、バットマンがヒーローであるという事に尽きる。
どれだけ絶望に陥っても何度でも立ち上がって、最後には街を救ってくれる。
その姿に観客は共感し、主人公と同じ時の流れと感情を共有し、最後に悪をやっつけた気分になり、スッキリして帰る。
ヒーローものの醍醐味であり、本作はこれをとことん見せつけてくれる。
よくよく考えるとダークナイトは話は巧いけどこれがない。
ひたすらバットマンを突き落としていく。
しかし、本来のバットマンが上記したような英雄譚である事を考えると、
ダークナイトですら今作の前座にしか見えてくるからあら不思議。
とは言え、どちらが良いとか悪いとかの問題ではなく、
そもそもの性質が異なる作品であるという事だけなので、
いよいよシリーズがラストを迎えるという事で素直に鑑賞すればOK。
ただ、絶望の見せ方が半端ないのと、伏線がものすごく多いのと、
核から独裁政治からアメリカのテロ対策まで含まれているテーマが多過ぎるため、非常に疲れる。
実はアクションの数はかなり控えめなのだが、
ラスト20分のバトルは3部作の集大成とも言えるほどの大迫力。
キャットウーマンがくだんのバットマン専用バイクに乗って街中でバットモービルとチェイスするところなんてニヤニヤが止まりません。

新キャストとしては、
キャットウーマン役のアン・ハサウェイはミシェル・ファイファーに劣らず十分魅力的だったし、
『インセプション』からの登用組である、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット(ディカプリオの相方だった人)、マリオン・コティヤール(ディカプリオのトラウマである妻を演じていた人)、トム・ハーディ(変身が得意だった人)らにそれぞれ大変重要な役柄が与えられており、
『インセプション』ファンなら違った意味でも楽しめると思う。

映画:『トータル・リコール』

~ストーリー~
21世紀末に勃発した戦争により、
人類は富裕層のブリテン連邦と貧困層のコロニーに分かれて住む事となり、
地球の真反対に存在する2つの地はエレベーターで繋がれていた。
マイサイアスを中心とするコロニーの住民はブリテン連邦の圧政からコロニーを解放しようと連邦に対しテロ活動を仕掛けていたが、
連邦の代表コーヘーゲンはそれに対しロボット警官シンセティックの増産によりますますコロニー政策を厳格化していった。
シンセティックの製造工場で働くダグラスは毎晩自分が別の人間であるという夢に苛まれていた。
ある日、ダグラスは、夢の正体を探ろうとトータル・リコール社に足を踏み入れる。
だが、そこに運悪く警官隊が現れ、彼は拿捕されてしまう。
その瞬間、ダグラスは彼を取り囲む警官たちを次々となぎ倒し、トータル・リコール社から脱出したのだった。


サイバーパンク小説の第一人者、フィリップ・K・ディックの『追憶売ります』が原作、との説明より、
シュワちゃんとシャロン・ストーン主演の90年代を代表する(?)SF映画『トータルリコール』のリメイクと説明した方がピンとくる作品。
フィリップ・K・ディックの作品は未来世界の日常生活を描いた割と地味な小説が多くて、
映画化される場合は設定だけを頂いてド派手なサイバーパンク映画にされる事が多い。
90年版も多分に漏れず、おばちゃんの顔がパッカーンと開いたらシュワちゃんだったり、目玉がビヨーンと飛び出るシーンとか、コメディチックな要素も含んだド派手なSFアクションだった。
その意味でもシュワちゃん版映画のリメイクと言った方が実は正解。

ただし、こちらはシリアス路線。
基本的な設定が幾つか変更されており、
製作サイドはリアルを目指した…とか言ってるけどストーリーなんてあってないようなもん。
一応観客を驚かせようとする仕掛けは数カ所あるものの、
サイバーパンクをよく観る人ならありきたりな仕掛け。
むしろ、90年版のおっぱい3つミュータントや、顔パッカーンおばちゃん(←ただし、これは一捻りあり)を再現してる事の方にビックリ。
細かい事を言えば、工場の同僚の設定や、リコール社を勧めた同僚の設定なんかをきちんと作っておて線に忍ばせとけばちょっとは捻りの効いたストーリーになったのではと思う。

ただ、この映画はストーリーなんてどうでも良くて、アクションを楽しむためのもの。
体感時間で上映時間の8割以上。本当にアクションしっぱなし。
カーチェイスや複雑に交差するエスカレーターのシーンも良いけど、
個人的にはケイト・ベッキンセールがあのキレイなお顔を鬼の形相に変えて、
コリン・ファレルをボッコボコにしてるのが一番痛快だった。
『アンダーワールド』でとった杵柄?

2013年6月18日火曜日

映画:『エスター』


〜ストーリー〜
ある家族がエスターという女の子を養子に迎えた。
エスターは聡明で義妹ともすぐに仲良くなり、
家族に馴染むのも時間の問題と思われた。
しかし、エスターは家族に牙を剥き、さらに父親を誘惑するようになる。
恐怖を感じた家族はエスターの過去を調べる内に驚愕の事実に突き当たる…。

とある少女がひとつの家族を恐怖に陥れる様を描いたスリラー。
それほど有名なキャストは出演していないが(強いて言うならピーター・サーズガードくらい?)、
実は製作にジョエル・シルバーとレオナルド・ディカプリオの名が並んでいる裏方の豪華な作品。
それが関係しているのかどうかは分からないけど、
エスター役の子役の怪演と堅実なシナリオ構成があいまって面白い作品に仕上がっている。
終盤のどんでん返しもなかなかのインパクト。
DVDのジャケットにはエスターの顔がものすごく怖い顔で映っているけど、
劇中では可愛らしい女の子。

2013年6月13日木曜日

映画:『CURE』


〜ストーリー〜
胸元をXに切り裂くという手口の連続殺人が発生。
いずれの事件も犯人はすぐに捕まり犯行を認めるものの、
動機がはっきりしないうえに犯人同士に何の関連性もなかった。
刑事・高部は事件を捜査を進める内に間宮という容疑者に行き当たるが、
彼の持つ特殊な能力に高部自身も影響を受け始める…。

黒沢清の出世作であり、和製スリラーの金字塔的作品。
何かと説明不足な所が多い作品だが、
わざと考える余地を与える作りにしている感じがする。
デヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』なんかが好きな人なら十分にハマれると思う。
役所広司、萩原聖人、うじきつよし、中川杏奈ら主要キャストをはじめ、
出演者の抑えた演技が映画の雰囲気にマッチしていて、
全編を通して漂う不穏な空気が観ている者の緊張感を引き立てる。
1997年と古い作品だが、現代の感覚でも十分鑑賞に耐え得る作品。

映画:『REC ザ・クアランティン』


〜ストーリー〜
TVレポーターのアンジェラは、
消防署を取材中、出動がかかった消防士達と共にとあるアパートへ向かう。
そこでは奇声を上げながら暴れる血まみれの老婆がおり、
ひとりの消防士が噛みつかれて危篤に陥る。
だが、それと同時にアパートは警察、果ては軍隊により閉鎖されてしまう。
一行はアパートから脱出しようと試みるが、
噛みつかれた人間が次々と他の人間を襲い始める。

スペイン産ゾンビ映画『REC』のハリウッドリメイク版。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』以降時折作品が作られるPOV系ホラー映画と、
『28日後』以降の"走るゾンビ"映画をミックスさせたような作品。
ストーリーとしてはありふれた展開で特筆すべき点はない。
前半の消防署のシーンがやたら長くて退屈なのと、
暗い場面が多くて何やってるか分からない事がたまにある(これはPOV作品の仕方ない部分ではあるが…)点を除けば、
そんなにエグい場面もなくそれなりに楽しめると思う。
上記の作品や『クローバーフィールド』が好きな人なら観て損はないだろう。

映画:『16ブロック』


〜ストーリー〜
ベテラン刑事ジャックは夜勤明けのある日、
上司に呼び止められある仕事を押し付けられる。
それは、16ブロック先の裁判所まで証人を護送するだけの簡単な仕事…のはずだった。
だが、その証言は警察の不正を暴くものであり、
それを恐れた同僚達から襲撃を受ける事になる。

ブルース・ウィリス主演のクライムアクション。
ストーリーとアクション自体は凡庸なもので特筆すべき点はないが、
モス=デフが演じる黒人成年とジャック刑事のキャラクター造詣がしっかりしており、
その二人の掛け合いが丁寧に積み重ねられた末に訪れるエンディングでは爽やかな感動を得られる。
クライムアクションではあるがむしろドラマパートを重視して観賞するのが正解かもしれない。

映画:『ブラックサイト』


〜ストーリー〜
FBIのサイバー犯罪捜査官ジェニフアーはとある連続殺人事件を追っていた。
犯人は生きた被害者が殺人ギミックに嵌められている様子をインターネットでリアルタイムにローミング、
その動画のアクセス数が増えるほどギミックが発動していくという残虐な手口を取っていた
捜査を続けていく内に犯人像に近づくジェニフアーであったが、
犯人の魔の手はやがて彼女の家族に及び始める。

ダイアン・レイン主演のサスペンス映画。
SAWシリーズを彷彿とさせる殺人ギミックのインパクトもさることながら、
本作の肝は興味本位でサイトにアクセスする"無名"の人々の"無意識"の悪意が被害者を死に至らしめるという仕掛け、この一点に尽きる。
これが時限爆弾的な緊迫感をもたらすスパイスとなって、作品に味わいを加えている。
テンポも良いのでサクッと変わったサスペンスが観たい気分になった時にオススメ。

映画:『イントルーダーズ』


〜ストーリー〜
スペイン人の少年がある物語の執筆を始めた。
それと時を同じくして、少年の周りには顔のない怪人が夜な夜な現れるようになる。
悪魔憑きも疑われたが、いつしか少年とその母親は行方をくらましてしまう。
数十年後のイギリス。
ある少女が少年の書いた物語を発見する。
そして、それをきっかけに、再び顔のない怪人が現れ、少女を脅かすようになる。

過去のスペインと現在のイギリス。
異なる2つの時間と場所で顔のない怪人に怯える少年と少女。
「彼らは単に精神を病んでいるのか?それとも顔のない怪人が実在するのか?」を軸に、
2つのストーリーがクロスオーバーしていく。
決して派手さはないが、伏線はきちっと回収されるし、
謎が解明されてからもう一捻りあり、丁寧で堅実な作りが光る作品。
主演はクライブ・オーウェン。
わざわざDVD借りて観るほどの映画でもないと思うけど、
深夜テレビやCATVで放映されている分には見ても損はしないと思う。
最近iTunesStoreが見逃した映画や劇場未公開作品流してくれるので助かる。

映画:『第9地区』


ヨハネスブルクに1機の巨大なUFOが出現した。
その内部には飢餓で苦しむエイリアンがおり、
地球は彼らを難民として受け入れる事を決め、
第9地区と呼ばれる地区に隔離する事となった。
月日が流れ、第9地区は一大スラムと化し、また、犯罪の温床ともなっていた。
これを危険視した地球はエイリアン達を更に僻地へ移送しようと、
特殊機関MNUによる強制退去に乗り出す。
その責任者に命ぜられたヴィカスはある任務の最中、
エイリアンが所持していた液体を浴びた事から、
身体が徐々にエイリアン達との同質化していき、
かつての仲間から追われる身となる。

身体がエイリアンと同質化していくという設定が一見キワモノに思われるが、
マイノリティを監視する立場の人間が一転、マイノリティを助けるための戦いに身を投じるというサイバーパンクの基本プロットのひとつを現代に近い時代設定で表現したSF作品。
アメリカやヨーロッパでは既に摩擦を引き起こしている移民問題を彷彿とさせる場面が多数あり、
"見かけ"よりは色々な事を考えさせられる作品。
主人公の心境の変化も丁寧に描かれており、
決してハッピーエンドとは言えないラストシーンには、
何とも言えない哀愁が漂う、余韻の深い作品。

2013年6月12日水曜日

映画:『ムカデ人間』


〜ストーリー〜
シャム双生児の分離手術の名手として名を馳せる外科医ハイター博士。
彼には密かな野望があった。
それは、別々の人間の口と肛門を繋ぎ合わせてムカデ人間を生み出す事だった。
ある日、博士の自宅に遭難した女性旅行者が2人助けを求めて現れる。
彼女らを監禁した博士はもう一人日本人男性を監禁し、
禁断の手術に踏み出すのだった…。

知る人ぞ知るグログロカルトムービー。
手を出したらダメだ…と思いつつ手を出してみたら、やっぱり後悔した…。
荒唐無稽な内容ながらも妙に説明も描写も丁寧なうえ、
ムカデ人間完成後は凄惨の一言。
だって、3人の人間を口と肛門で結ぶっていう事は、
後ろ2人の食事は…言わずもがな、である。
SAWシリーズとは違って生理的なところをエグってくるグロさ。
間違っても淑女の皆様は手を出してはいけないし、
グロ耐性あるぜ!という紳士の皆様でもお腹いっぱいの時には観ない方が良い。
何人かでギャーギャー騒ぎながら観られるかどうかも微妙。
こんな映画が生み出された事自体狂気の沙汰ではないが、
何よりも恐ろしいのは、この映画のスマッシュヒットを受け、続編が生まれたこと。
こちらは未見だが、2ではハイター博士に憧れた醜男が7人もの人間を連結するさらにエグい内容で、さらに、3の製作も決定。
こちらはハイター博士が復活し、
メタルクウラもビックリの百人ムカデ人間を見せる予定という…。
我こそはというドSピープルか、ス○○ロ耐性のある方のみにオススメします。

映画:『TIME』


〜ストーリー〜
余命が貨幣の代わりとなった近未来。
貧困層の青年ウィルはある事件をきっかけに100年以上の余命を与えられ富裕層の住むエリアに侵入する。
そこで社会の仕組みを知ったウィルは、
警察とギャングに追われながら貧困層を解放する戦いに身を投じる。

ジャスティン・ティンバーレイク主演のSF映画。
おそらく貧困層と富裕層に二分された現在のアメリカ社会や、
それを生み出した資本主義経済への批判がテーマ。
しかし、主人公がやっている事は強盗と銀行のお金を貧困層にたまにバラまく事だけで、
経済の仕組みを根本的に作り変えるというものではない。
この映画、こういった感じの浅さが結構色々な所で目につく。
例えば、主人公の父親のエピソードを掘り下げれば警察との駆け引きがよりスリリングになったろうし、
富裕層であるが故の悩みをもっときちんと描く事で、
主人公の行動により説得力を持たせることができたと思う。

映画:『デイブレーカー』


〜ストーリー〜
人間をヴァンパイアに変えるウィルスが広がって10年が経った。
人間の人口は5%にまで減少し、ヴァンパイアの社会は血液不足と、それに伴うサブサイダー(変異体)の出現に悩まされていた。
血液学者であるエドワードは代用血液の開発に取り組んでいたが、成功の糸口を掴めずにいた。
しかし、ある日、エルビスという元ヴァンパイアの人間が現れ、エドワードに協力を要請する。
それは、ヴァンパイアを人間に戻す治療法の開発だった。

イーサン・ホーク(『ガタカ』『アサルト13』)、ウィレム・デフォー(『スピード2』『スパイダーマン』)、サム・ニール(『ジュラシックパーク』シリーズ)ら豪華キャスト主演の近未来吸血鬼映画。
少々ダークでグロめなゴシックホラーのテイストと、
無機質で機械的なサイバーパンクのテイストが混ざり合った世界観が特徴的。
また、吸血鬼ものとしては一風変わった設定を持つ。
オチが強引な感も否めないが、
ストーリーかキャストに魅力を感じた人、
もしくは、サイバーパンクかホラーが好きな人で、
バイオハザードの1くらいのグロさなら平気という人ならそれなりに楽しめると思う。
"こけおどし"も少なめ。

映画:『リーピング』


〜ストーリー〜
かつて宣教師をしていたキャサリンは布教先で夫と娘を失った。
それ以来、神の存在を否定し、いわゆる奇跡と呼ばれる現象を科学的に解明する事をライフワークとしていた。
ある町でひとりの少女が兄を殺して以来、出エジプト記の10の災いに似た現象が起きている事を知ったキャサリンは調査に向かう。
しかし、町で起こる現象の数々は、いくら科学的調査を重ねても解明できないものばかりであった。
やがて町は事件の鍵を握る少女を中心として不穏な空気に包まれ始める…。

ヒラリー・スワンク主演のホラー映画。
この映画、確か公開当初は「イナゴ少女現る!」とかいう、
それだけで何パーセントの観客を失ったのだろうと思うほどひどいキャッチフレーズで宣伝されていた。
しかし、実際はキリスト教や悪魔崇拝をベースに、サスペンス要素も多分に含んだ立派なホラー映画。
例えば、リチャード・ギアの『プロフェシー』やミラ・ジョボヴイッチの『フォース・カインド』みたいに、
このテの超常現象を扱うホラーはオチが消化不良になりがちなのだが、
本作はストーリー上の伏線がしっかりしているため最後までしっかり鑑賞できる。
最後の最後のひとつの仕掛けにも思わずニヤリ。

2013年6月9日日曜日

映画:『ジャッキー・コーガン』

~ストーリー~
「優しく殺す」がモットーの殺し屋ジャッキー・コーガン。
ある日、賭博場強盗の実行犯と黒幕を捕らえるよう依頼された彼は、
独断で実行犯らの殺害を目論む。

ブラッド・ピット主演のクライムムービー。
久々に予告詐欺にあった気分。
予告だとひとりの殺し屋が単身ギャングとの戦いに挑むスタイリッシュなクライムアクションといった感じだが、
テイストが悪い方向に出た時のタランティーノの映画を観ているかのようなダラダラしたクライムムービーのさらに質の悪いのを見せつけられたというのが率直な感想。
CGを利用したややスローモーション気味なアクションシーンも予告で流れたもので全て。むしろこの映画のテイストに必要だったのかさえ疑問である。
そして、最後はギャラを渋る依頼者にトーマス・ジェファーソンの経済政策がいかにダメなものかについて演説を垂れて終わり。
一体何がしたい映画だったのか。
せっかくジェームズ・ガンドルフィーニやレイ・リオッタなど渋いキャストも揃っているのだから、
同じプロットで何十倍も良い映画が作れたはず。
(自分は何が良いのかさっぱり分からない)『パルプ・フィクション』や『SNATCH』辺りを楽しめた人なら鑑賞に耐えられるレベルかと思う。

映画:『月に囚われた男』

~ストーリー~
サムはルナ社と3年の契約で、
月に眠る燃料ヘリウム3を採掘する仕事に就いていた。
愛する家族を地球に残し話し相手はAI・ガーディだけの孤独な生活。
契約終了まで2週間と迫ったある日、
サムは採掘の途中で事故に遭い意識を失ってしまう。
次の瞬間目覚めたのは採掘基地の医療室。
我が身に起きた事に疑問に抱いたサムは事故の真相を追い事故の現場に戻る。
そこにいたのは自分とそっくりな人間だった…。

『チャーリーズ・エンジェルズ』『アイアンマン2』などのサム・ロックウェル主演のSFムービー。
ほぼ彼の独り舞台で、その変幻自在な演技に、
名優ケヴィン・スペイシーがガーディの声として華を添える。
サムとガーディ、そして、もうひとりとの自分との会話は時にユーモアで、また、時に緊迫感があるものだが、全体的にはローテンションな映画。
説明不足な部分が多い事も否めないが、
孤独に生きる男の悲哀や事件の意外な真相など、見所も十分にある作品。
プロットとしてはありがちなものとは言え、
ややSFマニアな玄人受けする作品だと思う。
『ガタカ』なんかにハマった人も楽しめるのでは。

映画:『お買いもの中毒な私!』

~ストーリー~
園芸雑誌の編集室で働くレベッカは重度の買いもの中毒。
迫りくるカードローンの返済日に日々怯える生活を送っていた。
そんな彼女の夢はファッション雑誌の編集室で働くこと。
しかし、とある手違いから同じ出版社の中にあるお堅い経済雑誌の編集室に採用されることになってしまった。
初めは苦悩するレベッカだったが、
自らの体験を基にした企画が読者の共感を得て大ヒット。
編集長であるイケメン編集長のルークとも恋仲になり、
人生が順風満帆に進みかけたように思われたのだったが…。

2009年の公開時に当時付き合っていた彼女に頼まれて一緒に観に行った映画(照)。
ストーリーそのまんまの単純なサクセスストーリーで、
『プラダを着た悪魔』のようなおどろおどろしさもない。
原色に彩られた画面の中を女の子がキャッキャキャッキャ大騒ぎする姿を何も考えずに鑑賞するのがベスト。
こういうハイテンションでハッピーな作品を観るのもたまには良いことかも知れない。
ただ、カード社会であるアメリカと本作公開前に訪れたサブプライムローン問題のことを鑑みると、
本作が扱うテーマというのはアメリカ人にとっては深刻な問題なのかも。
『キューティ・ブロンド』シリーズなんかが好きな人なら十分楽しめるのでは。

映画:『光の旅人 K-PAX』

〜ストーリー〜
精神科医マークの元にプロートと名乗る男が現れる。
彼は自らをK-PAXという星からやって来た宇宙人だと言う。
初めは一時的な記憶喪失と精神錯乱を疑うマークだったが、
現在の地球では知り得る事のできない知識や、
彼の言葉が周囲の人々に与える影響を目の当たりにし、
自らの考えが揺らぎ始めるのを感じる。
しかし、ある時、プロートの正体ではないかと目される人物の情報が飛び込んでくる…。

ケヴィン・スペイシー/ジェフ・ブリッジズ主演のSFヒューマンドラマ。
プロートの正体を明らかにしようとするサスペンス的な要素を含みながら、
彼の放つ示唆に富んだ言葉に己の人生を考えざるを得なくなる不思議な作品。
優しい光に溢れる視覚効果も本作の暖かみに彩りを加える事に成功している。
興行的には振るわなかったようだが、
優しい気持ちになりたい時にはぜひ鑑賞をオススメしたい。

映画:『1408号室』


〜ストーリー〜
呪われた場所を取材し本にまとめる事で生計を立てている作家マイク。
そのくせ彼は超常現象に一度も遭遇した事がなく、幽霊や奇跡といった現象、あるいは、神の存在すら信じていなかった。
ある日、取材依頼の手紙の束に紛れた「1408号室には入るな」とメッセージの入ったドルフィンホテルの絵葉書に目が留まった彼は、早速取材を申し込む。
その部屋では過去、自殺・事故・自然死を含め56人もの人間が死に、多数の人間が何らかの被害を負ってその部屋から出る事を余儀無くされていた。
マイクは支配人のオリンに直談判し1408号室の宿泊許可を得る事に成功する。
しかし、想像を絶する恐怖が彼を襲う事になろうとは知る由もなかった。

ジョン・キューザック、サミュエル・L・ジャクソン共演のホラー映画。
おふざけなしのホーンテッド・マンションみたいな感じの映画で、
ジョン・キューザックがとんでもない目に遭うのをひたすら鑑賞するだけの映画。
後半はもはやパニック映画。
必死なジョン・キューザックの顔が時折エガちゃんに見えて仕方なかった…。
1408号室が生まれたそもそもの経緯をもう少し詳しく掘り下げるとか、
部屋に出てくる幽霊?の背景を掘り下げるとかしていれば、
サスペンス的な要素も加わってストーリーに深みが出たのではないかと思う。
スティーブン・キング原作の作品にそこまで求める方が酷なのだが…。
が、この映画、どうやらキリスト教の事を知らないと100%楽しめないうえに、エンディングの解釈の仕方が変わるんだとか。

映画:『レポゼッション・メン』


〜ストーリー〜
近未来、人工臓器移植技術の発達により、
人々は恒常的な健康と長寿の恩恵を受けていた。
そのあまりに高額な手術代に、ローンの返済が不能になる者もおり、
主人公レミーはそんな彼らから人工臓器を再び回収するレポメンの中でもトップクラスの実力の持ち主だった。
しかし、あまりに仕事に熱中するあまり、愛する妻との仲は徐々に悪化していた。
ある日、レミーは不慮の事故から自ら人工臓器を移植されることになる。
それにより、返済不能者の心情を理解するようになってしまい、
レポメンとしての任務を全うできなくなってしまった。
妻には見放され、いよいよ返済日を過ぎ、
かつて同僚であったレポメンから追われる身となった主人公は、
全ての人工臓器移植データを消去するため、システムの中枢部に乗り込む。

サイバーパンクの王道的作品。
ハードなアクションシーンが見もので、
時折SFらしいギミックや兵器は出てくるものの、
どちらかと言うとナイフやハンマーを駆使した肉弾戦の方が熱い。
最終バトルでの主人公の無双っぷりが『リベリオン』か『ウォンテッド』とよく似ている。
描写はあっさりとしてるものの、
身体を切り開いて人工臓器を取り出すシーンや喉を掻き切るシーンも満載なので、
貴賓さを求める紳士淑女には向かない映画かも。
しかし、この作品で特筆すべきは、ラスト5分間のどんでん返し。
劇中の伏線を見逃さなければある程度予想はつくものの、
それでもなかなか衝撃的なもの。
『リベリオン』とか『マイノリティ・リポート』辺りが大丈夫な人なら十分満足できるレベルだと思う。

映画:『恐怖ノ黒電話』


〜ストーリー〜
マリーは離婚をきっかけに幼少期を過ごした町の古びたアパートに引っ越しした。
その部屋には黒電話が備え付けられており、
ある日を境にローズと名乗る女性から電話がかかってくるようになる。
ローズは情緒不安定で時折ヒステリーを起こすため初めはまともに相手にしなかった。
しかし、ローズが「自分は過去におり未来のマリーと電話が繋がっている」と言い始めた頃から、周囲で次々と不可解な現象が起き始める。

B級映画テイストのタイトルをしているが、
おふざけ一切なしの純然たるホラー映画。
説明不足な点が多少見られるものの、
エンディングに向けて伏線が丁寧に積み重ねられている点が好印象。
ただ、とにかく地味で暗いのが難点。
照明的は全体的に北向きの窓みたいに暗いし、
流れるBGMも暗めかつ小音量。
グロい場面もこけ脅しも本当に少ないため、
人によってはとても退屈に思われるだろう。

映画:『ミスター・ノーバディ』

〜ストーリー〜
2092年、科学技術の進歩はついに人間を不老不死にした。
不老不死の処置を唯一施さなかった人類最後の死者になり得る男、
ニモ・ノーバディはその死期が近づきつつあり、その動向は大衆の注目を集めていた。
ある日、彼の元にひとりの新聞記者が現れ、インタビューを敢行する。
だが、彼の語る3人の女性との人生は互いに複雑に絡み合い矛盾を孕んだものだった。
果たして真実はどこにあるのか…。

ややネタバレします。
『ファイト・クラブ』『レクイエム・フォー・ドリーム』のジャレッド・レトを主演に、
ダイアン・クルーガー(『ナショナル・トレジャー』『イングロリアス・バスターズ』)、サラ・ポーリー(『死ぬまでにしたい10のこと』『ドーン・オブ・ザ・デッド』)、リン・ダン・ファン(『戦場のピアニスト』)らをヒロインに迎えた作品。
「人生の選択」をテーマにした作品で、
主人公ニモが人生の岐路に立つ度に生まれる「次の人生」を同時並行的に一つの作品内で描いていくという意欲作。
とは言え、意外とストーリーは頭に入ってきやすく、
素晴らしい視覚効果のおかげもあって137分という長い上映時間を感じさせない。
ただ、オチの付け方が強引かつ分かりにくい部分があり、
「結局この映画って何が言いたいの?」という人が少なからず出るような、
好き嫌いがはっきり分かれる作品だと思われる。
でも、それを初めから解って、あえて観た者に選択を委ねる作品を作ったんだろうなという感じもする。
だから、この作品を機に人生について考えるのも良し、つまんねと思ってすぐに忘れるのも良し、
ちょっと変わった群像劇、1人の男が3人の女について妄想する恋愛映画、あるいは、『バニラ・スカイ』や『バタフライ・エフェクト』のように時間軸と選択をテーマにしたSF映画という見方をするも良し。
個人的には、最終的に監督の伝えたい事は人生賛歌なんだろうと思うけど、
どう考えてもダイアン・クルーガーのヒロインパートの人生を良いように描いているので、それはフェアじゃないなーと感じた。
あと、15歳のニモが神木龍之介君に似てた。

2013年6月8日土曜日

映画:『キック・オーバー』

~ストーリー~
マフィアの金を強奪しメキシコに逃亡しようとしたドライバーは運悪く逮捕されてしまい、
エル・プエブリートという監獄に収監される。
そこは監獄でありながら一つの町を形作っており、
金さえあればどんな自由も手に入る無法地帯と化していた。
やがて、彼が隠した金の在り処を暴こうと、
マフィアやギャング、彼を逮捕した悪徳警官達が次々と襲いかかる。
その頃、ドライバーはひとりの少年と出会う。
その少年にはとある秘密が隠されていたのだが…。

監督作『パッション』で物議を醸して以来、
何となくパッとしないメル・ギブソンが、
俳優生活35周年目に主演したアクション映画。
『ペイ・バック』よろしく彼お得意の(視覚的にちょいキツめな)痛快アクション。
舞台であるエル・プエブリートは実在の監獄をモデルにしており、
そこでの暮らしの様子を見ているだけでも楽しい。

映画:『GUN』

~ストーリー~
黒人ギャングのリーダーであるリッチはデトロイトの銃取引を牛耳らんと、
次々と対立する組織を潰していた。
とあるクラブを襲撃した際一般人が巻き添えになった事から、
警察は彼の組織を壊滅させようと監視の目を強め始めた。
ある日、彼の前にエンジェルという白人の男が現れる。
リッチはかつてエンジェルに命を救われた事があり、
仕事が欲しいと言うエンジェルを組織に引き込む。
彼と組んだ事で順調に仕事をこなしていくリッチだったが、
やがて彼の中にある疑念が浮かび始める…。

50cent、ヴァル・キルマー主演のアクション作品。
ストーリーの根幹がありふれた題材だけに観客を楽しませるためには何か仕掛けが必要だと思うのだが、
何か1本筋が通っていない感じがするし、
どのキャラクターもエピソードも掘り下げが浅い。
しかし、この作品の何よりの不幸は、
サスペンス的にストーリーを構成しようとしている(それ自体が成功していないのだけれど)にも関わらず、
公式にリリースされているあらゆるストーリー解説でネタバレされてしまっている事。
初めからオチは分かっているのに、
ストーリー上何の驚きも工夫もないのでじれったくて仕方ない。
まぁ、それがなくても退屈な映画には違いないんだけど…。
そのおかげで、すっかり肥えてオッサンになってしまったヴァル・キルマーの俳優としての凋落ぶりが本作最大の見所となってしまっている。
『ドアーズ』とか『セイント』とか『あなたが見えなくても』とか90年代の作品は結構佳作揃いだったのになぁ…。

2013年6月7日金曜日

映画:『dot the i』

〜ストーリー〜
スペイン出身のカルメンはイギリスでダンサーの仕事で生計を立てていたが、
勤めるパブで知り合った資産家のバーナビーと婚約が決まった。
独身最後の夜を楽しむため「ヘン・ナイト・パーティー」に参加した彼女は、
そこで知り合った青年キットに惹かれてしまう。
複雑な三角関係が始まったその頃から、
カルメンは彼女を監視する何者かの不気味な視線に恐怖を感じる。
そして、事態は予想だにしない展開を見せ始める。

2003年公開のイギリス・スペイン合作の作品で、
日本ではミニシアターで公開された作品。
『モーターサイクルズ・ダイアリー』で若きチェ・ゲバラを演じ評価を得たガエル・ガルシア・ベルナルがキットを好演している。
ちなみに、『ダークナイト・ライジング』『インセプション』『ブラックアンドホワイト』など近年活躍目覚しいトム・ハーディーがちょい役で出演している。
この映画、90%が恋愛映画なのにラスト10%で一気にどんでん返し系サスペンスに様変わりするという、
乾くるみの『イニシエーション・ラブ』のような構成をした作品。
幅広い層にウケるはずだし事ある毎にオススメしているのだが、
そもそもDVDなどがあまり一般に流通していない事もあって、
誰も良いとも悪いとも感想をくれない個人的には寂しい思いをしている作品。
機会があればぜひご鑑賞下さい。

映画:『ハードキャンディ』


〜ストーリー〜
出会い系サイトで少女と知り合う事が趣味のひとりのカメラマン。
この日も、サイトで知り合った14歳の少女を家まで連れ込む事に成功したが、
酒を飲んでいる途中で意識を失ってしまう。
目が覚めると彼は椅子にくくりつけられており、
少女はナイフを手に彼の男性器を切り取ろうと迫ってきた。
男は得意の口八丁で何とか窮地を逃れようとするが…。

『インセプション』で印象的な演技を見せたエレン・ペイジが、
外見にそぐわぬ恐ろしさを秘めた少女を演じたスリラー作品。
それなりに緊迫感のある映画であるはずなのだが、
そもそもどう考えても男がアホなので、
加害者である少女の方にシンパシーを感じてしまうし、
男があの手この手で窮地を逃れようとするドタバタぶりは(良い意味で)むしろ滑稽にすら思える。
案外、カップルで鑑賞して、
終わった後に彼女が「あんたも浮気とかしたら同じ目に遭わせるで!」とか脅したりして、
ふたりの愛を深めるのに良いかも知れない。
ちなみに製作陣は、日本の出会い系サイトとそれを利用した親父狩りに着想を得たそうで、
日本人としては非常に不名誉…。

2013年6月6日木曜日

映画:『貞子3D』

オンデマンド配信にて鑑賞。

〜ストーリー〜
茜が教師を務める高校では、観た者を死に至らしめる動画の噂が流れていた。
ある日、偶然にも生徒がその動画を観ているところに出くわした茜は、
パソコンの画面から白装束の髪の長い女が現れるのを目撃する。
茜は恋人の孝則と共に動画について調査を始める。

以下、おもいっきりネタバレ。
この映画、
初めからこのキャストでホラー映画を撮る事と、
呪いの動画をテーマにした初期段階の脚本だけが決まってて、
でもそれだけだと弱いから無理矢理貞子を絡めて、
貞子→テレビから「飛び出る」→だったら3Dじゃん!
というノリと商業的な思惑で出来上がった作品としか思えない。
原作どころか過去の映像化作品に対する思い入れや敬意といったものを全く感じられない。
心の底から退屈な映画だった。

しかし、もしかしたらこの映画を楽しく鑑賞できるかも知れないポイントをいくつかご紹介しましょう。

□呪いの動画はニコニコ動画でストリーミングされている動画。
→制作委員会にもニコニコ動画が名を連ねている。
→超商業的な香り!!!

□石原さとみ扮する茜は危機が迫り悲鳴をあげると超音波を発し周囲を破壊する能力の持ち主。
→つまり、キース・レッドのグリフォンを引き継いだモデュレイテッドARMSだった。
→パソコンの画面どころか貞子すら粉砕するのに人間には影響がない不思議。

□貞子は画面から飛び出るだけでなく髪の毛すら自由に操る。
→貞子がラブ・デラックスのスタンドを身につけました。
→さらに終盤では貞子ACT2となり、引きずり込んだ人間を画面の中の異次元に閉じ込めるという、ココ・ジャンボさながらのスタンドまで身につける。続編が作られたらD4Cでも使えるようになるんじゃないか?原作は実際…だしなぁ。

□終盤では貞子が怪物になって登場!
→なぜか『エクソシスト』のように逆さ四つん這いで蜘蛛のような動き。
→スティーブン・キング原作の『IT』も、
ピエロの正体が実は蜘蛛の怪物だったという最後にして最大の興ざめポイントがあるが、
『IT』がそれまでは優れたホラーであるのに対し、
本作はハナから退屈だから余計にタチが悪い。
→蜘蛛状態の貞子をACT3とするなら、最終盤ではACT3が大量発生!
→しかし、ACT3すら超音波で粉砕する茜のARMSの力!



<訂正>
一応この作品、
鈴木光司氏の『エス』が原作だったんですね。
それにしてもストーリーがまったく違うので、
やっぱり上記の通りやっつけで産まれた作品という気はしてならない。
一応訂正しておきます。